ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- M∞NLIT N !GHT
- 日時: 2012/02/04 17:04
- 名前: わくてか@ (ID: tSCp5ots)
*Prologue
目が覚めると、そこは森だった。
あたりを見回しても、木。木。木。
そんな木々の間にかろうじて見える空は暗く、そこに浮かぶ月はまるでそこだけくりぬいたかのように白かった。
今宵は、満月だ。
此処は、どこだろう?
とりあえず立ち上がろうと試みる。
それで、地面に手をついたところで、その手に何かが触れた。
振り返るとそこには、小さめの丸い鏡が落ちていた。
拾い上げると、持ち手のない丸鏡に見慣れた自分の姿が映った。
裏に返すと、綺麗な月のデザインが施されており、なかなかに洒落ていた。
再び、表に戻す。
そして、特に何の意味があるわけもなく、其処に映る自分を眺めているうちに、何か違和感を感じた。
「・・・?」
気のせいか。
鏡の中の自分が、瞬きをした。
否、それなら何の不思議もないのだが、確かにその時、私は瞬きをしていなかったのだ。
おかしい。
さらにじっと見つめていると、鏡の中の自分が後ろを振り返った。
「ど・・・うして・・・?」
鏡の中の自分は、またこちらに向き直り、困ったような、驚いたような顔をした。
・・・きっと、今の私もこんな顔をしていることだろう。
どこの世界に、当の本人と違う動きをする鏡があるのだろうか。
全く、この世界は不思議でならない。
そう思いながら、目の前におかしな鏡があるにも関わらず(それ以前に何故か見知らぬ森にいるというのに)、
冷静で居られる自分が一番不思議だ、と思い、笑ってしまう。
嗚呼、全くなんて暢気なのだろう。
小さくため息をつき、その手の内にある鏡をポケットにしまった。
そして、立ち上がると、東か西かもわからぬ方角に歩き始めた。
物語はまだ、始まったばかりなのだ。
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- Re: N !GHT of FOREST ( No.1 )
- 日時: 2012/02/04 17:01
- 名前: わくてか@ (ID: tSCp5ots)
—CAST1
*ルナイト・プラネーテース
森に迷い込んだ14歳の少女。
綺麗な金色の髪のツインテール。
以下、ルナ。
Ⅰ -Ⅰ
おかしい。
それには此処に来た時から気づいていたが、それは想像以上だった。
既に此処まで、2時間ほどは歩いたと思う。
それなのに、少しも夜が明けそうな様子がないのだ。
生憎、時計など持ち合わせていないため正確な時間はわからないので、
今が深夜だとすればそれもおかしくないのだが・・・
あの満月が、さっきからずっとあの場所で止まっているのだ。
それはまるで、ルナを嗤っているように見えた。
おかしい。
やはり、この森は何かおかしいのだ。
急に不安になり、立ち止まる。
・・・もし、このまま家に帰れなかったら?
もし、このまま夜が明けなかったら———。
泣き出しそうになる自分を、どうにか落ち着かせようと、
しばらくそのまま立ち止まっていた。
そして、ここで落ち込んでもどうにもならないという結論に至った。
再び歩き出そうと顔を上げると、
そこには先程までなかったはずの洋館が建っていた。
- Re: M∞NLIT N !GHT ( No.2 )
- 日時: 2012/02/04 17:15
- 名前: わくてか@ (ID: tSCp5ots)
M∞NLIT N!GHT [MOONLIT NIGHT]
Ⅰ -Ⅱ
もうこの際、ちょっとやそっとじゃ驚かないようにしようと思う。
きっと、ここは「不思議の国」なのだ、とルナは自身に言い聞かせる。
そう、いつか読んだおとぎ話のような。
そうでなければ、こんなこと起こるはずがない。
勝手に森にいたり、鏡の中の自分が違う動きをしたり、挙句の果てには洋館登場、なんて。
そんなことを考えているうちに、ルナは重大なことに気が付いた。
(訳はともあれ)目の前には洋館が建っている。それも、かなり立派な。
このまま宛てもなく夜の森を彷徨うくらいなら、一晩くらい泊めてもらおうじゃないか。
ルナはそう考え、洋館へ向けて歩き出した。
- Re: M∞NLIT N !GHT ( No.3 )
- 日時: 2012/02/05 20:54
- 名前: わくてか@ (ID: tSCp5ots)
M∞NLIT N!GHT [MOONLIT NIGHT]
Ⅱ -Ⅰ
「あの〜ぉ・・・」
そう言ってはみたものの、ルナは返事を期待しなかった。
何故なら、この洋館・・・遠くから見ると分からないが、近くで見てみると結構、いや、かなり古い。
人が住んでいるようには到底見えなかった。
「まったく・・・」
誰に言うわけでもなく、1人深いため息を吐いた。
さすがに、古びた洋館に1人で泊まるのは気が引ける。
別の場所を探そうと踵を返したところで、真後ろで扉の開く音が聞こえた。
「あら?もしかしてお客様かしら?」
そこには、(多分)ルナより少し年上くらいの女性が立っていた。
半分ほど開いた扉から半身を覗かせ、やさしく微笑んでいる。
どうやら、服装からしてメイドのようだ。
「あ、はい!実は・・・」
簡単に事情を説明すると、彼女は中へ通してくれた。
とりあえず、今晩は野宿の心配はなさそうだ。
*
「森に迷い込んだ・・・と。それは大変ですなあ」
中に入ると、長いテーブルが並ぶ大広間へと通された。
内装はなかなかに綺麗で、ルナは少し、安心した。
メイドから事情を聞いた主人も、快く了解してくれた。
「まあ、よくある話よね」
そう呟いたのは、(推定)18歳前後の少女だ。
すらりと背が高く、ルナは若干見上げるように彼女と話す。
「そうなんですか」
「まあね。実際、あたしらもそうして集まったのだし」
「えっ」
それには、少し驚いた。
どうやら、彼女達は家族・親子などではなく、元々他人同士だったらしい。
そもそもは、今の主人であるマルスが同じように迷い込んだ森の中でこの洋館を見つけ、帰り道もわからないのでそのまま住み始めたらしい。
どうもこの森はかなり広く、ルナのように(というかここにいる人たちのように)迷い込む人も少なくないようだ。
そうしてこの洋館に来た者が、どんどん住み始めたのだとか。
どうにもおかしな話だが、この森自体おかしなところなのであえてつっこまないようにしておく。
「あっ、そうだ。・・・私、ルナイト・プラネーテースです」
今更ながら自己紹介をする。
主人の名は先程聞いていたのに、こちらはすっかり忘れていた。
背の高い少女は、
「あたし、ヴェネリア。ま、よろしくね」
と、意地の悪い笑みを浮かべた。
どうも、お嬢様感満載だ。
あまり近づかないようにしよう、とルナは思う。
「わたしはミルキーです!よろし・・・きゃあ!?」
先程のメイドが紅茶を注ぎながら自己紹介をしだし、そのまま見事に紅茶を溢す。
紅茶は、真っ白なテーブルクロスに真新しいシミを作った。
「ああっ!?ごめんなさいっ!!」
第一印象とは異なり、かなり要領が悪いらしい。
こちらには、あまり物は頼めなさそうだ。
「僕は、サトゥルノ。一応、召使です」
次に自己紹介したのは、ルナと同い年くらいの少年だ。
こちらは随分真面目そうだ。
そして、その隣にいた少女も、同じく自己紹介をする。
「あたし、ジュピテル。サトゥルノと、同じ」
この仔はどうやら随分人見知りらしい。
と、言うよりもルナを警戒しているように見えた。
さて、これで一通りここにいる全ての自己紹介が終わった。
ルナが口を開こうとした途端、ふいに後ろから声がした。
「また新人?」
ぎょっとして振り向くと、声の主はテーブルの横に綺麗に並べられた椅子の一つに座っていた。
驚いた。
実は、入ってきたときから身動ぎ一つしなかったため、てっきり人形かと思っていたのだ。
その少女は、体制を崩さぬまま、淡々と続ける。
「ま、あたしには関係ないけど。どうせ、また・・・」
そこまで言って、彼女はまた黙り込む。
本当に、黙っていれば人形のようだ。
それにしても愛想がない。
「・・・えと。彼女はソールネア。と、とにかくよろしくおねがいしますね」
沈黙に耐え切れなかったのか、重たい空気を換えようとしたのか。
口を挟んだのは召使・サトゥルノだった。
真面目なだけでなく、空気も読めるとは。
あるいは主人・マルス以上にまともな人間かもしれない。
それにしても、このソールネア・・・。
右目に眼帯をしているのもあるが、どうにも不思議な少女だ。
それにさっき、何を言おうとしていたのだろう・・・。
しかし、そんなルナの疑問は、要領の悪いメイドによってかき消された。
「どーせですしっ!ルナイト様を歓迎いたしましょう!」
- Re: M∞NLIT N !GHT ( No.4 )
- 日時: 2012/02/06 16:03
- 名前: わくてか@ (ID: tSCp5ots)
—CAST2
*ルナイト・プラネーテース
森に迷い込んだ14歳の少女。
綺麗な金色の髪のツインテール。
以下、ルナ。
*マルス
洋館の主人。
細身で背が高く、洋館の中では真面目な方。
年齢は20代くらい?
*ミルキー
洋館のメイド。
髪は茶髪で、肩の位置で綺麗に切りそろえられている。
実はおっちょこちょいで、失敗ばかり。
ルナ曰く、要領が悪い。年齢は企業秘密らしい。
*ヴェネリア
洋館のお嬢様的存在。18歳。
わりと毒舌であり、ソールネアとはあまり仲がよく無さそうだ。
薄い茶色の髪は、腰くらいまで伸ばしている。
*サトゥルノ
洋館の召使。14歳。
常に気を使っている。空気も読める。
真面目っ子で、与えられた仕事をそつなくこなす。
*ジュピテル
洋館の掃除担当。14歳。
金髪のショートカット。
サトゥルノとは何らかの関係がある。
警戒心がかなり強く、ルナをあまり良く思っていない。
*ソールネア
右目に眼帯をした不思議な少女。
年齢はおそらくルナと同じくらい。
高い位置でツインテールにしており、じっとしていると人形と間違えられる。
洋館の人間に心を開いていない。
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