ダーク・ファンタジー小説

Re: 吸血鬼と暁月【楽園の華 オリキャラ募集中】 ( No.118 )
日時: 2012/12/31 13:43
名前: 枝垂桜 (ID: a4Z8mItP)





───とにかく不思議な空間が広がっていた。


 鍵を差し込み、回して、扉を開けると、そこにあったのはなんと壁だった。

 驚きながら、首を傾げていると、



『腕を壁に差しこんで御覧なさい? きっと通れるわ』とイヴが言った。



 半信半疑の思いで、言われたとおりにしてみると、壁は朱璃の腕を飲み込んだのだ。

 すごい、と息を飲んで、続いて体を壁に運ぶ。やはり壁は体も飲み込んだ。

 沙雨はここまでしないといけない状態だったのだ。扉の向こうに、易々と自分の部屋も置いておけなかったらしい。そんな環境が自分の周りにあるなんて、考えられないのだが。


『変な感じね』


 イヴが呟く。


 窓が一つしか無い挙句、その窓はかなり高い位置にあった。


 今でこそ太陽の光に当たりながら生活しているものの、昔は太陽の光が余り得意ではなかったらしい。



「昔は……今より吸血鬼らしかったのかな……」

『そうね。今は、すごい人間らしいものね。でもそれはきっと』

「僕ため、だよね」

『そうね』


 沙雨は、自分のためにずっと無理をしていたのかもしれない。


 慣れない太陽の光にどれほど苦しんだのだろうか。




『貴方のその痣……。この薔薇にそっくりね』


 そう言ってイヴが指さしたのは、棚の上にある黒薔薇だった。