ダーク・ファンタジー小説

Re: 吸血鬼と暁月 ( No.2 )
日時: 2012/01/10 15:32
名前: 枝垂桜 (ID: so77plvG)


 朱音は身支度を済ませると、住職の神社の仕事を始めた。
 仕事、と言っても、掃除をしてお守りをつくり、それを会に来る人をも待ったりすることが仕事だ。
 しかし、今日は沙雨が半兵衛を連れてくると言っていた。
 だから、更に掃除に力を入れなければ、と思っていた。

 そして、お守りを作り終わって、青空を見上げてゆっくりしていたころだった。

「朱音さん」
「・・・あ、静香様」
「ご無沙汰しております」
「いえ、お久しゅうございます」

 神社の常連、ある公家の使用人、静香。

 最近二週間ほど訪れなかったので、朱音は驚いていた。


「今日は蓮拍珀レンパクハク様のお守りを、頂きに参りましてございます」

「お体・・・、まだ悪いんですか?」

「はい・・・。一時期よくなったのですが、また・・・。薬師殿が言うには・・・・。・・・・覚悟を決めておけと、言われましてございます」

「そうですか・・・」

「しかし、下女の私を雇い、格を上げてくださった方・・・・。最期まで・・・・。諦めはしとうありません」

「静香様の言うとおりだと思います」

 静香のきれいな言葉遣いは、元々だった。
 下女(奴隷)の身分になる前は、自身も公家の娘だったという。
 今もまだ、その言葉使いは取れないのであろう。
 
「どうぞ」

「ありがとうございます」

 静香にお守りを渡し、お金を貰った。

「あ、ちょっと待っていてください」

 朱音は思い出して、神社の中へ入っていった。

「これを」

 静香に渡したのは少しの米であった。

「これは?」

「沙雨が龍興様から頂いてきた極一部です。昨晩お供えしたものです。きっとご利益がありましょう」

「・・・・・・ありがとう存じます」

「いえ。お大事に」

 静香は頭を下げて、神社を出て行った。