ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ウォッチャー 登場人物&用語up
日時: 2012/02/29 23:39
名前: 憂鬱の物語綴 (ID: HhjtY6GF)

      作者:憂鬱の物語綴
      読み:ゆううつのすとーりーてらー

 
☆この度はクリックしていただき、誠に有難う御座います。嬉しさで目から水が・・・・・・。

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Re: ウォッチャー ( No.2 )
日時: 2012/03/03 00:12
名前: 憂鬱の物語綴 (ID: HhjtY6GF)

[ Episode‐0 ]


 「おいおい・・・指定場所に来るときから、フル装備かよ。」


今宵の東京、月明かりも曇天に隠れ、薄暗い東京の夜街に虚しく雨音が響き渡る。

ビルとビルの間の暗い路地裏、スーツに咥えタバコ、無償ヒゲを生やした男性が傘を差して、誰かに言う。

男性の目の前には、━殺し屋━がいた。


 漆黒のトレンチコートに黒の革手袋、そしてレトロ感漂うオールドタイプのサングラスをかけた若い青年。


「あんたの噂は聞いている。結構、こっちの世界じゃ名の知れたウォッチャーなんだろ?」

「必要のない会話には受け答えしない。」

「ふふっ・・・噂通り、真面目くんだな。まぁいい。依頼は、ある子供の殺害だ。」

「・・・・・・時間、場所、その他必要なことがあれば言ってくれ。」

殺し屋が男性に尋ねると、彼はスーツの内ポケットから一枚の紙切れを取り出す。

「場所は世田谷区の○×丁目の茶色の屋根の家。行けば分かるとさ。時間は夜が明けるまで。
 殺害後に、証拠として写メを撮って、更にその子供の血液を採ってこい。
  真面目くんにはないとは思うが・・・


          ‘馬鹿な真似’


  は止めてくれよ。俺はこれでも、君に期待している方なんだからさ。まじめくん♪」

男性はタバコを地面に捨て、雨で濡れたアスファルトの上で踏み消す。

立ち去ろうとする男性は、何かを思い出したのか、殺し屋の方を振り返る。

「そう言えば、真面目くんの名前は?」

「名前は名乗らない。」

「まぁ、君とは長い付き合いになりそうだし、いいじゃないか。私はマルコ。さぁ、次は君の番だ。」

マルコは不気味に微笑み、殺し屋に尋ねる。

「・・・・・・ハイジ。ハイジと呼んでくれ。」

「勿論、それは殺し屋である時の名前だろ?」

「そうだ。本名は言えない。」

「それはお互い様だ。では、任務の成功を祈る。任務が失敗しようが成功しようが、またここで会おう。」



マルコはそう言うと、路地から歩き去った。




いつの間にか、雨は止んでいた。


Re: ウォッチャー  ( No.3 )
日時: 2012/02/29 17:35
名前: 憂鬱の物語綴 (ID: HhjtY6GF)



現在の時刻 午前3時21分33秒


濡れたアスファルトの上、ハイジはマルコに依頼された住所の近くまで来ていた。

目的地に来るまでに、一般人に目撃されることはなかった。時間が時間だけに。

「・・・ここか。」

世田谷区住宅街。赤、青、緑の屋根の家が密集する中、ターゲットの住む家の屋根の色だけが茶色だった。

それに、周囲のレンガ造りの建物と比べると、この家だけは木造で異様なレトロ感が漂っている。

ハイジは家を囲む木質の壁を音を立てずに静かに登る。


   電気は点いていない。


  1階も2階もカーテンは閉まっている。


    庭には、子供用のゴムプールに滑り台がある。


しかし、何かがおかしい。



      「人の気配が、まったくしない・・・・・・」



ハイジは呟くと、トレンチコートの下から腰に装着していた“刃のない黒色の鞘を取り出す。

鞘には小さな群青色のボタンがあり、ハイジが親指でボタンを押すと、鞘の一方から刃が飛び出した。

これは、ハイジの相棒とも言える、殺し屋には必要不可欠な物。

ウォッチャーの間では、自身が持つ武器のことを“暗器あんき”と言う。

ハイジは音を立てない見事な抜き足で家に近づき、カーテンの間から中を除く。

中は暗く、雨のやんだばかりの空からは、未だに頼みの月明かりが差さない。


「侵入するか。」


ハイジは家の裏に周り、裏口を見つけた。

そこで、不自然な光景を目にする。



        「・・・・・・開いている?」



裏口は半開きの状態で、更に靴の跡があった。

ハイジは裏口の前に付いた靴の跡に顔を近づけ、指で触る。

「新しい、まだ濡れている。」

ということは、家主は雨が降っている間に自宅へ戻ったということ。

ハイジは半開きの裏口から、家の中を見る。

裏口のすぐそこはキッチンであるが、それよりもハイジの目に入ったのは、乱暴に脱ぎ捨てられたスニーカー。





   「うっ・・・・・・えぐっ・・・・・・・・・・・・ママぁ・・・」






確かに、ハイジの耳に聞こえた。

若い女性の、泣き声が。

「ターゲットは・・・女か・・・・・・」

ハイジは悲しげに呟き、刀を見る。

女を殺したことは、あまりない。だから、殺すときについ同情してしまう。

大抵依頼主が女性を殺すようにいうときは、


  「浮気をした。」

              「あの女が、浮気をしていた。」


    「ほかの男とイチャついていた。俺が、汗水流して家庭支えているのに。」


気持ちは分からないでもない。

でも、それで愛する者の命を奪っていいものだろうか。

殺し屋でも、時には殺すことに不満、謎、疑問を感じる。


  「仕事だ。これは仕事だ、殺し屋の基本だ。目標に同情するな。」


ハイジは自身に言い聞かせ、静かに家の中へと侵入した。

刀を構え、音を立てずに、忍者のように体勢を低くして、女性の声がする方へと進む。

キッチンを通り抜け、すぐ隣にあるリビングに入った。

リビングには家にソファーとガラス張りの大きなテーブル、それだけだった。

まるで、引越しの後のようにガランとしていた。

「・・・ぐっ・・・・・・うぇぇ・・・・・・うぐっ・・・」

ソファーには、女性が体操座りで膝のあいだに顔を埋めて泣いていた。

ハイジはわざと、咳をした。



       「コホン・・・」




       「え・・・・・・!!!!!」




女性はハイジを見ると、一瞬驚いた表情を見せたが、一瞬で悲しげな表情に戻った。


「・・・・・・あなた、殺し屋さんでしょ?」


「・・・・・・・・・」

「別に、好きにすれば。ママみたいに、首をスパって斬って、殺して。」


女性は立ち上がり、ハイジの前に立つ。

女性はハイジよりも身長が低く、そのため暗闇のせいでハイジの顔が見えていない。

「・・・殺してよ。早く殺してよ。もう嫌よ、仕事もどうでもいい。アイドルなんて、私には無理だった。
  夢を実現させて、どうして絶望感を感じないといけないの?

   私を支えてくれたママもパパも、もういない。

  誰も、私の努力を、頑張りを褒めてくれる人はいない。

   あんたみたいな殺し屋のせいで、私の人生は台無しよ!!!              殺せばいいでしょ!!!!」




 
    「悪魔!! 鬼!! お前なんか人じゃない!!!!」






女性はハイジに罵声を浴びせ、再び泣く。しかし、次は声を殺して、静かに泣いていた。

ハイジは刀を握り直し、一度目を閉じる。

前にもあった。相手は男性だったが、気持ちは彼女同様で、殺し屋を批判して、泣いていた。俺は彼を斬った。


    俺はあの時、何かを感じた。仕事の優越感でも、達成感でもない。別の何かを。


ハイジは腕時計を見て、鞘のボタンを押して刃を鞘の中に直す。

「・・・・・・殺し屋の禁忌に、この俺が足を踏み入れるとはな・・・」

ハイジは微笑みながら言うと、未だに泣いている女性を見た。



 「お前の母を殺した殺し屋に、復讐がしたいか?」



     「え?」 



女性が唖然とした表情でハイジを見る。

それよりも、自分の口から出た言葉にハイジ自身が驚いていた。


「俺は、ある男にお前の殺害依頼を受けた。その男を見れば、何かわかるかもしれない。」


「ちょ、ちょっと待ってよ・・・・・・何を言ってるの・・・・・・早く殺して、私もママの元に・・・・・・・・・」







    「俺は、君を殺さない。君は世界に必要な、存在だから。」
















   俺は、“ウォッチャー”として、この答えを出した。










Re: ウォッチャー  ( No.5 )
日時: 2012/03/01 22:16
名前: 憂鬱の物語綴 (ID: HhjtY6GF)

【 用語ファイルNo.1 — “ウォッチャー” 】
殺し屋の別称。現時点で世界に数百人以上存在している。一般的な殺し屋とは仕事内容が異なり、世界を監視して不必要な人間を自身の意思で殺害してよい。また殺し屋の中にも規則(法)があり、下記の通り。
〜殺し屋五原則〜
 1.ウォッチャーは、世界の監視と世界平和のための仕事をしなければならい。
 2.ウォッチャーは、クライアント(依頼人)の要望を忠実且つ完璧に遂行しなければならない。
 3.ウォッチャーは、ターゲット(殺害対象者)に同情してはならない。
 4.ウォッチャーは、個人のロジック(論理)で仕事をしてもよい。
 5.ウォッチャーは、規則(法)を破ってはならない。破った場合、同等の処分が下される。
ウォッチャーを統率する巨大な組織が存在するが、現時点では不明。なお、それを知る殺し屋は外部に流失することを固く禁じられており、万が一流失行為或いは類似行為を起こした場合は、処分が下される。

Re: ウォッチャー  ( No.6 )
日時: 2012/03/02 00:28
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: R33V/.C.)

憂鬱の物語綴様初めまして、風猫と申します。
設定が面白くて人間の性が前面に出ているのが良いですね^^
頑張って下さい!


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