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トワイライト
日時: 2012/03/10 18:59
名前: 志鳥 ◆aSDvnUmzos (ID: wIulFSp9)


それはただの噂などではない、と男は言った。やけにしんとした部屋のなかに響き渡るその言葉は、いやでも焦燥感を煽るものだ。背骨にそってつめたい汗がすべり落ち、じわりと染みだすような寒さを植え付けた。男は続けてつぶやいた。あるいはそれは宣告のようなものでもあったかもしれない。「それは自我を持っている」どこにも行きつかずただ人々に忘れられ廃れ錆びついて、ひとりでその様子を震えながら眺めているのだ、と。いずれは記憶のなかからすっかり消え去ってしまう、ちっぽけな存在だ。結局のところ噂とはそんなものであり、一時世間を騒がしたとしてもあっという間に皆の記憶からは抜け落ち抹消される。そんな噂は自我を持った。自我を持つことで、忘れられることに対しての恐怖が芽生えた。消えたくない。だれだって人の記憶から消えてしまうというのは恐ろしいことだ。だから自我を持った噂は、自分が決して忘れられぬように、いつまでも人々の記憶に根付いておくように、「行動を起こす」。その行動の予想は簡単につくだろう?、そう連ねて男は笑った。それはひどく冷やかな笑いだった。またひとつ、背筋をつめたいしずくが伝い落ちていく。


そのいち
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