ダーク・ファンタジー小説
- Re: 吸血鬼と暁月【200越え感謝!!】【オリキャラ募集中!】 ( No.28 )
- 日時: 2012/07/31 21:35
- 名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)
天孤は不安であった。
沙雨を認め、出来るならばいっその事、彼に朱音を預けても良いかも知れない。そう思った時も少なくなかった。
しかし現に沙雨は飢えている。そんな相手に大事な守るべき人間を預けるわけにはいかなかった。
天孤は沙雨に向かって「認めたが、信頼はしていない」と言った。
あの男を信頼し、朱音を手放し、傷つけてしまわないよう、自分へも言っているような注意の言葉だった。
───沙雨……恐ろしい男だ。
彼は今、その目で何を見ているのだろうか。この世界はあの男の目に、どのように映っているのだろうか。
神である自分でも、沙雨の考えていることは想像もつかない。それが朱音にどんな未来をもたらすのか恐ろしくて、彼女の傍を離れられないのだ。
─────────────────────────────────
「仮面をとり、名をお名乗り下さい」
とても大きい扉の前まで行くと、そこで守備をしていた男二人が剣で道を塞いだ。
沙雨は仮面に手をかけ、それを外した。
すると男たちは、ひどく焦ったように、急いで剣を引っ込める。
「さ、沙雨卿に御座いましたか。ご無礼をお許しください」
「いや、気にすることない。お久しぶりだね」
「お久しぶりにございます。……! その方は……」
「朱音です」
男は再び目を見開いて、朱音を見た。
「朱音、お面を取って」
沙雨に優しくそう言われ、おずおずとお面を顔から取り去った。
「お、お初にお目にかかります、朱音と申します」
朱音は律義に深く頭を下げた。相手の男も礼を返してくる。
「朱音……様」
男がぽつりとつぶやいたが、朱音の耳には届かなかった。
「ファウスト王にお会いしたいのだが……」
「分かりました。王も貴方様に会いたいと申しておったのですが、いつも来ていらっしゃらないので、王も諦めていましたから、お喜びになると思います」
「そこは謝罪しないといけないね」
「では、どうぞ」
男たちは沙雨に道をあけ、自然に扉が開いた。その不思議な光景に朱音は息を飲んだ。
その向こうには、また扉がある。
沙雨と朱音が入ると、また扉が自然に閉まった。
「大丈夫だよ。行こう」
「う、うん」
朱音は、沙雨と共に、扉まで歩いて行った。