ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

A C T † O N 4話うp
日時: 2011/12/29 20:38
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

※喧嘩や荒らしはやめましょーや



> > > > >本当の物語はここから、始まる< < < < <



絶望の遊戯から、逃れろ────。



登場人物>>003

【第壱話 悲劇の舞台の幕は上がる】-Date12.20.Monday…start of day
>>001 >>002 >>004

Page:1



Re: A C T † O N ( No.1 )
日時: 2011/12/28 19:16
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

[第壱話 悲劇の舞台の幕は上がる]-Date12.20.Monday…start of day


東京に上京して、9ヶ月の月日が経った。
新宿区に住む大学1年生の月本幸太は、今日は大学を休み、自宅のマンションで寛いでいた。
休んだ理由は勿論、上京して出会った彼女とデートのためである。
平日の朝7時、幸太はカーテンから差し込む太陽の光を見てつい、笑ってしまった。
今まで18年間生きてきて、初めて出来た彼女である。
彼女と出会った瞬間、心の底から「好き」と想うことができ、守りたいと想った。
幸太はベットから起き上がると背伸びをする。

  ─彼女との初めてのデート─

これほど嬉しいと感じる日は、高校を卒業したあの瞬間以来だ。
ベランダの戸を開け、東京の街を見渡す。
現在、幸太は8階建てのマンションの8階に住んでいる。
家賃は少々高いが、父の職業は政府に関する仕事なので金銭面においては問題ない。
12月の寒い風に当たっても、なんだか寒いと思わない。
今日は何でもできる気がする。
「用意すっか。」
やはり、12月半ばの寒風は寒い。
早々とベランダから家の中に戻ると、リビングの暖房の電源を入れる。
テレビを点け、朝のニュースを見ながら朝食の準備を始めた。

『今朝4時頃、新宿区の新宿ミラノボウルに強盗が押し入り、現金12万円を奪う事件がありました。店内には男性店員1名しかおらず、店員の男性は腹部を刺されましたが命に別条はありません。防犯カメラから犯人は黒のトレンチコートに黒のニット帽を被った、身長約170cmの男性と確認されており、警察は付近の住民に注意を呼び掛けています。では、続いてのニュースです。問題となっている防衛省の………』

出来たての珈琲を啜りながら、幸太はニュースにくぎ付けとなった。
「おいおい…近所じゃねぇかよ。物騒だな。」
とは言いつつも、特に気にすることなく、焼きたての食パンにバターを塗って頬張る。
彼女との待ち合わせまで、まだ3時間も残っている。
「早く起きすぎたな。どうしようか……」
珈琲の入ったカップを持ったまま、テレビの横にあるパソコンの前に移動する。
電源を入れ、メールボックスを確認する。
最近は登録もしていないサイトからのメールが酷い。
そんなメールが、1日に50通を超える時もある。
今日も相変わらず、朝から登録の覚えもないサイトからメールが10通も来ている。
「え〜ぇと、出会い系、出会い系、出会い系、押し売り、出会い系、……ん?」
何か、違和感を感じるメールがある。
他のメールとは違い、宛先も題名もない。
「メール爆弾か?初めてだな、こういうの。」
開く必要もないと思い、読まずにメールを削除するボタンを押す。
しかし、なぜか消えない。
不審に思い、違う迷惑メールの削除ボタンをクリックする。
正常に消えていく。
しかし、このメールだけは削除ボタンを押しても消えない。
「……開いてみるか。」
拉致があかないと思い、幸太はしょうがなくメールを開いた。





『Start.Good luck and bye-bye.』





開いた瞬間、口をポカンと開け、思わず持っていたカップが落ちそうになる。
英語表記で「始め。頑張って、じゃあね」と書かれた文。
ただ、その一文しかない。
後は特に何も書かれていない。
「なんだよこのメール。変なの……」
パソコンの前から立ち上がった直後だった。

ピンポーン♪ ピンポーン♪

平日の朝の7時半に、玄関のチャイムが鳴る。
なぜか、嫌な予感がする。
「だ、誰だ?」
珈琲の入ったカップをテーブルに置き、玄関へと恐る恐る近づく。



ガチャガチャ     ガチャン!!



鍵が、勝手に開いた。
「な、な、ちょ、ウソだろ!?」
幸太は思わず風呂場に駆け込み、浴槽の中に身を隠す。


「ボンジュール、月本宅。」


ドアが開く音と同時に、男性の声が聞こえた。
整った顔立ちに銀髪が目立つスーツ姿の男性は、土足のまま家の中に入る。
「ラプラス、部屋の中を探せ。まだ家にいるだろう。」
「了解。」
銀髪の男性の後ろから、黒ぶち眼鏡をかけた若い青年が現れる。
ラプラスと呼ばれた青年は、ドアを開けたピッキング道具を腰のポーチに戻し、腰から拳銃を取り出す。
そして、拳銃を構えたまま幸太の家の中で何かを探し始める。
「な、なんだよあいつら……け、警察に連絡……携帯、リビングかよ………」
浴槽の中で1人、自分に悔しがる幸太。
一方、リビングに足を踏み入れた謎の2人組は、あちこちを散策し始める。
ラプラスは寝室へ行き、銀髪の男性は手袋を付けてリビングを散策する。
「まだ熱いな。」
そう言いながら、テーブルの上に置かれた飲みかけの珈琲カップを手に取る。
カップからは、まだ湯気があがっている。
「おや、例のメールも開いているらしいな。」
銀髪の男性は電源の入ったままのパソコンに気づき、画面を見ながら不気味に笑う。
「先輩、寝室にはいません。」
「リビングにもキッチンにもいない。携帯とパソコンを回収して撤収するぞ。」
銀髪の男性はラプラスに命令して、手袋を外して玄関へと向かう。
その途中、トイレと浴槽が目に入った。
「…まさかな。」
トイレのドアを開けるが、無論、中には誰もいない。
銀髪の男性はスーツの裏から拳銃を取り出すと、構えて浴槽のある方へ進む。
洗面場には誰もいない。
浴槽の方へ歩き、拳銃を構えたまま中を覗き込んだ。






「………いないか。」






浴槽の中は、空だった。
銀髪の男性は拳銃をスーツの裏に戻し、その場を後にしようとした。
その時、浴槽の中の奇妙な部分に気がつく。
浴槽の淵や壁には水滴が付いているが、なぜか、浴槽の中には水滴が一滴も付いていない。
銀髪の男性は浴槽の中に目を凝らし、しっかりと観察する。
そして、気づいた。
「もう、逃げたか。」




   *****


「はぁはぁ……」


一瞬の隙を見て、幸太はマンションの非常階段まで逃げていた。
心臓が止まるぐらいの緊張と恐怖で、足の震えが全くなおらない。
「な、なんだよあいつら、なんだよあいつら……」
幸太は恐る恐る、自宅の玄関付近を覗きこむ。
すると、ちょうど2人が玄関から出てきた。

そして、鍵を閉めた。

「あっ……」
幸太はパジャマのポケットを確認する。
勿論、家の鍵を持って行くなんて考えてもなかった。
2人組は辺りを警戒しながら、その場を後にして行った。
「くそっ……なんだよ…あいつら……」
先ほどから同じ言葉を何度も繰り返している自分に、幸太は笑う。



「管理人のところ、行くか。」



幸太はそう呟くと、パジャマ姿のまま、8階から1階まで階段を下って行った。

Re: A C T † O N ( No.2 )
日時: 2011/12/28 23:26
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

憂鬱だが、パジャマ姿のまま1階のロビーにある管理人室に行った。
ブザーを鳴らし、管理人を呼ぶ。
「はいよ、何の用か……あ、あぁ、月本さん、どうしたんだ?」
残り少ない白髪を綺麗にオールバックで整えている管理人の石沢は、なぜか緊張していた。
石沢の異様な態度に、幸太も不審さを覚える。
「どうしたんですか?」
「い、いや、なんでもないさ。ほら、合鍵。」
石沢はなぜか慌てながら、部屋の合鍵をくれた。
「あ、ありがとうございます。」
不審に思いながらも鍵を受け取り、エレベーターに乗って再び8階の自室へと向かう。
エレベーターに乗って上に向かっている途中、幸太は思った。


「そう言えば、俺、管理人さんに合鍵のこと……」




  「一言も、合鍵なんて言った覚えがない。」




幸太はこの瞬間、脳裏に先ほどの銀髪の男性とラプラスと呼ばれる青年の姿が思い浮かぶ。
あの2人は恐らく、管理人の石沢と接触している。
だから、さっき動揺していたのだ。
パジャマ姿を見ても、特に気にすることはなかった。
「これって、やばいよな?」
エレベーターが8階に着き、開いた瞬間に走り出す。
「やばいやばいやばいやばい!!!!!」
鍵を開けると、大慌てで部屋に向かい、クローゼットから服を取り出す。
危険を感じる。
今まで感じたことがない、違う危険のにおいがする。
幸太はパジャマを脱ぎ棄て、ジーパンとシャツを着て、その上からお気に入りのダウンジャケットを着こむ。
そして、リビングに向かい財布と携帯を……。
「あ、あれ?携帯がない?どこだ?どこだよおい!?」
リビングを見渡すが、携帯が見当たらない。
それどころか、パソコンも無くなっていることに今更気がついた。
「あいつら、パソコンと携帯を……」
幸太はふと、キッチンの脇にある家庭用電話を手に取る。
しかし、電源が入っていない。
「……やられた。」
裏を見ると、コンセントと電話を繋ぐコードが切られていた。
今の幸太に、最早、誰かと連絡を取る手段が断たれた。
「何者だよ……あいつら…………」

携帯にパソコンを盗み、電話の電源を断ち切り、管理人と接触していた。

奴らの行動はまるで、幸太の情報を手に入れ、何かを仕出かそうとしているような動きだ。
「とりあえず、待ち合わせ場所に行くか……」
幸太はリビングの時計を見る。
彼女との待ち合わせまで、約1時間半はある。
「バイクで行けば、20分で着くか。」
幸太は玄関に置いてあるバイクのキーを手に取り、ドアノブに手を伸ばす。
その瞬間だった。






「ここだ。ラプラス、ハイゼンペルク、スタンガン搭載拳銃を構えてろ。」






確実に、玄関の外から聞こえた。
家に侵入してきた、銀髪の男性の声である。
今回は先程と状況が違う、恐らく、いや、絶対に今度は浴槽の中に隠れても見つかってしまう。
しかし、マンション8階で逃げる場所などない。
「……いや、ひとつだけある。」
幸太はドアにチェーンをかけ、大慌てでベランダに向かう。
このマンションには火事が発生した時に、逃げれるように8階だけにベランダに7階に繋がるドアが設置されてある。
ベランダの床に設置された鉄製のドア。
ドアの表面に記載されてあるドアの開け方の説明を見ながら、ドアを開けた。
ドアを開けると、向こうは当前だが、7階のベランダだった。
幸太は躊躇せずに飛び下りると、すぐにベランダの戸を開ける。
どうやら、今ここの住人は不在らしい。
辺りを見渡し、幸太はテレビの横で充電中の携帯電話を見つけた。
「ごめんなさい!!」
謝りながら携帯をとると、すぐに部屋から飛び出した。
恐らく奴らは、もう幸太の自宅に侵入している筈だ。
幸太はエレベーターを使い、一気に1階まで行く。
1階に着くと、そこにはロビーに倒れこむ石沢の姿があった。

「い、石沢さん!!」

幸太は石沢に駆け寄り、仰向けの姿から上向きの体勢に変える。
「うっ…す、すまない……あ、あの銀色の髪の男に………従わないと孫を殺すと……」
「待ってて、救急車呼ぶから!!」
幸太は先程盗んだ携帯を取り出し、大急ぎで救急車を呼ぼうとした。
が、そんな余裕を与えてはくれなかった。
エレベーターが上がり始める。
幸太はそれに気がつくと、エレベーターと石沢を見比べる。
「み、見捨てるわけには……」
あの銀髪の男性に協力していたとはいえ、脅されてやったこと。
石沢に悪意はない。しかし、石沢を助けている間に奴らはやってくる。

「どうかしたんですか?」

外から、上下ジャージ姿で首にタオルを巻いたジョギング帰りの若い女性がやってきた。
「あ、あのすみません。管理人さんが倒れてて、携帯で救急車呼んでもらえますか?」
「わ、分かりました!!」
女性は嫌がることもなく、すぐさま幸太から携帯を受け取って救急車に電話をかけようとする。
しかし、その動作が止まった。
「え、あれ?ウソ……これ、私の、携帯ですよね………どうして……充電してるはずじゃ……」



なんという運のない偶然だ。



幸太は女性の言葉を聞いた瞬間、ロビーから駆けだして駐車場に向かう。
自分のバイクを見つけると、キーを差し込みエンジンをかける。
「本っっっっ当、今日は何なんだよ!!!!」
アクセルを踏み、駐車場から猛スピードで飛び出そうとした。
その瞬間、車の陰から拳銃を構えたラプラスの姿が飛び出してきた。
「とまれ!!」
「停まれるか!!!」
幸太はギリギリのところでラプラスを避け、そのまま彼女との待ち合わせ場所まで走り去った。

Re: A C T † O N ( No.3 )
日時: 2011/12/29 14:25
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

† 登場人物紹介 Version.Main †

月本幸太-Kota Tukimoto
 主人公。大学1年生。何者かに狙われ、誤報により殺人容疑をかけられてしまう。

銀髪の男性-Ginpatu no dansei
 幸太を追う集団のリーダーと思われる人物。本名不明。スーツに銀髪。

ラプラス-Rapurasu
 銀髪の男性を「先輩」と呼ぶ青年。本名不明。ピッキングやパソコンの扱いに長けている。

ハイゼンペルク-Haizenperuku
 ラプラス同様、銀髪の男性の部下。本名不明。多種多様な爆弾を常備している。

樋野莉果-Hino Rika
 幸太の彼女。大学1年生。人一倍に優しい性格の持ち主。

須藤秋一郎-Sudo Syuitiro
 警視庁捜査一課の警部。幸太の事件(誤報によるもの)を担当する。

彪野佑介-Hyono Yusuke
 警視庁捜査一課の警部補。須藤の部下。鈍感で運動神経が無い。

Re: A C T † O N 4話うp ( No.4 )
日時: 2011/12/30 12:46
名前: StaR-VoiCe (ID: HhjtY6GF)

-4-


「要するに、“それ”はあなた方の娯楽と解釈してもよろしいでしょうか?」


時は過去に遡り。

薄暗い会議室の様な部屋。
昼間にも関わらずカーテンを閉め切られ、銀髪の男性は暗闇の向こうに座っている何者かと話していた。
「どう解釈しても構わない。俺はただ命令されただけだ、その娯楽を盛り上げろってな。」
「……相手は、ただの一般人でしょう?」
目を細めながら、どこか悲しげな表情を浮かべながら銀髪の男性は呟くように言う。

「いや、違う。標的は国土交通省大臣の息子だ。」

「………合点しました。で、どうしてあなたが選出されたのです?」
銀髪の男性が尋ねると、暗闇に隠れていた男性が姿を現した。
スーツ姿で長髪を後ろで一本に束ねた、現在の観光庁長官である有川明楽は、笑いながら答える。
「金だよ。この仕事を受ければ6000万。更に成功したら4000万与えると言われた。」
有川は銀髪の男性の肩を優しく叩くと、彼の耳元に口を近づけて言った。


「上の命令は、逆らわない方がいい。」


有川はそのまま、薄暗い会議室を後にした。
呆然と立ち尽くす銀髪の男性は、スーツの裏からスタンガン搭載拳銃を取り出し、見つめる。
「これは、正義……」


                ──────。




「……い…………せん…ぱ………先輩!!!」



ラプラスに大声で話しかけられ、銀髪の男性はハッとする。
「先輩らしくないですよ。どうしたのですか?」
黒ぶち眼鏡を人差し指で掛け直しながら、ラプラスは不安そうな表情を浮かべて尋ねる。
「……何でもない。それより、エントランスにいる2人は?」
「ハイゼンペルクが車で保護してます。行きましょう。」
ラプラスにそう言われ、銀髪の男性はマンションの前に止めてある大型の黒いバンに乗り込む。
後部座席には気絶している石沢と石沢を介護する女性がいた。
「大丈夫ですか?」
「あ、あの…どうして救急車を呼ばないんですか?早くしないと、管理人さんが……」
女性の質問を、目つきが鷹の様に鋭く顎に切り傷があるハイゼンペルクが遮った。
「心配するな、救急車は必要ない。」
ハイゼンペルクは腰からサバイバルナイフを取り出すと、躊躇なく女性の首元を裂いた。

「え……あっ………ぁぁぁ……」

傷口に血の噴水が出来上がり、女性はそのままシートに横たわる。
「ハイゼンペルク、この女性をロビーに置いてこい。月本幸太の指紋が付着したナイフと一緒にな。」
「了解です、ボス。」
銀髪の男性の指示通り、ハイゼンペルクは女性を抱え、マンションのロビーの方へと向かって行った。
未だに気絶している石沢に、銀髪の男性は呼び掛ける。
「起きろ。」
銀髪の男性は石沢の腹部に強烈なパンチを喰らわした。
直後、石沢は呻き声をあげて目を開けた。
「がはっ……あ、あんた!!うわっ、なんだこれ!?」
石沢は起きてすぐに、シートが血が汚れているの気が付いて驚く。
「最後にもう一度チャンスをやる。言うことは聞くよな?」
銀髪の男性はスーツの裏からスタンガン搭載拳銃を取り出し、石沢の頭に銃口を付けて言う。
石沢は恐怖で震えあがり、頷くことしかできなかった。
「よし、ラプラス。ハイゼンペルクが来たら次の場所へ行け。」


   *****


バイクを飛ばして20分。


幸太は彼女との待ち合わせ場所である、赤坂に建つホテルニューオータニの駐車場にいた。
荒れた息を整え、大きく深呼吸をする。
現在の時刻は9時過ぎ、約束の10時までは30分は余っている。
「石沢さん、大丈夫かな……」
本当なら人の心配をしている場合ではないが、目の前で死にかけている人を見て、ほっとくわけにはいかない。
しかし、今更どうしようもない。
あの女性が救急車を呼んでくれたことを願うばかりだ。
幸太は腕時計を見ると、辺りを見渡す。
「くそっ、こんなときにお腹が減るとは……」
まともに朝食を食べることができなかった幸太は、とりあえずホテルの中にあるレストランで朝食を摂ることにした。
平日の朝なので、ホテルの中はガランとしている。
無論、レストランにいる客も疎らだ。
幸太はサラダ、珈琲、その他様々な料理をお盆の上に乗せ、テレビの設置されてあるテーブルの前に座った。

「おはようございます。」

テーブルの傍にあるソファーで朝刊を読んでいた老人が、幸太に挨拶をした。
服装はジャージ姿であり、銀縁めがねとスキンヘッドがよく似合っている老人だ。
「おはようございます。」
「いやぁ〜、冬の朝は寒いですね。ジョギングしてたら喉痛くなってね。」
老人は一人笑いながら、ポケットからのど飴を取り出して幸太に差し出す。
「一個あげるよ、もう必要ないからね。」
「あ、ありがとうございます。」
幸太は老人からのど飴を受け取り、お礼を言う。
「それじゃあ、私は。」
老人は軽く会釈をして、そのままエレベーターの方へ向かって行った。
幸太はテーブルの上にあるリモコンを手に取り、ニュース番組へと切り替える。
熱々の珈琲を啜りながら、サラダを頬張る。

『今人気のアイドルグループ“JJ6”のシングルCDが1日で40万枚売れたという快挙に、リーダーの志村雪那さんから喜びのコメントを頂きました。志村さんはメンバー全員で今回の……あ、ここで速報が入りました。お伝えします。』

速報という言葉に、幸太のサラダを食べる手が止まる。
「まさか……そんなことは………」




『つい先ほどの9時過ぎ頃、新宿区のマンションのロビーで女性の遺体が発見されました。遺体は首を切られて大量出血による失血死であり、遺体の傍に落ちていた携帯から、容疑者も特定されています。容疑者は現場マンションに住む都内の大学1年生の月本幸太、18歳。容疑者はすでに自宅におらず、警察は殺人容疑と見て、犯人の行方を追っています。』


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。