ダーク・ファンタジー小説

Re: 吸血鬼と暁月【100越え感謝】【オリキャラ募集中!】 ( No.20 )
日時: 2012/07/23 12:38
名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)


 第4章 悪魔、死神───襲来


「ん……」


 不意に眠気がなくなって、朱音は目を開けた。

 やはり昨日のことは幻でも、夢でもなく、現実で。そこには洋室が広がっていた。


「………?」


 朱音はベットが微かに何かの重みで傾いていることに気が付いた。

 視線をベットに向けると、そこにはスノーブルーの髪を持った少女が、気持ち良さそうに眠っていた。


「誰………?」


 至極可愛い顔をしている。幼くも認識できるが、年は余り変わらないようにも思える。なんというか、不思議な女の子だ。

 余りに綺麗だった髪を見て、思わず手を伸ばし、手で髪を梳く。

 さら、と流れるような感触がして、心地よかった。


「───ん……? だあれ?」


「ぁ………っ」


 まずい。起こしてしまったようだ。

 髪がさらり、と持ちあがって、少女は両目を手で擦り、意識を無理矢理覚醒させようとしていた。

 こするのをやめても、しばらくは焦点が合わなく、このまま、また眠ってしまうのでないかと思いもしたが、それはなく、数分後には髪と同じ色をした瞳が、しっかりと朱音をとらえた。


 少女はわなわなと震えだし、朱音は驚く。

 次の瞬間、少女は朱音に飛びつくようにして、抱きしめた。


「朱音ー! 久しぶり! 元気だった!? 何十年ぶりだろ! 寂しかったよー!」


「───!?」


 突然の出来事に驚いて、声も出ない朱音。その様子を見て、少女は何か思い出したかのように、ぼそりと呟いた。


「………あ、そっか。記憶、ないんだった………」


 寂しげにつぶやいたその言葉は、小さすぎて、朱音にまで届かなかった。


 しかし、またにこり、と無邪気な笑顔を見せると、


「私は如月 時雨。こう見えても、西洋の魔女なんだっ」


「まじょ、ですか? それは何ですか?」


「魔女って言うのは、魔法っていう不思議な力をつかう人のことだよっ」


 本来の魔女は、ヨーロッパの魔法使いと言われる。

 その起源は、まだキリスト教が存在しなかった紀元前から存在した、古代宗教の巫女の末裔と言われている。

 しかし、15世紀(1,400年代)に行われた魔女狩りによって、その数は激減したという。

 〝悪魔の手先〟だと信じられてきていた。


 時その魔女狩りから逃れた母が、日本にやってきて、ある人間ではない男と恋に落ちた。


 時雨はその夫婦の〝愛の結晶〟だった。


 男は雪山に住む、美しい雪男だった。

 他とは違う、毛むくじゃらの怪物ではなく、人間に似た、美しい青年の姿をしていた。


 よって時雨は、母から魔女の血を授かり、父の力から雪の加護を授かった。


 しかし、なんらかの事情で、時雨は朱音と沙雨以外の人に、自分が雪女ということを隠していたが、朱音の記憶がなくなっている今、時雨が雪女ということを知っているは沙雨のみになる。


 なんだか、胸にぽっかりと穴があいてしまったようだ。



「不思議な力……ですか。 すごいですね」


「まだまだ見習いだけどね」


「あの、なぜ私の名前をご存じだったのですか?」


 朱音が痛いところを付いてきた。


 先日、朱音の記憶が戻っていないことを知った沙雨に、くれぐれも朱音の記憶を無理矢理戻すようなまねや、言動はしないこと、と釘を刺されていた。


「今は内緒。もっと仲良くなったら教えてあげるね」


「は、はあ……」


「ねえ、だからお願い。ずっと一緒にいて?」


「私でよければ、傍に居させてください」


「本当っ? ありがと、朱音っ。大好き!」


「時雨さん……」



 再び抱きついてくる時雨の名前を呼ぶ。


『時雨さん』


 その呼び方は、ほんの少しだけ、時雨の心に切り傷を負わせたのだった。



─────────────────────────



清水 様、akari 様、オリキャラ応募、ありがとうございます。



さっそくですが、「第4章 悪魔、死神───襲来」に使わせていただくので、よろしくお願いします。