ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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秘密組織DD
日時: 2012/03/04 08:37
名前: スタックフィード (ID: 8O0i4EQ7)

1、

 「美少女独占断固反対。皆で分け合うべきである」
 我らDOUTEIDOUMEI——通称DDはこのスローガンを掲げ、日々リア充共と闘って来た。
 嗚呼、リア充のなんと傲慢な事か! 許しておけぬ。恨み果たさず措くべきか。あんな屑共は抹消してやった方が世の為人の為である。
 我らDDとリア充同盟——通称エデン (もはや通称ではないが) は永久問題である童貞と非童貞の不平等について検討した。非童貞グループ——エデンは、彼女が出来ないならば、自分を慰める惨めな道具を使えと発言した。会合後の発言者の行方は誰も知らない。
 DDの愛すべきメンバーは、我々はお前らの様に、盛った獣の様に性行為に及びたいのではない。異性と触れ合いたいのだ、と発言した。我々の純粋な想いの一つである。それを彼らは嘲笑った。DD総司令官の怒りが臨界点に達し、エデンのボスを殴り飛ばした所で会合は終わった。エデンの憎むべきメンバーはそのまますごすごと帰って行ったが、彼らは卑怯かつ陰湿であるので、グループ学習の時など偶数であるのに我々を省く、陰口を叩く事に専念していたようだ。毛程も救えない連中である。女達はこんな屑共相手に股を濡らし、腰を振るのか。絶望した。私達は社会の理不尽さに打ちのめされそうになっていた。それに追い討ちを掛ける様に、DDメンバー間で裏切り者が発生した。メンバーの一人——名前を (この小説に登場人物の名前はあまり重要ではないので) 仮にAとする。Aは放課後我々と有意義な時間を過ごした後、一旦家に戻り、まるでエデンのメンバーの様な、妙にちゃらちゃらした服を着てなんと、なんとエデンのメンバーの一人——仮にBとするが、Bの彼女、Cと逢引を行っていたという情報がDD本部の耳に入った。それを聞いた時我々は我が耳を疑った。馬鹿な。あれ程DDに貢献してきたAが謀反したというのか。そんな馬鹿な。
 だが、それは真実だった。以前から彼女の浮気を疑っていたBがその現場を押さえたのである。BはAとCを半殺しにした。たとえ憎きエデンのメンバーの彼女といえど女性であるCまでもBは半殺しにしたのである。何という男女平等であろうか。女性のヒステリックな利己的な言い分に耳を貸さず我を通したのだ。我々は感動し、敬服し、BをDDに勧誘した。Bはへたれのエデンから前々から若干浮いており、今回の事件がそれを決定的にしたという事で、渋々BはDDに加盟した。我々は愛すべき同胞を得たのである。だが新参者となるとAの様に、女性と良い感じになるとDD血の鉄則を軽々と破る可能性が高いと我々は考えた。なので我々は毎日毎日DD血の鉄則を何度も何度も自然に言って聞かせた。何度も言っていれば一〜二条ぐらいは頭に刷り込まれると考えたのである。これは一種の洗脳実験と考える事も出来なくもないが、優秀なソルジャーを手に入れる為には我々は手段を選ばない。ただ端的に、無感情に、与えられたタスクをこなし、絶対服従のコンピューターの様な人材を我々は必要としていた。だが、その考えこそがDDメンバー間に結ばれた鉄の絆に致命傷を与えた。
 DDが二つのグループに分裂してしまったのだ。たとえ憎きリア充共であろうと同じ共通の人類の仲間だと主張する穏健派と、リア充は生きる価値の無い、ゴキブリ以下の存在だ。出会ったら即射殺しろと教え聞かせる過激派である。穏健派はエデンのボスは殴られた時点で、過激派との真っ向対立を心に決めていたという。なんという事か。これではDDの穏健派とエデンが繋がる可能性がある。そうなれば過激派達は影を潜め、ただ暗い学校生活を送るばかりになってしまう。学校は社会の縮図といわれる通り、真っ当で筋が通った意見など通用する事は少ない。結局は立場が強いか、弱いか。多数派か少数派かで決定してしまうのだ。結局DDなどは苛められたくないから、結束力が欲しかったから、どんな理由であろうと、友達が欲しかったから——そんな下らない理由で放課後はただ集まり、リア充を憎み罵っていた。ただ、それだけだったのかもしれない。
 新参者のBは、我々の洗脳実験が功を成したのか、元々素質があったのかは未だ不明だが、優秀なDDソルジャーとなった。錯覚だろうか、Bの目が、紅く染まっている気さえする。
 DDソルジャーは与えられたタスクをただこなすだけでなく、状況を理解し、組織に利潤を与える為に自発的に動く。

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Re: 秘密組織DD ( No.1 )
日時: 2012/03/04 08:38
名前: スタックフィード (ID: 8O0i4EQ7)

2、

 私はBの狂行など知らずに、今後の行く末に絶望しながら汚い四畳半で茫然自失していた。
 本棚に十冊ほど刺さっている文庫本を読もうと、本を一冊取り出しページを開く。だが、まだ新人なのだが妙に小難しい文章を使っているため物語に入り込めず、気力を失くしている私には飲み込み辛い。
 無造作にベッドに文庫本を投げる。ネットサーフィンでもするか、と立ち上がった。パソコンを起動させた所で、携帯が鳴った。
 着信相手は、Bだった。悪い予感しかしない。しつこく鳴るので渋々電話に出る。
 「はい。こちら軍曹」
 「あ、軍曹! やりました!」
 「は? やった? 何が?」
 Bはわざと焦らし、私の期待を大きくしようとしているのではないか、と思った。
 「エデンの連中を一人仕留めました!」
 「ええ?」
 いきなりだが、 (これは後の物語に大きく関わっていくことなので) DD血の鉄則について無知な読者のために、懇切丁寧に説明しよう。
 DD血の鉄則とはつまり、DD内部の反乱者を無力化し、エデンイコール悪という偏見を頭にインプットする為に作られている。簡単に言うと日本がアメリカに逆らえないように作った日本国憲法のようなものだと思って頂ければまず問題はない。
 Bのいう、エデンの連中を仕留めたとは、DD血の鉄則の一条を抜粋すると、

 『エデンを殺すという行為は、メンバーを殺害する意味を示すのではなく、メンバーの彼女を横取りする行為を示す』

 聡明な読者の方々は疑問に思っただろうから説明するが、裏切り者——Aの行った、Bの彼女——Cを横取りする行為はDD血の鉄則に反するのである。
 AはBの彼女のCを横取りする所までは良いが、それを我が物にして味を占めるのでは、紛いもない違反である。
(続く)


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