ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- アビリティ・アンソロジー
- 日時: 2011/12/04 10:38
- 名前: 薬味 ネギ ◆yBwDzSlRx6 (ID: 0R1fmnoy)
自己満足要素が相当ドギツく入ってます
それでも良い方は、どうぞ
更新は不定期で、横書きに合わせて書くつもりです
縦書きに合わせるとどうも読みにくくなるので
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- Re: アビリティ・アンソロジー ( No.1 )
- 日時: 2011/12/04 10:51
- 名前: 薬味 ネギ ◆yBwDzSlRx6 (ID: 0R1fmnoy)
一匹の狼が、視界を横切った。
その口元には、紅の血糊をべっとりと付けて。
「どうした、俺が怖いか?」
狼の発する一言。
相手は、ハイイロオオカミであり、それは狼の中でも大型で群れで行動するはずの種類。
そして何より。 “喋るはずのない”生き物だった。
「怖がるな、俺は人間だよ」
狼が、言葉を操り少年をなだめる。
だが、少年はその手に握った銃口を、その狼へと向けた。 次の瞬間。
乾いた火薬の爆発音。 そして、後ろ向きに吹っ飛ぶ少年。
狼が、銃が発砲されると同時、牙でその銃口を噛み砕いた。
「だから、俺は人間だって言ったろ?」
少年が起き上がり、次に狼を見たとき。 狼は、一人の青年の姿を持って、少年の前に佇んでいた。
「ま、廃人が徘徊する世の中だ。 信用しない方が、確かにいいかもな」
- Re: アビリティ・アンソロジー ( No.2 )
- 日時: 2011/12/10 11:58
- 名前: 薬味 ネギ ◆yBwDzSlRx6 (ID: 0R1fmnoy)
§ プロローグ §
この世界には、特殊能力と言うものが存在する。 まあ、能力なんて人それぞれ。
手の平から炎を出すなんてかっこいいものもあれば。 ただ単純無限に物を食べられるなんてくだらないものもある。
そんな中、一人の能力者の持った強すぎる力が……この星を地獄へと変えた。
奴の名は『アダム』。 理性を喰らう能力者であり、人間の理性を喰らう事で己の力を高める能力を持つ。
そして、アダムの能力による犠牲者。 それが、問題なのだ。
食欲旺盛。 手当たり次第に、目の前の肉を食う。
まあ、いうなればゾンビなのだが。 それが、アダムの食っただけ。
この星の上の人口が、八十億人。 そのうち七十億人の理性を、アダムは食いつぶした。
奴は、まさに無敵。 良くある、ゲームのチートを使ったとしても。 とても手に負える相手ではない。
何せ、高難易度の化け物が、ありとあらゆるプロテクトにガードされているに等しい状態。
手のつけようが、無いのだ。 プロテクトを破ろうものなら、それに対して反撃する。
能力は、人間固有のもので重複しない。 そして、主に単体の能力を持つ能力者が主となる。 だが、それに当てはまらない異端児が、実は一人だけ存在した。
一人の少女と、その従者。 一匹の狼は、物事を見る目を持たなかった。
- Re: アビリティ・アンソロジー ( No.3 )
- 日時: 2011/12/10 17:42
- 名前: 薬味 ネギ ◆yBwDzSlRx6 (ID: 0R1fmnoy)
彼は、とある廃工場にいた。
何故そこにいたのか、と聞かれれば「安全な場所を探している」と彼は答えるだろう。
太陽から降り注ぐ強烈な熱光線の中。 建物には居る事を、彼は警戒していた。
その手には、何と拳銃が握られている。 マグナムのような形状だが、リボルバーには小さく、穂そんな害薬莢がこめられ、質より量。
相手を倒すことが目的なだけのようにも見える。
だが、彼の敵はそんな柔な相手ではなかった。
彼はナイフとそー世辞を取り出すと、ソーセージを輪切りにし、陰になっている廃工場の入り口付近に放り投げた。 すると、そこに闇の中から手が伸びていく。 それも一本ではない。
複数の人間の、青白い手が、輪切りにされたソーセージめがけて伸ばされていくのだ。
「……ここも、駄目だったか」
彼はそれだけ呟くと、ジャケットに隠れていたあるものを取り出した。 それは、網目模様。 ピンが刺さっていて。 フックが付いている。 そして……それは中に火薬がこめられている。
俗に言う、手榴弾である。
「悪く思うな、お前らを治してやる方法は無いんだ。 あっても、所詮噂だ、現実じゃねえ」
陽だまりの中に入る事をためらっているその無数の手の根源。 闇の中に、彼はそれを投げ入れようと構えた。
「駄目だよ、殺したら。 彼等も、人間なんだから」
何者かが、彼の腕を握り締めた。
否。 彼の腕を遠隔操作でストップさせた、というのが正しいかもしれない。
「理性を食われた可愛そうな人たちだ。 お情けで、ここは私に任せてみない?」
彼の背後から、近づいてくる女の声。 そしてもう一つ。
四足歩行の動物の足音。 何故?
「……お前ら、気違いか? あのゾンビ共を人間扱いするとは、どういう了見だ?」
「私からも問おう。 彼等を人外扱いするのは、どういう了見だ?」
彼女は強い口調で、彼に反抗する。
ただ、彼女の言葉には引っかかる節がいくつかある。
あの腕を、人間扱いするという前提。 そして、任せてみないか? という言葉。
「……なんだ、アレを治療でもするつもりか?」
「ああ、そうだよー。 私の能力を使えば、死人以外であれば30秒で治せる」
三十秒?
「……馬鹿も休み休み言えよ。 分かった、三十秒……待ってやる」
彼は手榴弾を腰のベルトに戻すと、近くの鉄骨に腰掛け、彼女を見た。
長い金髪に、蒼い瞳……恐らくは、西洋人の血統だろう。 今となっては、国境など機能していなければ。
こんな偏狭の島国に来る方がどうかしているのだが……。
「……アリガト」
中々、日本語が上手いんだな。
- Re: アビリティ・アンソロジー ( No.4 )
- 日時: 2011/12/10 17:59
- 名前: 薬味 ネギ ◆yBwDzSlRx6 (ID: 0R1fmnoy)
彼女はポケットを漁ると、黒い何かの入った酒ビンを取り出し、その栓の役割を担っていたコルクを、あろう事か素手で引き抜いた。
酒瓶のコルクを、素ででってどんなパワーだよ?
「息吸って。 そこでも多分、吸い込んだらしばらく辛いよ」
彼女はビンに満たされた黒い何かを、自分の足元に撒き散らすと同時。 それは見る見るうちに、意思を持ったスライムのごとく。
狼の体を成し、彼女に対し、尻尾を振った。
「……なんだ、その能力」
「能力者に時運の能力を教えないのは基本でしょ? 女の子には秘密が多いんだよ」
彼女はにこやかに、彼に返した。
「そういえば、君。 名前聞いてなかったね、何て名前?」
「草薙 剣。 まー、なんなら“つるぎ”じゃなくてソードでもいいぞ」
それを聞いて、彼女は苦笑いする。 笑を堪えているのか、口を押さえ、大きく息を吐き出した。
「……私も名前を名乗るべきだよね、この流れだと。 フルネームだと三十秒過ぎちゃうけど、良いかな?」
彼女の言葉に、剣は疑問符を浮かべる。 だが、彼女からしてみればその疑問符を浮かべる剣の反応が、今一分からなかったらしい。
剣が頷いたのを確認すると、彼女はようやくここで口を開いた。
「イヴ・エース・アディソン・オールビー・グルベンキアン・バルフォア・バスカヴィル・カーラル・ダーウィン・……えーと……、クリフォード・デイモン・フェアクス・コッパーフィード・グローヴァー・オールディントン。 ……だったはず」
「……無駄に長いな」
剣の言葉に、当たり前という顔を向ける彼女は、ある意味凄いやつかもしれない。
「孤児院をたらい回しにされてね。 そのつど、そこの孤児院で姓を貰ってたもんだから、いつの間にかこんなに長くなっちゃったんだ。 記念のつもりが、お荷物だよ。 さて、一分くらい経っちゃったけど、ここでようやくだよ。 私の能力……レイニー・ウルフ。 彼等とアダムのつながりを、食い千切らせる」
イヴの言葉の直後、その黒い狼は行動を開始した。
その手の延びる闇の中へ、その身を投じると、次の瞬間。 黒い靄をその口にくわえ、陽だまりへ戻ってきたのだ。
それは、ケーブルのように空中でのた打ち回るが、狼後からには敵わなかった。
狼はそれを満足げに何度か噛むと、一瞬の内に。 その靄を食いちぎって見せた。
建物の中から、次々と血の気の失せた皮膚の人間が陽だまりの中へと倒れてくる。
「現実。 アダムが人間の理性を喰ってるんじゃないんだよ。 あれは、人間の理性を自分に流しているだけで。 人間そのものには理性があるし、考えもキチンとある。 けど、理性をアダムに流している逆でね。アダムは、破壊衝動を人間に流すんだ」
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