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- 動物氏族、
- 日時: 2012/04/23 21:09
- 名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)
シリダク、今まで完結させたことのない夜坂です。
さて、世界には多種多様の民族の皆様が住んでいます。
それぞれ、自らの信じる道に反って存在していきます。
なんて格好良いことを書こうとしたのですが、無理ですね。
そして、この物語、登場人物が何人になるか分からないですがやはり氏族という設定ですのでオリキャラ的なものを募集したいと思います。あ、すぐではありません。第一章が終わる頃くらいに募集したいと思います。なお、民族の種類は全てはまだ決まっておりませんので、細かい設定を聞いてこちらで氏族を決めさせていただきたいと思います。
以上、予告でした
まぁ、相変わらずの夜坂ワールド。どうぞご鑑賞あれ
---目次----------------
*第一章
第一話 兄の引き換え >>1
第二話 ライオン族とハイエナ族 >>2
第三話 ウサギの獲物 >>3
第四話 旅立ちの意味を知る >>4
**お客様*****
Page:1
- Re: 動物氏族、 ( No.1 )
- 日時: 2012/04/19 22:54
- 名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)
第一章 第一話 兄の引き換え
行かないでくれ、行かないでくれ。あちらへ行ってはいけない
ギルは懸命に兄の身体を揺すった。兄からは段々と温度がなくなっていく。そのせいで涙が通った場所は凍り、指は感覚が遠のいていく
「ギル。君は……氏族の誇りを…………」
途切れ途切れに兄は言う。そんな兄を見るのはギルには耐えられなかった。だけど、此処で兄が寝てしまったらきっと起きることはない。
何が起きたのだろうか。ギルが知る限り、有り得ないことであった。
此処まで、恨みの魂が強くなっていたなんて。
「あれは、誰にも止められない」
兄はほとんど目を閉じた状態で言った。兄の頭と腹からは大量の血が付いていた。怖ろしい。
「兄さん、やめて。寒い、寒いよ」
凍った涙の上からはまた新しい涙が溢れて来る。もう、半日も水を飲まないで喉はカラカラだったはずなのに目からはたくさん、驚くほどたくさんに水が出る。指がまた一つ、感覚を失っていく。もう、自分に手があるのかさえギルは分からなくなっていった。
「待って、母さんを父さんを呼んでくるから」
「ギル、よく聞け。今までの父さんの話のように、耳を澄ませて、息すら聞いてくれ。」
兄の目は見えなかったけど、もし見えていたらきっといつも温厚な兄からは考えられないような鋭い閃光を放っていたことだろう。ギルは一つつばを飲み込み、兄を見据えた。
「<全てを飲み込み、全てを喰らう者は大きなモノを救うこととなるだろう。その喰らう者はやがて悲しみを覚え、苦しみを覚える>」
兄は我が一族に伝わる言葉を言った。
「それが、どうしたの」
「きっと、すぐに意味が分かる。南に行け。きっと君に使命を与えてくれる者が出る。ずっと、ずっと南だ。分かったな、うん、君は要領の良い子だと兄さんは知っている」
「それじゃあ、分かんないよ! 僕は馬鹿だもの。教えて、兄さん、もっと生きて教えて!」意味がない。
兄は最後にひゅうと大きな怖ろしい音をたてて息を吸い、首に下げていた笛のようなものを吹いて、動かなくなった。
「兄さんっ! どうすればいいの、母さんは父さんは……」
死んだ兄と引き換えに、泣いているギルの目の前に立つは雄のライオンと雌のハイエナ。その二つはまるでギルを見定めるかのように見た。
「うっ」
ギルは其の身を縮こまらせた。ギル達の氏族——ウサギ族には天敵だったからだ。
逃げたい。そう思っても寒さと恐怖で動けない。二匹はゆっくりと堂々とギルに近づいていく。何よりも強く、何よりも賢いそれは美しかった。雪の中で映えるその生き様はどんな神よりも美しかった。
だが、やはり怖ろしかった。
「やめて、来ないで。来るな」
どんなに言ってもやはり聞かない。
ライオンが吠えた。そして、その後にギルは自らに対する不安を抱いた。
<怖がるな>
ライオンがそう言ったように思えた。その後にハイエナが低く長く唸る。それもまるで人間の言葉のように鮮明に分かった。
<誰だ>
ギルは、兄をそっと手から離し、ライオンとハイエナはじっと見つめた。
<そう、俺達を見ろ。そして認識しろ>
ライオンは思ったよりも穏やかな性格をしていた。瞳も澄んだ琥珀色に輝いていて、まるで一つの骨董品のようだった。しかし、ハイエナは逆だった。ギルをとても警戒し、歯をむき出しにしてこちらの様子を伺っている。もしかしたら先程の質問の返答を待っているのかもしれない。
「僕は、ギルだ。君達は? どうしてここにいるの?」言葉が通じた。
ハイエナはその毛を揺らしながら一歩ギルに歩み寄ってこう言った。
<ハイエナは呼ばれただけだ。そこに寝てる奴に>
「兄さんに?」
<友人の死は辛いが、来た>
「友人?」
<後で分かる>
兄もハイエナも、ギルを焦らすのが好きなのだろうか。
<さて、立ち話は此処で終了だ。南へ行くのだろう>
「うん」
<俺達が案内する。お前の向かう場所へ>
「僕の向かう場所って何処なのさ」
<お前が向かう所。それはお前の兄、俺達の親友を殺したモノを封印させる所さ。名前は【悪霊の聖所】だ。全てを清めよう>
ギルは金獅子への恐怖はすっかり無くなっていた。
- Re: 動物氏族、 ( No.2 )
- 日時: 2012/04/19 22:49
- 名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)
第一章 第二話 ライオン族とハイエナ族
ライオンが、自分の背中に乗れとギルに言った。
ライオンは話していると、とても優しい奴だった。自分達がギルの言葉を理解できるわけ、ギルの兄を殺した【喰霊】について。そして、何故兄に呼ばれてきたのかを詳しく。
<お前の兄は俺達の命を救った。その恩を返すだけのこと>
そう言ったライオンがハイエナに<そうだろう?>と問うと、ハイエナはその時を思い出したかのように優しく微笑んで<ああ>と答えた。ギルの知らないところで兄は交流を深めていたのだ。それが誇らしく、けど同時に心のどこかで嫉妬心が生まれた。
「ところで、今から何処に向かうんだい?」
<さっき、ライオンが話したろ。ハイエナは人の話を聞かないは嫌いだ。>
「確かにライオンは話してくれたよ。だけど、具体的にはどの方角に行くんだ?」
<もう一度言うが、ハイエナは人の話を聞かない奴は嫌いだ。お前の兄が南と言ったろう>
「あ、そうだ」
<南にいけば、俺を崇める氏族とハイエナを崇める氏族がいる。>
「って、ことは……神獣なの?」
<あいつらにとってはな>
そんな大切な存在の背中に乗っている。ギルはそのことを思い、少し戸惑ったがライオンが安心しろとでも言うかのように笑った。ギルはそれを見て笑い返して、少し崩れてしまった体勢を元に戻した。ハイエナは前を走り、ギル達のやり取りを無視してだんだんと言ってしまった。それを追いかけるようにライオンは速度を速めた。
「わっ」
体勢を戻したばかりなのに、また、体勢を崩したギルをライオンは笑った。ギルは恥ずかしいのと楽しいのが雑ざって結局はまた笑った。
<そろそろ、着くな。ハイエナ>
<何だよ>
<速度を緩めとけよ。いくら急に止まれるとは言っても俺の背中にはウサギ族の人間がいる。さすがに危ない>
<面倒>
ハイエナはそういいながらも、今度は徐々に速度を緩めていった。
<さぁて、着くぞ。ギル、ライオン族の奴にあったらまずは拳を作り、それを額に当てろ。それがライオン族の挨拶になる。これは他族が的ではないと示すのにも使えるのだ>
「分かった」
ライオン族とハイエナ族は共に住んでいた。理由を聞くと、ライオンとハイエナがよく共に行動するので神獣にあわせようという族長の話し合いの結果だという。ただ、二つの氏族があわさっても人数は30人程度だった。やはり、王の氏族は特別の血筋にしかなれないものなのだ。
ギルはライオン族とハイエナ族の領土へと踏み込んでいった。途端、ウサギの死臭があたりを漂った。嫌いな匂いだ。自分の氏族の神獣が殺された匂いなのだからまあしょうがない。
<すまないな。俺達の主食が主食だ>
「謝らないで」
ギルは鼻を押さえながらもライオンにそう言った。
ライオン族とハイエナ族の人達は、自分達の神獣が帰ってきたのを確認すると、早速ながら五人槍を持った屈強な男がギルを囲んだ。ギルは強く握った拳を額に当てた。すると、五人は槍を下ろして何処かへ消え去っていった。なかなか早い反応にギルは少し恐怖を覚えた。
<挨拶をすれば、手を出さない。>
「そう、有難う」
<では、着いて来い。お前のこれからの仲間を俺の氏族からつける>
ライオンはそう言って、一つの小屋に入っていった。ギルはそれを慌てて追いかけた。
中にいたのは優しそうな顔の男性と厳しそうな顔の男性だった。二人共、年はギルの兄と同い年くらいだろうか。優しそうな顔の男性はギルを乗せてきたライオンではない別のライオンを赤いペンタクルの刻まれた左手で撫でていた。
「初めまして。ギル君」
ライオン族の族長、ルァーニャだった。
そして、厳しそうな顔つきの男性は小屋の壁に寄りかかり目を閉じて腕を組んでいた。ギルの存在に気付くと目を開けて、だんまりと口を開かずにギルを睨みつけていた。彼はハイエナ族の族長、キエル。
王の氏族の族長は統率力や体力が必要な為、比較的若い者が務めるらしい。
「さぁて、ギル君。兄さんのことは残念だったね。だけど、これがこの世界だ。我慢するしかない」
「はい」
「では、兄さんからずっと南にいけと言われ、僕達の神獣に此処まで連れてこられたらしいけど。君には今から一週間此処で少し身体を鍛えて、それから旅に出てもらう。旅には僕もキエルも一緒に行くけどね」
「面倒だ。」
「五月蝿いよ」
「ふん……」
「じゃあ、早速だけど……訓練開始だ」
- Re: 動物氏族、 ( No.3 )
- 日時: 2012/04/10 23:49
- 名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)
第一章 第三話 ウサギの獲物
狩りに行ったり、戦闘時になると性格が変わるというのはよくあることだった。実際、ウサギ族の護衛を果たしているドクヘビ族のリィテも普段は温厚だが、ギルやギルの兄を守る時はとても激しく五月蝿いものだった。
ただ、ギルにとってこれは予想外だった。
「ルァーニャ君、近くで獲物の匂いがします。ギル君に狩らせてあげましょう。まずは実戦をさせ、力を見てみましょう。そこから特訓のメニューを考えます」
柔らかい笑顔にとても丁寧な敬語。
「あの、誰ですか?」
「何を言っているのです、キエルですよ。先程自己紹介をしましたよね?」
「ギル君、記憶力が少し悪いのかな?」
性格が豹変したのはキエルだった。あの、無愛想で荒々しい性格のキエルが優しく微笑み、相手を狩って行くのだ。それはギルにとって怖ろしいことだった。笑顔で穏やかに狩る姿はつまりは余裕と言うものなのであって。ギルには倒すことの出来なそうな獲物まで笑って。
「…………っ」
王の、血筋。
それは伊達や酔狂などではなかったのだ。
自分達の氏族はドクヘビ族を護衛として使っているものの、それはウサギ族がドクヘビ族の族長と他何人かを救っただけのことであって。
「じゃあ、あのヘラジカを狩っておいで。君に与える武器はナイフと槍だ。」
「キエラ、今日はあれを夕食にしよう。上手く狩れたらの話だけどね」
ルァーニャを見ると、二本の犬歯が剥き出しになっていた。そしてキエラもそうだった。食欲がわいてきているのだろう。だが、ギルはウサギ族だ。ヘラジカの肉など食べたことがない。普段はアルファルファの葉やビーツの若葉ぐらいしか食べないのだ。
だが、きっとこれからギルが出る旅は過酷で食糧難に何度も何度も見舞われることとなるだろう。ならば、今のうちにこういうのも食べられられるようにしておかなければならない。それに、狩りの練習も必要だ。
「じゃあ、僕がギル君に狩り方を教えよう。僕の行ったとおりに動いてくれ。まずは相手を見てはいけない。この世界には一目惚れというものが存在する。そんなこと、起こってはいけないよ」
ルァーニャは目を瞑りながら言った。狩らずとも相手に惚れてしまってはいけないのだろう。
「でも、じゃあどうやって?」
ギルは問うた。
「君達には耳がある。聴覚だけで全てを感じなさい」
その問いに答えたのはルァーニャではなくキエラだった。キエラは目こそ閉じていないもののずっとギルだけを見て獲物は見ないようにしてた。
ギルも言われた通りに目を閉じた。すると、五感の一つが封じられ、耳に入る音がより鮮明に聞こえた。
「ここからは君だけのやり方だ。音を使って、自由に狩ってくれればいい」
ルァーニャがトンと背中を押す。
ギルは恐る恐る足を踏み出す。かさりと草木が音を立てる。その音が自分の耳に反響して緊張が増す。
「…………音」
ギルはそう言ってまずは風を聞いた。
風は楽しげに歌を歌っていた。
次に近くの川。川は気持ち良さそうに流れ流れて自らの中に魚を連れていた。そんな中で風が嘆く。自分の唄が遮られる。何か固体に遮られてこの世界全体に届かない。ギルは風の泣く場所に走り出し、もらったナイフでそのナイフを振り上げた。すると、それが何かに当たる。自分に振りかかる温かいモノ。それが血だと知った時に怖ろしくなった。
「怖がらないで。唱えるんだ」
「唱える?」
「悔いの唄です。彼の死を決して無駄にするわけではないですが、彼にはきっと悔いが残っているはずですから」
「分かりました」
初めての狩り。獲物の最期に唱えた唄はまだ歌詞も曖昧な唄だった。
- Re: 動物氏族、 ( No.4 )
- 日時: 2012/04/27 23:17
- 名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)
第一章 第四話 旅立ちの意味を知る
ギルとルァーニャ、そしてキエルは大きなヘラジカを担ぎ、自分達の領土に戻った。すると毛繕いをしているハイエナが入り口に塞がっていた。
「…………ただいま。我が神」
キエルが元の性格でハイエナに抱きつく。とても控えめで一見見ればとても厚い友情のように見えるがあくまでもこれは信仰の一種なのであって友情などと言った軽いものではない。
<…………腹が減った>
ハイエナが一つ、鳴いてそう表す。キエルは急いでヘラジカの一部を切り取り片方の膝を突いて、切り離してヘラジカを捧げる。ハイエナはそれを口で銜え何処かへ消えていった。そして、ハイエナと入れ替わったかのように優雅に歩いてきたのはライオンであった。その鬣は勇ましい彼を表すかのようだ。
今度はルァーニャがライオンに尊敬の意を込めて抱きしめた。ライオンは表情を一つも変えることはなく、それに暫く身を預けた。
<ハイエナが、森へ入っていった。すぐ戻ってくるだろう>
ルァーニャが身体を離すとライオンはそう言って、またきびすを返して何処かへ行こうとしたがそれをルァーニャが引き止める。それに対してまた堂々とした態度で<なんだ?>と問うた。
「夕飯だよ。久しぶりに一緒に食べよう。ハイエナは一緒には食べてくれないだろうから」
<ふむ、久々に同じ空間でと言うのも悪いものではないだろうな。いいぞ、準備をしてくれ>
いつも思うのだが、案外ライオンは優しい。ギルが仲間から聞いた話によればハイエナやライオンとかいう獣はまずは自らを優先し、自らの力に自惚れた最低な獣だと聞いた。まぁ、ハイエナは自らを優先するが、自分の力に自惚れてなど決して居なかった。ハイエナが自らを優先するのは自らが死んでしまってはこの世の大切なモノを見れなくなるからであり、決して自らをこの世に留めて世界を支配しようという糞のような考えではなかった。そして、ライオンは他をまずは優先した。確かにメスに命令を下したりなどはするが、彼の場合はそれは彼女達への愛情であった。メスは逞しくなくてはいけない。子を守るために強くならなくてはならない。だから、メスに狩りを体験させてその力を強めた。少なくともギルはそう信じている。あの二つの神獣が悪い獣だとは到底思えなかった。
夕餉の準備は氏族全員でテキパキと行われ、すぐに食べられる状態となった。その間にライオンは優雅に毛繕いをしていた。何処か自由と言う言葉を連想させるそれは美しいものであり、少し見惚れてしまった。
「ライオン、まずは君から自然の神々へと捧げてくれ。僕たちでは自然の神は遠すぎる。ならば一番近い存在の君が……」
<分かった。『この森の所有者、大自然の神アトロポリスよ。我々に自然の恵みを捧げてくださり感謝する。そんな貴方に感謝の意を込めて貴方の一部を与える』>
大自然の神アトロポリス。この世界で最大の神の一人である。命の宝庫とも言えるこの世界の自然を司る神であり、我々の全て。我々は自然がなければいけていけないし、自然がなければ崇めるものも何もない。アトロポリスには、最大の尊敬を。ギルはライオンが大自然の一部、つまりはヘラジカの一部を捧げる方向へと手を合わせた。ライオン族とハイエナ族も同様のことをする。この儀式は万国共通である。ウサギ族も、ライオン族も、ハイエナ族も、ドクヘビ族も、イヌ族もネコ族もクロワシ族もクジラ族も何処も全部。
儀式が、終わる。
「さぁさぁ、宴としよう。僕とライオンとその他諸々の旅立ちを祝って」
「えっ?」
「まだ行きはしないけれどね」
「吃驚した。」
「早とちりだ」
そう言ってルァーニャは笑う。他のライオン族やハイエナ族の者もけらけらと笑った。その光景が何処かウサギ族での生活を思い出し、寂しく感じてしまう。そういえば、父さんと母さんには挨拶をしなかったけどいいのだろうか。ギルの中にそんな不安が過ぎる。それを察したのか口を開いたのはキエルであった。
「…………もう、伝えた。我が神が言った、らしい」
「有難う」
「…………我が神に言え」
「今はいないからキエルさんに」
ギルはそう言って、今度はルァーニャに向き直った。それに気付いたのか気付いていないのか、表情は相も変わらずの笑顔でいた。
「教えてください」
そんな彼にギルは唐突にそんな事を言った。
「答えられることならね」
「【悪霊の聖所】に秘められた力は。」
「君の兄さんを見れば分かっただろう」
「其処を祓って何があるのですか」
「被害の拡大を防げる」
ギルの質問に次々と迷うことなく答えていく。
その会話を耳を立てて聞く氏族達は何のことかと頭に疑問符を乗せていたが次第に内容を理解し、真剣顔になる。
「まあ、気にせずいってくれ。旅はもうすぐなのだから」
最後ににこりと笑った彼は優美であった。
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