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- 人神は冥界で踊る
- 日時: 2012/01/16 17:33
- 名前: 桜風 (ID: NypakStI)
- 参照: http://www5.hp-ez.com/hp/hugen/page1
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イラストなど
こんにちは、桜風です。
小説を描かせていただこうと思います。
─始まりの書─
1、死と少女の章 >>1
─眠り姫の書─
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- Re: 人神は冥界で踊る ( No.1 )
- 日時: 2012/01/16 17:36
- 名前: 桜風 (ID: CsaxsRI/)
- 参照: http://www5.hp-ez.com/hp/hugen/page1
【始まりの書─死と少女の章─】
死というのは突然だ。
事故、突然の発作や病気、殺人、自殺──。
僕も単に事故で。
ちょっと、道路に財布を落としたから──車が走ってきてたけどまだ遠いから間に合うだろうとか考えてたら案の定──。
眼前に広がるのは青っぽい黒の岩壁である。
両側をどこまでも続く岩壁に囲まれており、視線を落とすと細い川が目に映る。薄暗い景色は何とも不気味だった。
これが死後の世界という奴だろうか。
そこに立ち尽くした少年──いや、少女は目を丸くしていた。
輝くような黄金色の髪に新緑の瞳、通っていた学校の男子用の制服。その姿はどこかの王子様を連想させる。
獅子塚ルイ。
それが彼女の名前だった。
ルイは辺りを見回したが、暗闇がどこまでの続いてるだけでどこへ行けばいいのか分からなかった。
ふと目の前に人影が現れる。
一人の青年のようだった。もしかしたら違うのかもしれない。
銀灰色の髪に頭には変な狐の仮面。吸い込まれそうなブルーの瞳。
彼はルイを見据えながら口を開く。
「死人はこっちだ、ついて来い」
そう言い、背を向けて歩き出す。
ルイは慌てて後を追う。
彼の後に続くながら思考を巡らせる。ここに来る直前の状況を思い出す。
車とぶつかったところで記憶が途切れている。
ここは、どう見ても病院ではない。彼は死人と言った。
恐らくは、病院に運ばれていたとしても助からずに────。
嫌な予感が頭をよぎる。
もう自分は死んでしまったのではないかと。先程は軽く死後の世界なのではと思っていたが、いざ冷静に考えるとそれはとても受け入れがたい事実である。
脳裏に浮かぶのは友人や家族の姿。
突然、自分が死んで一体どんな反応をしているのか心配になってきた。
でも戻ることはできないのか。
心臓が鼓動し、今にも泣き出したいほどだった。
ルイは、彼の背中をじっと見つめた。
そして尋ねる。
「僕は死んだの?」
「その通り」
「どこに……」
「死後の世界だな」
その一言は、氷の刃のように深く突き刺さる。
やはり、自分は死んでいたのだ。
目の前に広がる暗く閉鎖された空間はよりいっそう不気味に感じられて不安が込み上げてくる。
このまま死後の世界に行くというのは嫌だった。
(死後の世界に行って、ずっとぼーっとしてるのか? それとも記憶も何もかも消されて生まれ変わるのか? 正直、僕はどっちも嫌だ。どうにか方法はないかな……)
死後の世界に着くまでに考えなければと必死に方法を探す。
一歩、また一歩と進むにつれ、闇がしだいに濃くなってくる。
その闇は今まで見たこともないほど深く──押しつぶされてしまいそうなものである。
死後の世界に足を踏み入れるわけにはいかない。そう思う。
自分の死ぬのではなく、何かを──。
ルイは、彼の黒い着物を掴む。
彼が振り向いてこちらを見据える。
何かを言わなければ、自分は死後の世界へと連れて行かれてしまう。
そんな思いが込み上げ、ついに言葉を発する。
「待って」
「何だ?」
「僕は、僕は──」
「死後の世界はべつに恐いものではないぞ? 休息の地だ」
休息。
そんなものはいらなかった。
自分は何かをしていたかった。
「僕には、休息なんて必要ないっ」
搾り出したたった一言。
その声が暗闇のなかを吹き荒れる風にさらわれ、ゆっくりと消え去って行く。
彼は確かめるように質問する。
「いいのか? ここで休息しなければ、神と同じく永遠に休みは得られないぞ?」
「僕は、僕のままでいい。生まれ変わったりなんかしない」
「そうか。しかし、人に永遠を与えるのは条件があるんだ」
「条件──?」
確かに簡単には無理なのかもしれない。
しかし、その条件とやらをクリアすればいいのであれば。
「しかし、君は確か……」
彼は懐から豪華な装飾が施された重そうな本を取り出して開いた。
その本のあるページを見ながら呟く。
「男嫌いだったな。なら、この条件は難しいかもしれんが──」
「は……?」
「今から語るのは、人であったが神へと召し上げられた女の物語だ」
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