ダーク・ファンタジー小説

Re: 吸血鬼と暁月【第二次オリキャラ募集中!】 ( No.65 )
日時: 2012/08/22 00:10
名前: 枝垂桜 (ID: 49hs5bxt)



 朱音を敵だと判断した桔梗が鞘に収められた日本刀に手を添える。


 すると沙雨が一歩前に出て、右手を横に出し、桔梗の行く手を遮った。


 反論しようとしたが、沙雨の顔を視た瞬間、背筋が冷えた。

 本気の目だった。朱音相手に、本気の目をしていた。目も最大まで細められて、左手は背にある闇華を掴んでいる。


 沙雨の瞳は走ってくる朱音の動きから一時も目を離さない。


「───闇華、〝闇〟だけを断ち切って」


 ぼそりとつぶやく。


 朱音の刀が振り上げられる。その刃が降ってくるよりも早く闇華を鞘から解放した沙雨は、その一撃を受け止めた。


 ぎりぎりと刃が擦れ合う。朱音は一度沙雨の元から離れると、また攻撃を仕掛けてきた。



「───闇華、〝散って〟」


 まるで話しかけているかのように沙雨は闇華に言った。

 すると闇華は華麗に朱音の胸を貫いた。しかしそこからは血ではなく、黒い影が飛び出して悲鳴を上げる。悲鳴を上げながら消えてしまった。


 睨んだ通り、朱音にとりついていた、あの影のせいなのだろう。

 恐怖の心にとりついて弄ぶ、たちの悪い小悪魔。悪魔に仕える使い魔と言った方が正しいだろうか。


 朱音の体は力なく床に崩れ落ちる。


「桔梗卿、朱音を頼みます」


 普通なら断固拒否するのだが、今は沙雨への恐怖心が生まれてしまっている。今彼に逆らうのは良くない。──殺される。


 桔梗が頷いたのを見た沙雨は、そこに横たわっているオリオンの元まで歩いて行った。


 自分が連れ去った女に横倒しにされるなんて、なんて情けなくて笑える光景なのだろう。


「さあ───どんな風に殺されたい?」


 妖しい微笑みを浮かべてはいるものの、目は笑っていない。無感情と言うわけではなく、抑えきれず、器から溢れかえった〝怒り〟が瞳ににじみ出ていた。



「刺す? 切る? 八つ裂き?」


 淡々と殺す方法を三つ言った後、何かいいことを思いついたらしく「ああ」と笑った。



「半殺しにして、どこかに閉じ込めようか」


 囁く。


「死ぬ間際まで。最期の最期まで痛みを味わって死ぬんだ。──素敵じゃないかい?」


 そう言うと沙雨は闇華を持ち上げて、振り下ろした。

 しかしオリオンは周りに散らばった紫の液体の中に潜って、消えてしまっていた。


 沙雨は舌打ちをすると闇華を鞘におさめた。


「悪かったね、桔梗卿」


 朱音を受け取って腕をまわした。


「帰るよ」



 沙雨はそう言って踵を返した。