ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 退廃シンドローム
- 日時: 2012/01/22 14:14
- 名前: 桜坂 ◆94NvLfMa2I (ID: YFbnCp7J)
——そうして、外への扉は閉ざされた。
こんにちは、主に複雑ファジーでかいてる桜坂です!
今回は息抜きにかいてみます(´ω`)
では、よろしくお願いします!
■白壁の町、閉鎖的環境、視察生
>>1 >>2 >>
■
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- Re: 退廃シンドローム ( No.1 )
- 日時: 2012/01/22 11:56
- 名前: 桜坂 ◆94NvLfMa2I (ID: YFbnCp7J)
目の前の壁は恐ろしく高い。濁りのある白い壁は、傷一つなかった。この壁の向こう側はどんな風になっているのだろう。しかし、私達には想像することしかできないのだ。決して、壁を超えることはできない。
壁に囲まれた町、それが私の住んでいる場所だった。
*
私の家は父子家庭だ。母は病で倒れてしまった。それは仕方のないことだったと思う。私達だって、明日生きているとも保障されないのだから。
まあともかくとして、私の朝はだいぶ早い。父と私のお弁当を作らなければいけないのだ。中学生の時は給食があったけれど、高校生は大変だ。手早くお弁当を作り終えると、私は家を出た。家、というよりはアパートだけれど。父も、あと数十分したら布団から抜け出すだろう。
「凪ちゃん、おはよ」
後ろから声を声をかけてきたのは、同じクラスの長谷川香織ちゃんだった。私も笑って手をふる。
「おはよ、香織ちゃん。香織ちゃんも今日は朝早いね」
そういうと、香織ちゃんはさも当然というように胸を張った。香織ちゃんは遅刻の常習犯なのだ。今日は何か特別なことがあっただろうかと考えるけれども思い当たらない。
「今日はね、転校生が来るんだよ」
転校生。頭の中で反芻した。
転校生が来ることは、珍しいことでは無かった。というよりも、割と頻繁来る。ただ、転校生と言うことだけでは、香織ちゃんの気は惹けないだろう。私は尋ねた。
「転校生がどうかしたの?」
「あたしね、、昨日松岡先生と花澤先生が話してるの聞いちゃったの」
うふふ、と香織ちゃんはいかにも女の子らしい笑い声をあげた。
松岡先生は厳しい女の先生で、私達の担任だ。花澤先生は柔和な若い男の先生で化学を担当していて、女子に人気がある。奇妙な取り合わせだな、と私は思った。
「あのね、今度の転校生は視察生らしいの。しかも、かっこいいって!」
視察生ときいて、私は目を丸くした。
視察生、読んで字のごとく学校を視察しにくる生徒。私の学校、というか町は少し特殊だ。だから、ほんのたまに視察生がくることがある。といっても、私は見たことがなかった。
なにせ、数年に一回来るか来ないかだったから。
「香織ちゃんも相変わらず面食いだね」
半ば呆れながらいう。
「ふふっ、最近高崎先輩にも飽きてきたしね」
香織ちゃんはころころとお気に入りを変える。最近までは、三年生の高崎先輩のファン、つまりはお気に入りだったらしい。香織ちゃん曰く、お気に入りは目の保養だった。
「あ、そろそろ急がなくちゃ!」
香織ちゃんが、近くの公園の時計を指差した。
確かに、朝のホームルームまで後わずかだ。私達はお互いに顔を見合わせて頷くと、学校までの道のりをかけだした。
「疲れたっ……」
「凪ちゃん、速すぎる……よ」
学校は坂の上にある。この町唯一の高校で、人数はそれなりに多い。校庭には私達と同じように校門を滑りぬけた生徒が多かった。
校則は基本緩い。けれど不思議なことにそこまで荒れている生徒はいなかった。騒がしい転校生も、徐々にこの学校に馴染んでいくのだ。
私達は息を整えながら教室へむかった。教室はもうすでに多数の席が埋められている。
「セーフ! ああ、もっとゆっくりいけばよかった」
そんなことを言いながら、香織ちゃんは自分の席へとついていった。私も自分の席に着く。
そうして、数分後に松岡先生が来た。松岡先生は神経質そうに辺りを見回す。何気なく香織ちゃんを見れば、にやにやと笑いをおさえきれないようだった。
松岡先生がようやく口を開く。
「今日から視察生がくることになりました」
どよめきが起こった。松岡先生はそれに咎めるような視線を送ると、咳払いを一つする。
「静かに。入ってきなさい」
すると、扉が開いた。
入ってきたのは、髪をほんのすこし茶色く染めた男の子だった。香織ちゃんが言っていた通り顔立ちが整っている。冷徹そうな、黒い瞳が印象的だった。
「三条春樹です。よろしくお願いします」
そういって彼、三条君はほほ笑んだ。
この教室に、壁の向こうの住人がきた瞬間だった。
- Re: 退廃シンドローム ( No.2 )
- 日時: 2012/01/22 14:13
- 名前: 桜坂 ◆94NvLfMa2I (ID: YFbnCp7J)
あるいは隣の席の人と囁き合って、あるいは彼に好奇の目線を向けたりして反応は様々だった。
「視察生だからといって特別扱いはしないでください。僕は皆さんと同じように授業を受けます」
そう言って、彼の目がすっと細まる。何故だか、背中に悪寒が走った。彼は、松岡先生に促されて教室の窓際、隅の方の席に座った。教室中が妙な熱気に包まれる。
窓の外では、鉛色の雲が垂れこめていた。
*
「凪、一緒に帰ろう」
「理紗!」
学校が終わり、教室を抜けて待っていたのは中田理紗だった。腰まである長い黒髪をゆらしていた。理紗は、隣のクラスで中学生の時から友達だった。
「凪の所って視察生が来たんだろ?」
理紗は、大きな目をさらに見開いて私に尋ねてきた。
「うん、来たよ」
「どんな感じだった?」
畳みかけるように聞いてくる。なんて言ったらいいんだろう、私は彼の姿や雰囲気を必死に思いだした。今日一日見ていて特に変わったことはない。昼休みになると皆に囲まれていたけれど、それにもそつなく対応していた。
「えー……。なんか怖い、かな」
声を潜めて言った。彼、三条君を見た時、何か底知れないものを感じた。視察生、というだけでは片がつかないようなもの。理紗はかなり驚いたようだった。
「ふうん、怖いか。あたしは普通に見えたけどな」
それから理紗は帰りにどこかに寄ろうと言ってきた。それに二つ返事で了承すると、夕焼けの街にたった二人だけれど繰り出した。
「今日は散財する覚悟だ! あたしのおごりだ!」
学校の最寄りの喫茶店にて、理紗は叫んだ。
「ありがとう! あーあ、バイトでもしようかな」
私のさびしい財布の中身を嘆いた。だってお小遣いがあまりにも少ないのだ。バイトするっていったって、最近はあまりバイト募集をかけていない。どうしようかな、本当に。なんて思っていると理紗が素晴らしい提案を持ちかけてきた。
「よし、あたしが紹介してやろうか?」
「馬路ですか」
「おう。あ、あたしチョコレートーパフェ食べる。凪は?」
私は慌ててメニューに目を落とした。
「マンゴープリンでいいや」
「適当だな。そこが凪らしいけど、いつか後悔するぞ」
理紗は子供が悪戯をしかけたような笑顔を浮かべた。
「どういうこと?」
「気にすんな。今日はあたしのおごりだしな」
それとこれとは話が別だ。それを言うと、理紗は豪快に笑ったのであった。
- Re: 退廃シンドローム ( No.3 )
- 日時: 2012/01/22 18:03
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: G9VjDVfn)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
こちらでは初めまして桜板様。ファジーの方ではお世話になってます^^
町の示す閉鎖的環境の意味は何なのか気になるところです。
視察生が何の目的で来たのかも。
佳織ちゃんが面食いですぐに好きな人が変わるのは本当の愛をした事がないからだと予想するのです。
更新頑張って下さいね。
- Re: 退廃シンドローム ( No.4 )
- 日時: 2012/01/29 15:13
- 名前: 桜坂 ◆94NvLfMa2I (ID: YFbnCp7J)
こちらでもよろしくお願いします!
香織ちゃんについてするどい考察をありがとうございます!
香織ちゃんも重要な登場人物だったりします♪
頑張ります、そちらも頑張ってください!
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