ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- エンゼルポルタージュ
- 日時: 2011/12/17 20:28
- 名前: 西 (ID: HhjtY6GF)
─ 超能力者、大衆のためにあれ ─
◆ CASTING ◆
◇ WORD ◇
○ ● ○ ● ○ 〜PLOT STORY EPISODE〜 ● ○ ● ○ ●
Page:1 2
- Re: エンゼルポルタージュ ( No.2 )
- 日時: 2011/12/15 17:20
- 名前: 西 (ID: HhjtY6GF)
<1>
「行ってきます。」
リビングを見ても誰もいない。
2階の個室を見ても、誰もいない。
キッチンにも、トイレにも、風呂場にも、裏口にも、ベランダにも、庭にも、誰もいない。
17歳という若さで、高級住宅街の一軒家に住む高校2年生の横山優太は、誰をもいない自宅に言う。
表情は暗く、髪はボサボサであるが不潔感はない。
しかし、彼の目には輝きがなく、常に俯いた状態で歩いていた。
2年前の春───優太の両親は交通事故で亡くなった。
高校の入学式の帰り、3人を乗せた車は、飲んだくれの大型トラックと正面衝突した。
車は空を舞い、そのまま歩道に乗り上げ、角に建っていたコンビニに突っ込んでようやく停まった。
優太は奇跡的に両腕骨折、打撲で済んだが、前部座席に座っていた母と父は即死だった。
更に、歩道に乗り上げたときに通行人を3名巻き添えにしてしまい、3名とも出血多量で死亡した。
新しく始まる高校生活に、胸を躍らせていた一時を、一瞬で、失った。
それ以来、優太は笑うことを忘れ、常に暗い表情を浮かべたままだった。
彼を引き取る親戚もおらず、いたとしても断られ、現在は国の特別補助金で生活をしている。
嘗て両親が使っていた部屋は家具から全て売り払い、また、両親が使用していたものも処分した。
両親の死を忘れるために、優太が取った行動だった。
優太の両親の命を奪った大型トラックの運転手は、現在東京都内に建てられた新しい刑務所に収監されている。
飲んだくれの運転手が釈放されるのは、2週間後。
しかし、今の優太の脳内に、そんなことは欠片もなかった。
高級住宅街を抜け、優太は人通りの多い大通りに出た。
忙しく歩くサラリーマンを次から次に避け、徒歩20分で着く凌駕高等学校へ向かう。
歩いている時も、常に俯いたままである。
傍から見れば、優太は視界に入るか入らないか程、影が薄い存在だ。
今日も、また、普通の日常が繰り返されると優太は思っていた。
いや、それを当然と思い込み、考えもしてない。
だがしかし、日常が崩れ去ろうとしていた。
運命が変わるその瞬間は、優太の真後ろに待っていた────。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おい、気をつけろよ!!」
「痛った!!ちょっと〜ぉ、マジキモいんですけど!!」
「うおっ!?危ねぇ……」
優太が信号待ちをしている後方から、人の波を掻き分けて全速力で走る男性の姿があった。
スーツの上から黒のトレンチコートを着た男性は、通行人にぶつかりながらも前へと向かって突っ走る。
信号が青になり、優太は暗い表情を浮かべたまま歩き始める。
後ろから迫ってくる男性には気づいておらず、時折、重い溜息を吐いて学校へと向かっていた。
男性は人の波から抜け、横断歩道を駆け抜ける。
男性の目前には、優太が歩いていた。
「はァはァ……はァ………あの子か…………」
男性は右手に青色で甲に輝かしい橙色のトパーズが埋め込まれた手袋を装着し、優太の肩を掴んだ。
「え?」
優太は小さな声を出して、特に暗い表情から表情を変えることなく、後ろを振り向く。
「すまないな、命令なんだ。」
「誰だ……あんた……」
戸惑いながらも優太は男性に質問したが、その瞬間、手袋に埋め込まれていたトパーズが輝き始める。
「なっ!?」
あまりの眩しさで優太は目を閉じる。
しかし、男性は平然と目を開けており、息を整えながら辺りを見渡す。
「しょうがない……見られても、こいつらなら大丈夫だろう。」
男性は手袋をつけた右手に力を込める。
トパーズはさらに輝きを増し、橙色の光が2人を包み込む。
周囲を歩いていたサラリーマンや高校生、通行人、車内にいる人は何が起こっているのか分からず、恐怖で騒いでいる。
そして、光が消えたときには、2人の姿は横断歩道から消えていた。
───────。
「はァはァはァ…………な、なんだ……どこ…………だ?」
優太が目を開けると、そこは渡っていた横断歩道ではなく、どこかの使われていない廃工場の中だった。
工場内には何も置かれておらず、天井や壁には穴が多数空き、そこから日光が差し込んでいる。
優太は持っていた学生鞄を地面に落とし、周囲を見渡し始める。
突然起きた、この超常現象に優太は唖然としていた。
その時、優太の真後ろで誰かの足音が聞こえた。
「よぉ。久しぶりっ……って言っても、覚えてないよな。お前はまだ小さかったし。」
優太の目の前には、スーツの上からトレンチコートを着た見覚えのある男性の姿が。
男性が右手に着けていた手袋に埋め込まれていたトパーズには罅が入り、少々欠けている。
「さっきので最後だったんだ。もうこれは、使えない。」
男性は手袋を投げ捨てると、唖然として言葉を失っている優太を見た。
「俺の名前は橋本冬太郎。事情があって、君をここに移動させた。」
「移動させたって……どうやって!?」
「瞬間移動だ。いや、正確にいえば、瞬間移動の機能が搭載された機械を使った。」
橋本の言葉を聞き、優太は橋本が捨てた手袋を見る。
しかし、勿論信用できる筈がない。
今の世界に、瞬間移動、ましてや、そんなハイテクな技術はない。
「とりあえず、お前は後数秒で覚醒する。避けられない運命だ。」
「か、覚醒ってなに?何だよ………お前……」
橋本は付けていた腕時計を見て、カウントを始める。
「……あと5秒だ。……4………3…2…1……」
“0”と言った瞬間、橋本は不気味な笑みを浮かべて優太を見る。
「おめでとう。君も私達の仲間入りだ、超能力者の側へ、ようこそ。」
- Re: エンゼルポルタージュ 1話UP ( No.3 )
- 日時: 2011/12/16 23:55
- 名前: 西 (ID: HhjtY6GF)
<2>
横山優太は、両親が交通事故で死亡して天涯孤独だ。
それを置いておけば、どこにでもいる平々凡々な17歳の高校2年生だ。
成績が中の中、運動神経はズバ抜けて良いわけでもなければ、悪いわけでもない。
そんな優太は、目の前にいる自分を瞬間移動で廃工場へと導いた橋本冬太郎を呆然と見つめていた。
「……規定の時間は過ぎた。君も今この瞬間から、俺と同じ超能力者だ。」
橋本は不敵な笑みを浮かべながら言うと、右手を広げて前に出す。
「俺の能力は、これだ。」
橋本がそう言うと、右手の平から目で分かるぐらいの青色の液体が溢れだす。
液体が地面に落ちると、「ジュゥゥゥゥ」という焼ける音をあげて、液体が落ちた場所から煙が上がる。
優太はその光景を目にして、液体の正体が分かったが、信じることができなかった。
「そ、そんな………ま、ま、まさか……その液体…………」
「そうだ。これは酸性が強い、誰もが知ってる硫酸だ。」
橋本は右手の平から溢れだす青色の硫酸を、平然と触っている。
硫酸は確実に橋本の皮膚に触れているが、火傷はおろか、橋本は痛みさえ感じていないようだった。
「驚いたか?現実にはいるんだよ、この世だって、結局はおとぎ話みたに出てくる世界みたいな世界さ。」
橋本は右手に付着した硫酸を振り払い、トレンチコートの裏から拳銃型スタンガンを取り出した。
瞬間移動機能が搭載された謎の手袋、映画でしか見たことがない拳銃型スタンガン。
そして、手から溢れだす硫酸─────。
連発して起こる超常現象とそれに匹敵するほど出来事に、最早、優太は現実感を感じていなかった。
「夢なのか?……これは夢か。」
「違うさ。夢ではないことを、これで証明させてやる!!」
バシュ!!
橋本は拳銃型スタンガンを優太の腹部めがけて撃った。
弾先が小型スタンガンの様な形をした弾は、優太の腹部に命中した。
「ぐ、あァァァァァァァッあぁぁあ!!!!!!」
弾が腹部にめり込んだ瞬間、優太の身体にスタンガンから伝わる何万ボルトの電流。
電流に苦しむ優太を、橋本は少し笑みを混ぜた表情で見つめる。
「さぁ、見せてみろ。お前の超能力を。お前は特別だ!!!選ばれた者なのだ!!!!」
橋本が叫んだ次の瞬間だった。
電流で苦しんでいた筈の優太が、突然目をカッと開き、橋本を睨みつけた。
表情が変わった優太に、橋本はなぜか満面の笑みを浮かべる。
「そうだ……いいぞ………その調子だ。」
優太は歯ぎしりを鳴らし、身体に電流が流れている中、立ち上がって両手を橋本に向ける。
「お前は、ゆるさ、ない……ぜったいに……ゆ、る、さない!!!!!!!!」
「がぁぁぁァァァァあぁぁッああァァァ!!!!!!!!!」
優太の声が廃工場に響き渡る。
その直後、彼の両手から青色の電撃がけたたましい轟音を上げながら放たれた。
橋本は真正面から電撃を受け、後方へ数十メートル飛ばされた。
ガシャアァァーーーン
橋本は後方へ飛んで行き、そのままガラスを突き破って廃工場の外まで飛ばされてしまった。
優太は自分の身に何が起きたの理解できず、青色の電撃が放たれた両手を何度も見る。
「な、なんだよこれ……」
「ふっ…ははははっ……それが、覚醒だ。」
額から顎に血を流しながら、橋本がいつの間にか優太の目の前に立っていた。
先ほどの優太の一撃は凄まじかったらしく、橋本の着ていたトレンチコートはほとんど焼け焦げている。
「どういうことだ、俺は、俺は、いままでこんなこと一度も………」
優太の質問に対して、橋本は素直かつ不気味な笑みを浮かべて答える。
「“超能力者が生まれる”。生み出すのは我々ではなく、時間だ。」
橋本の簡単で短い答えは、優太にとって理解不明だった。
「詳しく説明している暇はない。覚醒したのが確認できれば、俺はこれで用済みだ。」
「はぁ!?」
優太は橋本の言葉を聞いて、ますます橋本の考えが分からなくなった。
橋本の目的が分からない。
優太は両手を前に出し、橋本を呼び止める。
「待て。お前の目的は何だ?てか、俺の体は…………」
「……あ!!しまった!!!!」
優太が質問している途中、橋本が付けていた腕時計がアラーム音を鳴らし始めた。
「くそっ!!時間を喰いすぎたか!!!!」
橋本は両手から青色の硫酸を溢れださせると、周囲を見渡して何かを警戒し始める。
橋本の変わり様に優太はついて行けず、呆然と橋本を見つめていた。
そして、橋本が恐る恐る天井を見上げたその瞬間だった。
「は・し・も・とぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
すでに穴ぼこだらけだった天井を突き破り、なぜか女子高生と全身黒色のボディアーマーを装着した人物が現れた。
謎の2名は地面に着地するや否や、女子高生は両手にすでに装着していたボクシンググローブで橋本に反撃。
もう一方の全身ボディアーマーで顔をヘルメットで隠した人物は、背中に背負った10本の鍔無し刀で反撃する。
「よぉ、大丈夫か。新人。」
橋本と戦っている奇妙な2人を見ていた優太の後ろには、金髪で十字架のピアスを両耳にした青年が立っていた。
「ちゃちゃっと終わらせて、説明するよ。それまで待ってな。」
青年はそう言うと、両手から紅蓮の方を噴射しながら、橋本に向かって駆けだした。
- Re: エンゼルポルタージュ ( No.4 )
- 日時: 2011/12/20 20:03
- 名前: 西 (ID: HhjtY6GF)
<3>
突如、優太の目の前に現れた3人の奇矯な救世主。
全身黒色のボディアーマー、背中には鍔無し刀を10本背負い、頭部はバイクのヘルメットで隠している謎の人物。
見たことのない制服に、両手にはボクシンググローブを装着したポニーテールの女子高生。
腰パンにボタンを2つ開けたカッターシャツ、金髪で両耳に十字架のピアスをした青年。
さらに、青年は優太や橋本同様に超能力者らしく、両手から紅蓮の炎を噴射させている。
本人は、熱くとも何ともないようだ。
しかし、優太が何より気になったのは、彼らの服装は異なるが、服の背中に“EDEN”と刺繍が入っていること。
「萌子とアギトは奴を捕えろ!!絶対に死なすなよ!!!」
青年に命令され、ポニーテールが似合っている坂田萌子と終始無言のアギトが橋本に向かって駆ける。
「厄介な……どうにかして逃げなければ………」
橋本は辺りを見渡し、逃げ穴を探す。
先ほど、萌子とアギトが天井に空けた大きな穴、壁には優太の攻撃で空いた穴がある。
逃げ道は見渡す限りあるが、そこまで到達するのが至難の技であった。
「おらぁぁぁ!!!!!」
高い声で叫び声を発しながら、萌子が素早いパンチを橋本に喰らわそうとする。
「相変わらず威勢だけで、攻撃はストレートだな。」
橋本は萌子のパンチを次々に避け、後ろに下がる。
萌子は橋本の言葉に惑わされず、一旦体勢を整える。
「
次回 更新
- Re: エンゼルポルタージュ ( No.5 )
- 日時: 2011/12/20 20:14
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: rR8PsEnv)
ひょっとして保留中でしょうか?
初めまして、同じく此方シリアス・ダークで小説執筆してます風猫です。
特殊能力物は大好きです(書いてる作品皆、特殊能力とか魔法出るくらいに)
優太の巻き込まれ方と言うか……時間で覚醒するので必然なのですが。
理不尽感が、現れていて良いですね^^
是からも楽しみにしてます!
- Re: エンゼルポルタージュ ( No.6 )
- 日時: 2011/12/21 19:32
- 名前: 西 (ID: HhjtY6GF)
>>5 風猫s
保留中です、、忙しい者でして……
区々な更新になりますが、今後とも宜しくお願いします!!
ちなみに、私も超能力系は好きです♪
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。