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- ¥緑白の雪崩¥
- 日時: 2012/01/26 19:05
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
過去とは、所有者の贅沢だ。
¥マエガキ¥
こんにちは!!B判定です!!
更新は週に最低でも1回します!
あと、ゆっくり読んでください、噛み砕きながら読んでください!!
・コメント求めています(ちゃんとコメ辺します!)
・荒らしは厳k…このサイトの人たちは皆優しいので無いと思います!
¥モクジ¥
#1:緑白の始り
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5
Page:1 2
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.2 )
- 日時: 2012/01/15 19:34
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
「今日からお前はウチの組織で働いてもらう。」
「…そ、組織…ですか。」
Fと言う名の男がポケットから一枚のメモ用紙を取りだした。
そこには何処の国の言語だろうか、ぎっしりと文字が詰めて書いてあった。
「……」
少年は目を凝らしてそのメモを見つめる。
もちろん、何と書いてあるか、本人は分からない。
「そこにあるように、今日からお前は【ニンム】をやってもらう。いい、何も言うな、あとお前の名前は今日から……【エジ】だ。」
「…エ、ジ。ですか…。」
「いいか?そのメモをしっかりと読み砕け、そして、明日の朝、もう一回この場所に来い、分かったか?エジ。」
「……」
「エジ!!。」
「は、はい!!」
「しっかりしろ…今のお前は生まれたての赤ん坊だ、名前も今決められた、新しい命同然なんだ。」
「分かりました…。」
そう言って、Fは廊下の奥へと消えていった。
廊下の灯りは、暗くて、ほんのり橙色だった。
でも、寒かった。
——————————————
今日、僕は新しい名前をもらった。
【エジ】、それが僕の新しい名前だった。
あの男二人組のように、アルファベットじゃないよりましかと思ったが、2つ目の名前をもらうときほど、虚しいものは無かった。
———————————————
「来たか。」
Fともう一人、女性がいた。
エジと同い年くらいの、背丈は小さい女の子だった。
「こいつは今日からお前と行動を共にする、アズルだ。」
「…アズルです。よろしく…。」
「よ、よろしく!。」
思わずテンションが上がってしまった。
案外声が可愛かったからだ。
でも、僕と同じように、生死の淵のルーレットを体験したのかと思うと、複雑だった。
「…?」
エジの右腕には謎の時計が付けられていた。
昨日までは無かった。
「これは、なんですか…?」
「はぁ…お前、読んだのか?メモ、それはな、【ツグナイ】だ。」
「…つぐない…。」
「あ、時間だ、いって来い。アズルについていけ。」
エジとアズルは謎の扉の前に立たされた。
すると、ギギギギ、と古びたしい音を立て、ゆっくり、ゆっくりと空きだした。
スタスタ、とアズルは扉の奥の闇に消えていった。
エジが恐る恐る脚を前に出そうとすると、
「まて。」
「?」
Fが声をかけてきた。
「あの子、危ないから…注意するようにな。さ、頑張って来い。」
「あ、は、はい!」
————————————————
「過去は所有者の贅沢である。そうだろ?」
————————————————
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.3 )
- 日時: 2012/01/16 18:02
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
——————————
「緑白色の目の少年。エジ。」
「へ?」
エジは戸惑った。
突然口を開けたアズルの口から、どう答えて良いのか分からない言葉が吐き出されたからだ。
緑白色の瞳を持つ、エジの特徴は極めてそれだけだった。
「君は何故、ここにいるの。」
「それは…」
正直覚えていない。
気が付いたら冷たいコンクリートの空間にいた。
目隠しをされ、猿ぐつわをされ、謎の男たちの声がしただけだった。
「何をされた。」
エジの目の前をスタスタと歩きながら、淡々と直球質問を投げてくるアズルは、ときどき周りをきょろきょろと、落ち着かないようなそぶりを見せる。
「ロシアンルーレット、です。」
「Gか…。」
何でも知っているような返事だった。
まるで、ずっとその組織にいたような。
案の定、その通りであった。
「ツグナイを見て。時計に見えるそれは、長針がニンムの目標の位置を示している。」
「短針は?…」
「…あとで分かる。」
エジのツグナイの短針は30分を指していた。
2人とも長針は東北を指していた。
—————————————————
何も聞かされていないエジは、おどおどしながらアズルについて行くだけだった。
見渡す限りの石造りの家が林立する西洋の町並みは、景色を変えること無く、エジの目に流れてくる。
道端に、古びた布を被ったホームレスがいた。
「あ…あぁ…水…。」
「アズル、水を欲しがってますけど…。」
バァン!!
石造りの壁に銃痕がつき、煙が立つ。
アズルの目には殺気が込み上がっている。
前髪で少し隠れていた目だったが、はっきりと分かった。
この娘は人を殺しかねない、と。
「私情を挟むな。ドミナのメモに書いてなかったのか?…」
「ドミナ…?」
「お前に名前を授けた男だ。」
———————
「生きたきゃさ、名前は捨てろや。」
———————
「もちろん。その名前が本当かは分からない。」
「…は、はい。」
「私情を挟むと、ニンムに支障が出る。死ぬか?」
「い、いえ…」
やはりFさんの言うとおりだった。
このコ、怖い。
ふと、アズルはそのホームレスを凝視しだした。
「…その布を脱げ。」
「こ、これはわわわ、私の大事な…」
バァン!!
「は、はいぃぃぃぃ…!!」
ホームレスは一発の銃声で言うとおりにして、布を脱いだ。
アズルはその汚いぼろの布を探りだした。
すると、何かを見つけたように、鬼のような形相をした。
「これは…【インぺジ】の称号の付いた札だ!!何故お前がこれを!!。」
「し、知らない!!お、おいらはな、なにもしらな…!!」
ドォン!!
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.4 )
- 日時: 2012/01/22 09:27
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
初めて、初めて芯から恐怖を感じた。
人が目の前で殺される光景は幾度となく目の当たりにしてきたが、こうもたやすく人を殺める人間を見たのは今日が初めてだった。
ホームレスの眉間には銃痕が残っていて、後ろの石壁には血と穴が開いていた。
眉間の穴からは一滴も血が流れていなかった。
「ア、アズルさん…。」
エジは何故か声を殺すように小さな声でアズルを諌めた。
「…黙れ、とりあえずここを離れるぞ…。」
「【インぺジ】…とはなんですか…?。」
「…。」
アズルはエジの言葉を無視したのか、もしくは聞こえていないのか、エジの投げかけは空中に浮いていたままだった。
【インぺジ】という言葉がエジに引っかかったようだ。
——————————
短針が29分を指していた。
——————————
アズルは走り出した。
意外と速い。
エジはそのアズルを追いかけるように走る。
「…」
短針が29分を指している。もしかすると、さっきのホームレスが死んだからかな。でも確信は無い。とりあえず、アズル、速い。
ドアのない家屋に挟まれた石の街道を走る。
朝露で濡れている。霧がどんどん深くなっていく。
ドォン!!!
後ろの方から大きな音が聞こえた。
銃声では無かった。
「エジ!!。」
「は、はい!わっ!。」
アズルは走りながら後ろに銃を投げてきた。慌ててその銃を取る。
「これは…?」
「持ってて、先に走って。前から人が来たら撃って!。ターゲットだったらツグナイのアラームが鳴るから。」
そういいながら、アズルは少しスピードを落とし、エジの後ろに回った。
展開が早すげてエジは言葉を返すことができなかった。
「エジは前だけ見てろ。」
「は、はい…!」
エジは銃を構えながら、ただ走った。
—————————————————
「一生付いて回るもの。それは、『過去』だ。だから名前は捨てろ。」
—————————————————
無意識にただ走って、
引き金を引いて、
やっと別の景色に出た。
そこにはさっきの町並みとは違った景色があった。
「ここは…。」
西洋からは少し離れ、古代ギリシアを彷彿させるような柱が等間隔に林立していた。
中には2,3本、風化していた。
「!!」
いつの間にか、ツグナイの短針が12分を指していた。
針が戻っている…。やはり、人の命を奪うことで針が戻るシステムだ…。でも、なんで減点方なんだろうか…。
「あの…インぺジってなんですか?。」
「…敵だ。」
この未だに謎の組織に、また謎の組織が敵対してるなんて、まったく話がつかめなかった。
アズルはホームレスから奪ったインぺジの烙印の付いたぼろの布を取りだした。
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.5 )
- 日時: 2012/01/26 19:03
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
「【インぺジ】についてはここでは話すには長すぎる。しかし私たちの敵には違いない。」
「い、インぺジ…敵、ですか…。」
「ニンムの概要を説明する。」
半紙を切り替えるように、
アズルはクシャクシャになったメモ用紙を取りだした。
それをエジに渡し、読ませた。
アズルはそれと取り換えるようにエジと銃を替え、周りに目を配った。
「今回のニンムはターゲットの暗殺。…としか書いてないですよ。」
「あぁ…。」
「あぁ…って、このままじゃ情報が浅すぎます…。」
「だから【ツグナイ】があるんだ。」
そういいながら、ツグナイを付けた腕だけをエジの前に差し出した。
「さっきも言ったとおり、この長針の指す方向と、このツグナイが知らせる音だけで私たちはターゲットを探さなきゃならない。」
エジはメモをアズルに渡した。
そういえば、短針のことについて訊いておくべきだった。
「あの、この短針のシステムは…。」
大方予想はついていた、命を奪うたびに動く針だ、と。
その気持ちを、どうか裏切ってほしかった。
これいじょう人の命は奪いたくなかったから。
「人を殺すと針が戻る。」
エジの思いも虚しく、アズルは短針のシステムについて、淡とした表情で告げた。
僕はショックだった。
————————————————
今更になって気付いた。
人を殺す感覚が、今更だけど、手に伝わってくる。
無意識に、ただ走ってただけなのに。
まるで違う誰かに乗っ取られたみたいだ。
その間の記憶が全くない、意識が戻った途端、この広場にいた、短針が動いていた、殺した苦い後味が、後から伝わってきた。
「どうした、エジ。気を抜くな。敵は追ってこないから心配するな。」
「ふっ。」
「なんだ。」
「いや、私情を挟むなって言ってるくせに、僕に心配ってたじゃないですか。支障が出ますよ…。」
エジは少し笑顔を浮かべて言った
バァン!!
その言葉を言い終わって、歯を見せたその一瞬の出来事だった。
気がつくと、僕の左頬から血が出ていた。
彼女の目は本気で殺そうとしている目だった。
もう少しずれていたならば、僕は、僕は…。
「今、私がエジに心を配っていなかったら、殺していたさ。」
アズルは前を向いて歩きだした。
いい感じでフォローしたと思ってるよアズル…。
超痛いからね…、かすり傷レベルじゃないからね…。
エジは荷物の中の布を取りだし、傷ついた頬にあてた。
「?????」
血が付いてない。
いや、確かに痛む。
あれ、でもやっぱり痛くないや…。
おかしいな…
———————————————
「彼の調子はどうだ、ドミナ」
「…いい武器になりそうだ。過去を取り戻さない間はな…」
———————————————
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.6 )
- 日時: 2012/02/02 21:44
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
「とりあえずターゲットをさが…。」
アズルが言葉を言う終わる前に、ツグナイのアラームが鳴った。
何とも言えない冷たい音。
単調な音、何の抑楊もない単調な音。
「ア、アズル…鳴ってますよ…。」
「大丈夫だ、慌てるな。」
アズルは慌てなかった。
僕がこんなにも焦っているのに、アズルは焦りの表情を見せなかった。
僕はただ心拍数が上がっていて、グリップを持つ手の手汗が凄かったことだけを覚えている。
カツカツ、と、石の上を歩く足音が聞こえてくる。
音が速い。
歩幅がせまいのか、走っているのか、皆目見当がつかなかった。
しかし、こちらに近づいてくるその足音が、近付くにつれて、アラームの音が大きくなってくるのが分かった。
「ターゲットが自ら来るなんて、マニュアルにはなかった…。」
アズルがぼそっと呟いた。
「へ?」
嫌な予感しかしなかった。
——————————————————
「ドミナ的に、この企業は繁盛してると思うのか?」
「口を開くとその言葉しか出てこないのか?お前は。まぁ繁盛してるよ、従業員もちゃんと働いてくれてるし。」
「アルバイトの子はどうなった?」
「あぁ、モノの言うとおりだ。アイツはいい、生き延びてくれそうだ。」
「おいおい、そのモノっていう呼び方止めてくれよ〜懐かしいじゃねぇか。」
——————————————————
「構えろ。ターゲットがノコノコとこっちに向かってくる前例なんて一つも…。」
*
『お、俺は!!!!違う!!本当だ!!』
ズドォン…
*
「一つも…。無い。」
「は、はい!!」
エジは銃を構えた。
アズルは血のついた剣を取りだした。
おそらくさっきまで使っていたのだろう。
ツグナイの音がマックスになった。
「来るぞ!!」
霧の奥から人影が現れた。
アズルが引き金を引こうとした。
「!!??待って、アズル!!」
ドォン!!
霧の空に銃声が響いた。
大きかった。
「何をするんだ!!ターゲットだぞ!!」
「違うんです!あれは、あれは…僕の…。」
完璧に姿が確認できた。
「僕の、兄さんです…。」
僕の兄さんが、ターゲットにされていた。
まだ良く分からない組織の、よく分からないターゲットに。
謎の、黒い模様が、兄さんの顔じゅうに広がっていた。
誰かに描かれているようだった。
その謎の、何かを意味いているような幾何学模様は顔だけじゃなく、腕にもあった。
「兄さん!!」
「エジ!!しっかりしろ!!あれはお前の兄さんじゃない!!」
「アズルに何が分かるんだ!!」
エジは掴むアズルの腕を振りほどいた。
そのニイサンのそばに寄った。
「兄さん、僕だよ!!……だよ!!」
自分の名前が言えなくなっていた。
名前が、その言葉が、死んでしまっていた。
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