ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 探偵【サトリ】
- 日時: 2012/01/13 12:34
- 名前: コマンド (ID: wIq7.HTN)
序章
——Do you know 『satori』?
昔、人間の考えを読んでしまうサトリという妖怪が棲んでいた。
でも、決して人間に害を及ぼさない妖怪でした。
サトリは人の害にはならず、気味悪がって人がこれを殺めようとすれば、その意を得て覚りて逃げ去ると言い伝えられる。
ある日、木こりが焚き火をしているとサトリがやってきて考えていることを言い当て始めた。
あせった木こりは辺りの物を焚き火にくべながら様々なことを考えていった。
やがて思考が途切れ始めた時、焚き火の中の栃の実がはぜてサトリの片目を潰した。サトリは人間という奴は思いも寄らぬことをすると叫んで逃げていった。
もしも…
もしもですよ?
もしも、【サトリ】と同様に『人の心を読むことができる』人間がいたら…
どうします?
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- Re: 探偵【サトリ】 ( No.1 )
- 日時: 2012/01/13 12:28
- 名前: コマンド (ID: wIq7.HTN)
はじめまして、コマンドです。
初投稿にチャレンジしてみたいと思います。
なので、お見苦しい所もあるでしょうが広い心と温かい目でお願いします。
また、自身がよく分かっていない初心者ですのでアドバイスや感想もできればお願いします。
では、どうぞ。
↓
- Re: 探偵【サトリ】 ( No.2 )
- 日時: 2012/01/13 22:01
- 名前: コマンド (ID: OS.29i1w)
—前夜—
十月。
肌に突き刺さるような風が轟々と唸りをあげていた。
木枯らしが茶色くなった落ち葉を巻き込み、くるくると踊っているようにも見える。
そんな中、片岡美咲は寒さに身を縮こませていた。
マフラーに首をうずめる姿は、さながら亀のようだ。
コートや手袋では隠れない耳がちぎれそうなくらい痛い。
見ることはできないが、恐らく真っ赤になっていることだろう。
再び木枯らしが吹き、反射的に首に巻いたマフラーに顔をうずめる。
昼間とは違い、夜では寒さに差がありすぎる。
凍てつくような風に身を縮込ませながら、家路を急いだ。
その日は運悪くも、車を車検に出していたため家からは歩いてきたのだった。
美咲が経営しているネイルアート店、『スウィート・エンジェル』は大通りから少し外れたところにあるためタクシーはなかなか捕まらない。
特に歩いていけない距離ではないので、美咲は歩いて家路を辿った。
——早く家に帰ろう。
早く家に帰って風呂に浸かりたい。
その思いが美咲の住むマンションの近道である芦屋公園に足を向けた。
この公園を抜けたところに点在しているのが、美咲の住んでいるマンションだ。
逸る気持ちが足を急がせる。
せかせかと足を速めた、その突如のことだった。
「……っ!」
後方から闇に紛れた二本の腕が、にゅるりと美咲の体にまとわりつく。
街灯の明かりはぽつりと点灯しているだけで、なんら役にも立たない。
美咲は驚きと恐怖に顔が歪み、声にならない悲鳴を上げる。
助けを呼ぼうとするが、声が出ない。
否、出すことができない。
太い腕にがっちりと押さえつけられ、あまつさえ角ばった大きな手で口を押さえられてしまえば、女の美咲になすすべは無い。
美咲を取り押さえている人影は、体格などから言って男であることは間違いはない。
じたばたと足を動かし己の手で相手の男を突き飛ばそうとするがさすがに男に通用することなく、あっけなく取り押さえられてしまった。
口からはくぐもった声がひっきりなしに上がる。
目には涙が溜まっていって、暴れる際にこぼれ頬を伝った。
長らく抵抗が小さくなり、体力も寒さでどんどん奪われていった。
それを見計らったのか、男はポケットに入れてあった物を取り出す。
折りたたみ式のナイフの刃先を出し、その手を振りあげた。
月光に照らされたナイフが、ギラリと怪しく光る。
途端、さっと美咲の顔色が変化する。
先程までとは違う明確な恐怖が全身を駆け巡ったのが分かった。
男の持ったそれは、迷うことなく美咲の胸に深々と埋め込まれた。
息が詰まるような、それでいて鋭い痛みが胸の辺りから一気に全身を襲った。
数秒後、男をつっぱ退けようと躍起になっていた手が、力なく湿った地面に倒れこんだ。
後につれて、じんわりと滲んだ血液が紺のコートにじわじわと染みをつくっていく。
ずるりと抜かれたナイフからは、赤々とした鮮血がぽたぽたと滴り落ちた。
男が最後に見た美咲の表情は、今まで感じたことの無い圧倒的な死を目の当たりにし、覚悟したそれだった。
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