ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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錯覚
日時: 2012/02/09 08:46
名前: 千志 (ID: AA/Lga8C)

人の少ない平日昼間のカフェ。



「でね、やっぱり浮気してたんだよぉ。どうしよぅ〜・・・」



背の低い1人掛けのソファーに座る私の対面には

同じ型のソファーに座り、デカい声で自分が浮気された事を話す彩奈。

彩奈の無理に作った高い声を聞いていると私の喉は釣られてギュっと締め付けられる。

どうしよぅ〜って聞かれてもねぇ。

と、考えてる振りをしながら彩奈の後ろに掛かっている時計を覗くとかれこれ3時間もこうして話している。

人の恋愛話ほど退屈な話はない。

当人だから面白い話だったり、ムカつく話になるのだろうが、

周りからしてみれば、大した話ではない。

大半が、へぇそうなんだ。大変だね。で終わる話。

そんな話を3時間に渡り聞かされているこっちの身にもなって欲しい。

既に冷めてしまったココアに口を付けて、はぁ。と小さくため息を吐きながら目線を上げると、

足を組み返す度に見たくもない彼女の黒い下着が見え隠れする。

大きなため息が出た。





恋愛なんてものは、ゲームと同じだ。

当然、目的はクリアする事なのだけれど、プレイしている時間が楽しいのであって

クリアしてしまえば、他のゲームに目が行く。

恋愛だってそうだ。

付き合えるまでの駆け引きやドキドキ感は楽しいが、付き合ってしまえば

他の女や男を攻略したくなる。

それを浮気だなんだと言うんだろうが、じゃあ、君たちは違うのかと聞きたい。

今の彼氏や彼女と、付き合う前と今とではどっちが楽しいのかと。

所詮人間だって動物なのだから、本能のままに生きたっていいじゃない。

と、私は思う。

浮気だなんだと喚き散らしている奴に限って、自分自身が浮気をしているものだ。


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錯覚 ( No.1 )
日時: 2012/02/09 08:48
名前: 千志 (ID: AA/Lga8C)

彼氏なんてゲームのヒロイン役でしかない。

主人公は当然自分自身で、ヒロインをゲットできれば終わり。

しゅうりょう!

そんなゲームレベルの男の為に睡眠時間を減らし、

趣味に費やす時間も減らし、結局一緒にいる時間が息苦しくなって、安らぎを求めるようになる。

だから彼女や彼氏以外の異性に目も向くし、居心地が良ければそちらに行くこともあるだろう。

それが何故悪いことの様に言われるのか私には理解できない。

付き合った時点で結婚も視野に入れている若者の話を聞くと哀れに思う。

所詮、彼氏彼女もゲームに登場する人物となんら変わりない。

産声を上げた時点でゲームスタート。

死ねばゲームオーバー。

6,70年続くリアルなロールプレイングゲーム。

そんな長いゲームなら、今、彼女の悩みの種である彼氏という存在は

もしかしたら村人Aレベルの人間なのかもしれないのに、

そこまで執着し、悩むのもいかがなものか。と思う。

一般的に世間に受け入れられるとは思ってはいないし、

むしろ、頭がどうかしているのでは?と思われる可能性も否めない。

けれど、私の考えはおそらく間違っているのだろうが、間違ってもいないだろう。





時計に向けていた目線を彩奈に戻し、


「まだ若いんだし、男一人に執着しなくいでまだ遊んでもいいじゃん」



結局、当たり障りない事を言ってこの場を切りあげてさっさと帰ろうとすると、

彩奈はそれじゃ納得いかない表情をした。



「だって、それじゃ彩と別れた後、あっくんはその女と付き合っちゃうじゃん」
「別れても、彩の事は好きでいてほしい。別れたことを後悔させたいの。」
「大体、浮気する人間てどんな思考回路してるのか理解できない。」
「猿と一緒じゃん。」



納得がいかない返事だったらしく、今まで以上に口数が増えた。

自分と別れたとしても、他の女と付き合うのは嫌。

で、おそらく私が新しい男と付き合うのはOKなんだろう。

どんなルールだよ。と笑ってしまった。





「浮気なんてよくあることでしょ。」
「あたしも他にいい男がいれば浮気も二股もするわ」




言ってからしまった!と後悔した。

浮気した男を援護するような発言は、女をヒートアップさせる。





結果、私が解放されたのはそれから2時間後だった。

錯覚 ( No.2 )
日時: 2012/02/13 08:57
名前: 千志 (ID: AA/Lga8C)

正直、彩奈が浮気をされたからどうのこうの。

という話を聞いていると胸が痛かった。

勿論、哀れんでいたわけでは無い。

少し前までの私と少し被って見えたのだ。



恋愛はゲームだといっておきながら、こんなことを言うと

矛盾している事になるが、そんなくだらない恋愛ゲームに

睡眠時間を奪われ、自由すら無く、依存していたのは

私も同じだった。








唯一、彩奈と違う所は、彼が私の人生に大きな影響を及ぼしている事。

それは、これからも続くだろう。

私の生活を乱し、奪い、破壊し、私の人格さえも変えてしまった、

私の生きる意味になってしまった彼に比べれば、

あっくんの浮気なんて、無駄な買い物をしてしまったレベルの問題だ。



口では、


「所詮ゲームなんだから。」

「そんなに騒ぐほどの問題じゃないよ。」


とは言ったものの、実際に私が彩奈の立場に置かれたとき。

私は彩奈以上に嫉妬に狂い、世界が崩壊してしまうのではと感じるほどに

取り乱すだろう。

もしかすると、その女を殺して、今頃は

刑務所暮らしだったかもしれない。



仮に、彼女も私と同じ位彼が必要な存だとしよう。

だとしたら、今彼女はこうして私の前にはいない。

何故ならこうして私に愚痴を零している今、この時間にも

浮気しているのではないかと疑うからだ。

もう、気が気じゃなくて、友達と会っておしゃべりなんてしている余裕は無くなるのだ。

彼の価値観が私と同じならば、の話だけれど。





当の本人からしてみれば一大事なのだろうが、他人のおままごとには興味は無い。


結局は、彩奈が浮気を許して、今までと同じようにままごとを繰り返すのは

目にみえているからだ。



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