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- 帝王の恋慕
- 日時: 2011/12/06 18:13
- 名前: ねーぷる。 (ID: qpE3t3oj)
———初めてだった。こんな気持ち。
二度と、味わうことの出来ないあの日々。
……取り戻せないのなら、忘却の彼方へ葬るまで———。
復讐を。断罪を。
裁かねば。
『いつでも、笑っていて…』
※この小説は続編に続きます。そのため、当小説はまだシリアスな一面がありません。ご理解の程、よろしくお願いします。
※コメントは極力お控え下さい。
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- Re: 帝王の恋慕 ( No.1 )
- 日時: 2011/12/03 22:33
- 名前: ねーぷる。 (ID: qpE3t3oj)
「我が息子、エリック・F・キングリー。王位第一後継者よ。…今日この時、この神聖な場にて。お前を次代の王とする」
父王は言う。だが、俺の心中に嬉々とした感情は一切無い。
俺の心中は、ただ冷静沈着でいた。
「…そんなお前だから、私は次期王をお前に決めたのだよ」
父王は、そんな俺を見て全てを悟ったように小声で、誰にも聞こえないような声で言った。
——いや、“悟ったように”ではない。“悟っている”のだ。
父王は俺という人間をとうの昔から理解しているのだ。
「今からお前が王だ。これからは私のことは父上とでも呼べばいい」
「はい、父上」
不思議と違和感はない。
むしろ、父王、と呼んでいた事実に俺は違和感を覚えた。
「さあ、民衆の目にお前の姿を見せるがいい。行って来い」
つくづく、父上という人間は。どこまでも人の上を行く。
“偉大”以外に、彼に当てはめることの出来る言葉が存在するのだろうか。
そんな言葉、俺には皆目見当も付かない。
父上に背中を後押しされて、俺は初めて民衆の前に姿を現す。
そんな俺に、先程まで騒いでいた民衆は驚く程素早く押し黙る。
「——よく聞け。民よ」
これが、新しい時代の幕開け。
「私がお前達の新しい王である。私に逆らう者はいかなる者でも処罰せしめよう」
そして、俺の破滅への第一歩。
「だが私について来る者あらば、私はその者をいつまでも庇護するであろう。…今日から私が、お前達の庇護者。新しい王だ!」
途端、民衆が沸き起こる。
止まない歓声と、その熱気。
果たして俺は、この期待に応えることが出来よう?
- Re: 帝王の恋慕 ( No.2 )
- 日時: 2011/12/06 18:10
- 名前: ねーぷる。 (ID: qpE3t3oj)
「———以上が、今日の予定でございます」
「随分ぎっしり詰まっているな」
「ええ。まだ就任1日目でしょう?今日は挨拶だけで丸一日潰れますよ」
「……絶対に疲れるぞ。挨拶だけなんて」
「仕方のない事でしょう?それに、明日からはさっさと片付けるべき政務が山のように待っています。覚悟しておいて下さい」
「…期待はしないでくれよ」
はー、と息を吐いて立ち上がる。
(明日頬筋が筋肉痛になるのは確定だな)
そんな落ち込み気味のエリックを補佐官・アルトニーはじっ、と見ていた。
——————————————
「…まあ、よくおいでなさいました。エリック様」
「いえ。この忙しい時に訪問、無礼をお許し下さい。ミス・ファゴット」
この女性はファゴット・M・グリーン。大公夫人である。
齢30はとうに超えており、上級貴族の出である為気品がある。
たしか、母上がよくこの人の開いた茶会に出席していたはず。
「ふふ。忙しいのは夫、私はいつも通り暢気に茶会をしておりますよ」
「それはそれは。先日は母上が行かれたとか」
「ええ。あの方の話は本当、びっくりするくらい飽きがこないんです。おかげで毎回茶会が笑顔で溢れていますよ」
「それは良かった」
そんな他愛も無い談笑をしていると、庭の方に一人の女性が見えた。
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