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幸せ
日時: 2012/02/04 20:15
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

○Prolog


「私は、貴方が幸せなら。
 貴方が笑ってくれれば、それでいい」


真っ白な世界。
何もない世界。
そこに、私と貴方だけで。
他には誰もいなかった。

「ねぇ、なんで貴方はそんなに悲しそうな顔をするの?
 貴方は、幸せなんでしょう?」

目の前の貴方は、悲しそうな顔をする。
どうしてそんな顔をするのか。
私にはどうしてもわからなかった。

貴方は幸せなのに。
貴方は笑っているのに。


不幸なことなんて、なんにもないのに。


不意に、貴方は私に言った。

「ねぇ。
 君は、俺が笑っているだけで幸せなの?」

俺が笑っているだけで、幸せ。

そうに決まってる。

私は、たったそれだけが望みなのだから。

「君の、本当の幸せは、違うでしょ?」

私の本当の幸せ。

「違くない。
 私は、貴方が笑っていればいいの。
 貴方が幸せで。
 …………それだけで、いいの……」

私は泣きそうになるが、グッと堪え言った。
でも、貴方は笑ってくれない。

笑ってくれない。


なんで?
どうして?
貴方は…………。





貴方は、今、幸せなのでしょう?






◇   ◇   ◇   ◇   ◇







「…………、残念ながら。
 ………『娘』さんは助かりませんでした…………」


「そんな………ッッ」





私の母が、泣く。

その側には、貴方がいて。





「………………藍生?」




貴方は、頬を濡らす。
流さなくてもいい、一粒の涙で。



貴方は、笑っていない。
泣いている。
なんで………?













貴方の幸せは、私がいなくなることじゃなかったの?

















『……………バイバイ』

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Re: 幸せ ( No.2 )
日時: 2012/02/21 19:16
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

○2話

時は流れ、春。
春といっても、あの頃からはもう10年位経っている。
私はもう高校1年生になっていた。

私立星蘭せいらん学院。
金持ち、家柄全く関係なしの実力だけで来れる高校。
私の家は庶民的な家だけど、頑張って勉強した。
そしたらここには入れたという奇跡のようなことがあった。
私は制服代、受講料、何から何まで全て免除された。
本当、人生は苦あれば楽ありなんだなと私は改めて実感した。

すると、誰かが私を呼んだ。

藍生あおいーー!!」
歌織かおり!!」

歌織とは、小学校の頃からの親友。
クラス、委員会、部活。
それら全部一緒。
小学校から中学校までぜーーーーんぶ一緒。
ここまで一緒過ぎると、何か怖くなってくる。

「クラス分け見てきたけど、一緒だったよ!
 また同じだね☆」

……本当になんだか怖くなってきた。
でも…………、

「本当!
 よかった〜〜……。
 ま、これからもよろしくってことで!!」

私は、歌織と親友で。
これからもずっといたいと思ってる。
だから、拒む理由なんて何も無い。
運が良かった、と思うくらいである。


ヒュッッ————————


「藍生、見てよ、
 綺麗な桜吹雪だよ!」

春風に乗って、桜が舞う。
あの頃のように、花びらが舞って吹雪となる。

(………海音)

私は、彼の顔を思い出す。
幼かった彼。
あの頃の顔つきは、いったいどう変化しているのだろうか。


(会いたいな…………)


彼とはもう、10年間会っていない。
手紙も、あの頃みたいに届かない。

彼が生きているのさえも、分からなかった。


「藍生ーーーーー!!
 何やってるの?
 先行っちゃうよーー!!」

気がつけば、歌織は先に行っていた。

「わかった!
 今いくよ!!」

そう言って、私は彼女のところへ向かう。

今、彼は何をしているか分からないけど。

あの日交わした約束を守っていれば。

きっと神様は、私達を巡りあわせてくれるだろうと。

そんなことを考えながら、桜吹雪の中を駆け抜けていった。


………巡りあわせてくれるだろうと。


そう思いながら。

Re: 幸せ ( No.3 )
日時: 2012/02/21 20:27
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

キャラ紹介
如月藍生きさらぎあおい
・星蘭学院高等部1年  ・16歳
・髪の色…藍色     ・眼の色…碧眼
・明るく、優しい性格。
 困っている人がいるとほうっておけないタイプ。
 勉強ができ、運動神経も良い。
 容姿もよく、まさにパーフェクトガール。
 海音と幼い頃交わした約束をずっと守っている。


水無月歌織みなづきかおり
・星蘭学院高等部1年  ・16歳
・髪の色…オレンジ     ・眼の色…青
・とにかく元気な子。
 妹みたいな感じで、みんなから可愛がられている。
 勉強も運動も得意。
 男子よりも、女子からモテる。
 藍生とは小学生の頃からの親友。
 

Re: 幸せ ( No.4 )
日時: 2012/02/24 20:40
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

○3話①

「——————という訳で、話はこれで終わります!
 皆さん、楽しい高校生活を送ってくださいね。さようなら」

さよーならー。

ガタ、ガタッ

始業式がササッと終わり、教室。
先生の長い話が終わるとみんなは一斉に席を立つ。
全国の5本の指に入るほどの秀才高と聞いていたが、そんな様子は全く見られない。
私の見る限りでは、担任の先生もなんだかフレンドリー。
他の子達も、ガリ勉みたいな牛乳瓶の底のようなメガネもかけていない。
極普通の少年少女だ。
…………私、考え過ぎたか?
そう思っていると、後ろから声がかけられる。

「あーおいッッ!!」
「うわっっ!?」

歌織が私の肩に飛びかかって来た。
思わず声を上げてしまい、周りのみんなはこちらを見る。
少し、いや、とても恥ずかしい。

歌織はそんなこと気にせずに、

「『うわっっ』、って………。
 そんな事言われると、私のガラスのようなハートが傷つくよ?
 藍生ってそんな事言う子だったの……?」

ふざけたことを言う。
そんな事言うなら次は私が歌織の方に飛び乗ってやろうか?
…そう言おうと思ったが、ぐっと堪える。
そして、私は笑いながら……

「あははっっ、ゴメンゴメン。
 でも、人の都合も考えようよ?
 次やったら殴るからね?」

なるべく毒をふくむことを言う。
歌織はさすがにやばいと思ったみたいで、

「わ、悪かったよぉ!
 謝るからそんな笑顔で怖いこと言わないで!」

あはは、と笑いながら私たちはこんなやり取りを繰り返す。
それが私たちの日常だ。

「それじゃあさ、そろそろ帰ろ?」
「あ、うん」

歌織の提案に乗って、私たちは帰ることにする。
学校の雰囲気もわかったことだし、そんなに不満はない。
とっとと家に帰って勉強しながら喋ろうと思っていた。

「それじゃあ、行こっ」

私は、歌織の後ろを追いかける。

外は、桜吹雪が舞う。
私たちの帰路を、導くように。

桜は舞っていた。

Re: 幸せ ( No.5 )
日時: 2012/02/26 16:31
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

○3話②

「——————という訳で、話はこれで終わります!
 皆さん、楽しい高校生活を送ってくださいね。さようなら」

さよーならー。

ガタ、ガタッ

始業式がササッと終わり、教室。
先生の長い話が終わるとみんなは一斉に席を立つ。
全国の5本の指に入るほどの秀才高と聞いていたが、そんな様子は全く見られない。
私の見る限りでは、担任の先生もなんだかフレンドリー。
他の子達も、ガリ勉みたいな牛乳瓶の底のようなメガネもかけていない。
極普通の少年少女だ。
…………私、考え過ぎたか?
そう思っていると、後ろから声がかけられる。

「あの……」
「はい?」

後ろを向くと、女の子が2人立っていた。
一人目は、声をかけてきた少しおどおどした少女。
髪は真っ直ぐな長い髪。
白い肌が、漆黒の髪の美しさを更に引き立てている。
2人目は、少し強気な少女。
深い緑の短い髪。
少し釣り気味の緑の瞳。

2人とも、とても綺麗だった。

短い髪の少女が口を開いた。

如月藍生きさらぎあおいさん………、でしたよね?
 この高校に主席で入学した………」
「はい、そうですけど……。
 何か御用ですか?」

私がそう聞くと、少し遠慮がちな声でこう言ってきた。


「良かったら、お友達に、なってくれませんか……?」


………………。
『お友達』?
歌織以外の、友達。

考えたこともなかった。
私と歌織は、高校生活でずっと2人で過ごすかのように思っていたから。
声をかけられるなんて、思いもしなかった。
だから、私はこう言った。

「ええ、良いですよ?
 そんなに畏まらなくても大丈夫なのに……」

すると、2人はパァッと笑顔になる。

「「本当ですかッ?
 ありがとうございます!」」

2人ははもってお礼を言う。
それを見ていると、なんだかこっちも嬉しくなる。

「おーい、藍生ーー!」

歌織がこちらに来る。
先生に捕まっていたようだ。
歌織にもこのことを話そうと思う。
私は2人に、

「私も連れがいるんです。
 良かったら、どこかの店に入ってお話しませんか?」

2人は快く了解してくれて、歌織にも話すと、

「OK!
 それじゃあ行こうよ!!」

みんな結構乗り気だ。

人数が増えるといいな、と思いながら。

私たちは校門をくぐった。

Re: 幸せ ( No.6 )
日時: 2012/02/29 18:49
名前: ARISA ◆05Q6suVuis (ID: yE.2POpv)

○4話②

「えっと、私は黒晶亜希こくしょうあきと言います」
「私が、翠川舞紀みどりかわまきって言います。よろしくね!」

私たちは、テキトーにファミレスあたりに入って自己紹介をしていた。
髪の長い人が、黒晶亜希さん。
髪の短い人が、翠川舞紀というらしい。

「私は、如月藍生と言います」
「私は水無月歌織!
 よろしくねぇ〜〜☆」

私と歌織も自己紹介をした。
歌織は不真面目に自己紹介をしたが、相手にとってはフレンドリーな感じがしたらしく、これはこれでよかったみたいだ。

「あ、私のことは呼び捨てでいいよ。
 気楽にいこうね、気楽に!」

歌織がそう言うと、二人の表情が明るくなり、

「それじゃあ私も呼び捨てでいいよ!」
「私のことも!」

二人共そう言い、歌織は

「それじゃあ、亜希と舞紀ね!」

三人はニコニコ笑いながら言う。
そして、一斉に私の方を見る。
……少しだけ視線が痛い。
だから私は

「うん。私のことも呼び捨てでいいよ?」
「ヨッシャァァァァァァ!!」

なぜか喜んだのが歌織。
亜希たちも手を組み喜んでいる。
歌織が大きい声を出したものだから、他の客はこちらを一斉に見る。
あぁ、恥ずかしいったらありゃしない。

「よかったね〜!」
「よかったよぉ〜!!」
「やったね!!」

三人で喜んでいると、こちらも和んでくる。
これからこのメンツで過ごすのは、今から楽しみだ。

(……アイツもいたら、もっと楽しくなっていたのかな?)

花畑の中で約束を交わした、海音。

君は一体、何をしているのだろうか。

「おまたせしました〜〜、ランチセットです」

ウエイトレスの声で、私は現実へと戻る。
ちょうど4人分来たので、みんなで食べられる。
歌織達はもう食べようとしている。

「藍生、早く食べないと冷めちゃうよ!」
「そうだ、今話してたんだけど帰りにカラオケ行こうって話!」
「そうそう!言ってもいいよね!!」

私が考えているうちにいつの間にこんなに話が進んでいたんだ?
少し呆れたが、まぁいいと思う。

「うん、いいよ。
 何歌っとくか決めときなよ!」

このあとにカラオケという楽しみを抱えながら、私たちはランチセットに手をのばす。
これからの人生が楽しくなってほしいな、と思いながら。


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