ダーク・ファンタジー小説

Re: 吸血鬼と暁月【200越え感謝!!】【オリキャラ募集中!】 ( No.26 )
日時: 2012/07/27 21:44
名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)




おずおずと朱音は、右手を差し出した沙雨の元まで歩いて行く。


 ほぼ毎日見ていた沙雨の顔が酷く久しぶりに見えて、緊張した。

 先日、沙雨を拒絶したため気まずいが、その右手にすっ、と自分の手を差し出した。沙雨はその様子を見て微笑み、朱音の手を包み込む。


 その仕草に不覚にもどきりとした。



「マーチ、時雨をよろしく。 行くよ、朱音」


「御意。時雨さん、こちらに」


「あ、うん。じゃ、後でね朱音」


「はい」



 沙雨は朱音の手をそっと引いて誘導する。


 沙雨の格好は黒いお洒落な燕尾服を着ていた。そして綺麗な仮面で、目だけを隠していた。それだけで、誰だか分からないものだから不思議だ。

 マーチは夜会は行けば分かる、と言っていた。確かにその通りだった。


 きっと『人間ではない者たち』が集まる宴──パーティーなのだろう。



「今からこの夜会の主催者、幽霊界の王、ファウスト王に会わせるから、失礼のないよ────」


 そう告げながら沙雨の動きがぴたりと止まる。驚いた表情をしてある一店を凝視している。


 不思議に思った朱音もその目線の先を見た。



 するとそこには────……



「半兵衛、殿……?」


 なぜこんなところに?


 半兵衛も燕尾服を身をまとい、一人の女性と歩いている。


 片目だけの仮面だったので、それが半兵衛だとかろうじて分かった。


 ふと、半兵衛ねこちらに視線を向ける。その視線は、今まで朱音には向けたこともないような、冷たい氷の視線だった。