ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 咲くのはサクラ
- 日時: 2011/12/06 18:43
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
二人で笑った。
どちらかが死ぬ運命。
わかっているのに幸せな生活を演じて、わざと自殺しようとしたり。
止められるのが嬉しくて、まるで麻薬のように何度も試みた。
私の価値はどこにあるのだろう。
どうせ死ぬのに。でも、死にたくない。
あの子が死ねばいいのに。そしたら、私はもう死に急ぐふりをせず、幸せに暮らすことが出来るのだろう。
果たして、それでいいのだろうか……。
サクラが散る季節に涙を零すのは、
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- Re: 咲くのはサクラ ( No.1 )
- 日時: 2011/12/06 19:18
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
カッターで手首を薄く切ると、赤い線がすうっと浮き出てきて、思わず目を細めた。これでいいんだ。私は、これで幸せにあっちの世界で生きれるのだ。
「桜ちゃん、何しているの?」
放課後の誰もいない教室。そんな中で自殺行為を行っている私を、一番の親友であり、運命のライバルの「さくら」が微笑みながら問いかけてきた。
(わかっているくせに……)
ドアに手を掛け、頭の横につけている赤いりぼんを揺らしながら「ふふ」っと笑うさくらを、私は睨んだ。
「何してるの?って、私がすることは一つしかないでしょ」
「そうね。幸せと称した偽善的行為かしら」
「ふん。何しようが勝手だし、さくらには関係ない。ぜーったい邪魔しないでよ」
「ええ。じゃあ、一言も喋らずに横でゆっくりと本でも読もうかしら。貴方が倒れるまで」
「上等じゃん」
黒いカバーの本を鞄から取り出したさくらは隣の席に座り、始終無表情で淡々と本を読んでいるようだ。私は少しきゅっと締め付けられる胸に手を当て、白いシャツに赤を染み込ませた。どきどきと鳴る鼓動。これからの事を予想し興奮しているのだ。ああ、今日はどうなるのだろう。私は、一体全体、どんな運命を迎えることになるのだろう?
そうして次第に物足りなくなってまたカッターで傷口を抉るように深く、深く傷つけた。興奮が更に増す。深い歓喜が胸の内から湧き上がり、どんどんと胸を叩いているようだ。
溢れる血、先程とは比べ物にならない量の赤い愛が、机を染め上げる。
隣のあいつに告白するように。
さくら、さくら、私と同じ名前。なのに全然違う。髪もあいつは紫で、私は金色。おまけにさくらは赤いりぼんなんて付けている。私は何もない。意外とおしゃれに気を遣っているさくらは、とっても女の子らしい。
外見が真面目な純情少女なさくらは、そんな見た目と裏腹にいつも冷たい言葉で私に向かってくる。そんなところが、私はとても大好きだ。
がらん。
椅子が倒れる音が、私の耳に入ってくる。それは、死への警告ではなく、これからの祝福の鐘だ。
椅子を引き摺る音がする。さくらが、立ったのだ。
「さく、ら……」
「桜、貴方は今、死ぬの?」
倒れた私の上に跨り、今にも眠ってしまいそうな私に質問を投げかけるさくらは意地悪だ。答えなんて、いつものことで分かっているくせに、わざと言ってくるのだ。
「さく……らの、……ため、に」
閉じそうな瞼を押し開き、さくらの目を捕らえた。さくらは涙を零していた。
もう、いつもの事なんだから、毎回涙を零すの止めなよ。いっそのこと私みたいに笑えばいいんだ。
さくらの目に映った私は歪な笑顔をしていた。
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