ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- - 僕 ら の 音 楽 -
- 日時: 2012/01/28 15:04
- 名前: 立目 里 (ID: pOz8vLGm)
ロックに溺れる少年
洋楽に浸る真面目女子
popに踊る不良女
みんなそれぞれ心に迷いを抱えながら生きている
忙しい15歳の日々............
1話 「15歳とは」 >>01
2話 「15歳とは2」 >>02
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- 1話 「15歳とは」-僕 ら の 音 楽- ( No.1 )
- 日時: 2012/01/28 15:00
- 名前: 立目 里 (ID: pOz8vLGm)
6月。
中三になって2か月の俺は、受験生だというのに勉強もせず、『受験』という実感がわかないまま遊びほうけていた。
たたみ六畳ほどに机とベッドを無理矢理並べた、決して広いとは言えないぼろい部屋で俺はギターをならしていた。レッドホットチリペッパーズに衝撃を受けた俺は、ロックの世界へとのめり込んでいたのだ。俺が重宝しているギター。たった一本の安物エレキギター。それもこずかいを貯めに貯めてやっと買った貴重な一本。安物だけど愛している。しかしながら今の俺にはアンプはない。迫力が多いに欠ける。まあそのうち何とかして手に入れるさ。今はとりあえず練習だ。小さな古い本棚にはバンドスコアが数冊、ギター入門、初心者向けの曲、ギターのメンテナンス方法、世界のロックスター100......等々。今は頼りない感じの俺だけどたくさん練習して、勉強していつか......バンッ
「勉強しなさーいっ、こうせーーいっ!」
扉が開いて入ってきたのは......俺のおふくろ。さっきの「バンッ」でまた少し扉が変形したかもしれない。動揺して立ち上がった俺の足元がミシミシいっている。この家が崩れる日は近い。
「もう九時過ぎたんだからギターは弾かないっ。近所迷惑よ。それよりあんた勉強しなさいよ、受験生なんだからっ。高校行けなくても母さん知らないよ!」
こんな狭い部屋ででかい声出さなくても聞こえてるよ。耳が痛え。
「アンプがないんだから音そこまででかくない」
「はぁ?あんぷって何よ、勉強しないならあんぷもクソも一緒よ」
ブチッ......僕の中で何かがちぎれた。
「ああっ?もっぺん言ってみろよ、ロック馬鹿にすんじゃねえ!このくそババァ」
プチン......おふくろの中で何かがちぎれた。僕は後悔した。
「はあああ?誰がババァよ、おい。お前はクソから生まれてきたんか!勉強しねぇなら出てけこんにゃろお!」
俺はさえない男だ。そして情けない。
マジギレした母親に返す言葉の一つも見つからない。
しかしみんなは知っているだろうか。俺のおふくろの恐ろしさを。
肉屋の一人娘に生まれたおふくろは、高校を卒業したらすぐに包丁を持ち、両親と肉をさばいていた。25年間、休む事なくそれをしてきた母親の腕力の強さと、女一人で店長を任され続けてきた根性は半端ではないのだ。例えるならばド○えもんのジ○イアンの母親のような......。
そんな恐ろしい女を目前にして、俺は何と言い返すんだ?言える言葉があるとすればただ一つ。「すみません」それのみであろう。
早く一人暮らしがしたいだの、ロックスターになるだの、俺は心の中で着々と将来を思い浮かべていながら、結局は反抗もできない青二才。そもそも、ロックスターになりたいなんてただの「夢」でしかない、そう言っていたのは親父。
つまり俺ぐらいの年頃のやつってのは、夢と現実の間、大人と子どもの間をさまよう忙しい生き物なのだ。
それが、15歳なのだ。
- 2話 「15歳とは2」 - 僕 ら の 音 楽 - ( No.2 )
- 日時: 2012/03/04 10:42
- 名前: 立目 里 (ID: YkDMB6yu)
坂。
坂坂坂。
どうして毎日毎日坂を登ったり下ったりしなくちゃいけないの。登った先にあるのは......
坂。
坂坂坂。
ただうるさいだけの学校。
坂。
坂坂坂。
みんな分かってるの?約半年後には「受験」という大きな大きな壁があるじゃない。どうせ実感がわかないとか、まだ時間があるだとか言い訳するんでしょうけど、それにしてもいわゆる「受験ムード」というものが欠けている。
私は登校中にいつも機嫌が悪くなる。別にカルシウム不足ではない。ただ、毎日坂を登るのがめんどくさいだけ。そしてその先に待っている学校という場所がうるさい馬鹿ばっかりの場所だという事を思い出し、今日の1時間目は小テストだという事を思い出し、そうしているうちになぜうちの学校はこんな山のてっぺんにあるのかと考え、今日も隣の席のみみっちいやつにぶつくさ言われるのかと思えば、出てくるのはため息。ただそれだけ。
「おはよう」
うるさい教室のドアを開けてもやつらは見向きもしない。
「おはようひとみ」
私に声をかけたのは、友達。さっきの話だと私には友達がいなさそうに思うかもしれないが、決してそういうわけではない。ただ、私といつも話す友達は、めちゃめちゃ冷めてる人達だ。例えばさっきのともか。授業中は寝てるくせに、テストの点数はすごくよくて、みんなから恨まれてる。それはクラスのみんなの愛情の裏返しかもしれない。しかし彼女自身は周りの目など一つも気にしない人で、図書室に誘っても、「トイレ行くから一人でいってて」なんて平気で言う。普通の女なら嫌われるところを、彼女はそれで上手くやっていってる。ある意味尊敬する。人と関係を持とうとしないのは、後々楽な事で、彼女はいろいろな事件に、といっても女の言い争いだが、そんなことにはいっさい巻き込まれない。そんな自由なともかは私のお気に入りだ。
「ともか勉強してる?」
「1時間ぐらい」
「少なくない?ってかどこ行きたいの、高校」
「桜田高校ってことにしてる。ひとみは?」
「私はもちろん応仁高校。大学は何としてでも行くから」
「別に桜田でも大学は行けるよ」
「どうせともかは、ガツガツ勉強するタイプの応仁が嫌なんでしょ?」
「そのとおり、桜田はもっとのんびりしてるし、上位にいればわりとどこの国立大学も行けるでしょ」
「勉強しないのに大学行くなんてせこい」
「そういうひとみは常に一番でいたいだけでしょ。ただのプライド。でもきっと受かるから心配はしてないけどね」
「どうも」
わりと皮肉な口調が多いけれど、もう慣れてしまったので、卒業したらもの足りないかもしれない。なんだかんだ言ってもともかは受験を意識しているようだ。
あれだけクラスのみんなをけなしてしまったが、実は私も人の事は言えない。家に帰ったらまずイヤホンをつける。耳に流れ込んでくるのは、甘く、そしてスパイシーな洋楽。最初は英語リスニングの練習のつもりで聴いていたのが、どんどんのめり込んでいってしまった。日本の真面目くさった音楽はいまいち刺激が少ない。一度アメリカンpopを耳にしてしまえば、日本の音楽なんて聞けない
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