ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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それ、死ねば治るよ。
日時: 2012/02/27 19:29
名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

何で私、ここにいるんだろう。
楽になりたかった、だけなのに。
意味、わかなんないよ。


※ ※ ※

1話 >>1
2話 >>3
3話 >>5
4話 >>6

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Re: それ、死ねば治るよ ( No.1 )
日時: 2012/02/25 23:31
名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

『1話』

 つまらない。意味がない。どうでもいい。
僕の心の中は、おもにこの3つで構成されている。
ぼんやりと見つめた黒板の前では、髪の薄いおっさん教師が、熱弁をふるっている。唾を飛ばしまくるおっさんに、前の席の奴らは、迷惑げだ。後ろの席万歳。
 …つまらない。
おっさんの授業は、生徒置いてけぼりの自分語り。このおっさんから学び取るものなんて何一つない。つまりこれは授業とは言えない。授業とは何かを考えていた方が、よっぽど面白い。
 …意味がない。
授業じゃないなら、時間の無駄じゃないか。本でも読んでたほうが、よっぽど有意義じゃないか。あんたたちの理解しがたい話より、良いよね。
 …どうでもいい。
色々並べ立ててみたものの、正直全部どうでもいい。学ばなくたって、僕らの時代には、僕らの日本語が正しくなっていくんだから。
 僕の心を代弁するかのように、耳を覆い隠す大きめのヘッドホン。そこから流れるのは、お気に入りのバンドの曲。こんな僕でも、このバンドの切実な歌詞には、心打たれるわけ。全てを否定しながらも、肯定を求める。そんな歌詞。
「バッカみてぇ」
 こぼれ出た言葉は、偶然にも、歌詞と重なった。残念ながら、僕の吐き出した言葉は、ボーカルほど綺麗じゃないけど。それでもなんだか、嬉しくなった。ただの、偶然なんだけどね。でも。あぁ、本当に。バッカみてぇ。自分の話に意味がないって気付ねぇおっさんも。将来ばかり夢見て、くだらねぇ話を必死に聞いてる真面目グループの奴らも。逆に、なにも考えないで馬鹿騒ぎしてる不良グループの奴らも。その他変人共も。僕も。みんなみんな、バッカみてぇだ。むしろ馬鹿だ。不治の病だ。
死んじゃえ、みんな。馬鹿に付ける薬はないけど、死ねば治るんだからさぁ。
「君、この問題を解きなさい」
 僕の呟きが気に食わなかったらしいおっさんは、にやにやしながら僕を指名する。あぁ、聞こえていたんだ。黒板に書かれた、長ったらしい問題に、ため息。面倒だけど、なんかムカついたので答えてやれば、当たり前ながら正解。残念だったな!おっさん、あんぐり。生徒は小さく、すげぇ、と呟いている。本当、馬鹿じゃねぇの?おまえら、難しいと面倒の区別もつかねぇの?ネタじゃなくて、ガチで?

 あぁ、本当に、世界は馬鹿ばっかりだ。なんて、うんざりしながら、今日も僕は、貴重な資源を消費していく。

Re: それ、死ねば治る ( No.3 )
日時: 2012/02/25 23:32
名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

『2話』

 つまらない。意味がない。どうでもいい。
この3つの思考は、今日も僕と同じく健在だ。
 学校に着くと、やたらと騒がしいし、急に朝会は開かれるし、校長の話は長いし、うんざり。集会とかマジ嫌い。密集した人間共に、発狂しそうだ。とりあえず校長よ、えー、とか、うー、とか唸りながら話すなら、もっと簡潔にしてくれよ。
屋上から飛び降り自殺した奴がいるから、しばらく休みだ、って。
その大げさすぎる対処はグッジョブだが、話が長いのは勘弁してくれよ。しかも、ここぞとばかりに便乗して、やれ命を大切にしろ、勉強しろ。お前の自己解釈と、道徳的(笑)な話ばっかり、べらべら喋って押しつけてくんな。くだらねぇ。うざってぇ。
 つまらない。
大人のエゴばっか含んだ、意味があるのかないのかわからない、有り難みのない話。同じような話をなんど繰り返すつもりだ。洗脳でもしたいのか、アンタ。こんな、クッソつまんねぇ話を聞くくらいなら、SNS系のサイトで議論でもしてた方が、楽しいし有意義だ。
 意味がない。
さっきから、校長の話は、肝心の飛び降りについては触れてない。くっだらねぇ。小学校の道徳の方がまだ中身のある話してるっつうの。命の大切さを説きたいのなら、行動で示してくれよ。あぁ、死にたくねぇなって思わせるような行動でさ。アンタなんかに誰も興味示さないとは思うけど。
 どうでもいい。
あぁ、ごめん。正直、全部どうでもいいよ。死ぬなり生きるなり好きにしてくれよ。人が死んだくらいで騒ぐなよ。馬鹿だから仕方ないんだろうけど。でも、馬鹿は馬鹿らしく適当に生きててくれよ。僕には関係ないからさ。うるさいの嫌いなんだよ。合法的に休めるなら、なんでもいいよ。
 話自体はどうでもいいけど。死んだ奴には敬意を払いたい。そいつは、馬鹿だらけの世界から自力で抜け出した。馬鹿じゃなくなったんだ。うらやましーね。僕はどこで間違えたのか、まだここにいるから。
「以上、解散」
 やっと、校長の話が終わった。満足気な顔してんな、禿。ヘッドホンは僕とは違い、至って冷静で、新しいアルバムを流し始めた。始まりを告げるその曲を聞きながら、僕は口元を歪めた。

おめでとう、シラトリサユリさん。ようこそ、こちら側へ。


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