ダーク・ファンタジー小説

Re: 〜竜人の系譜〜 ( No.10 )
日時: 2013/03/27 23:34
名前: Towa (ID: te9LMWl4)

 サーフェリア王国は、もともと名も知られぬような小国であった。
しかし、サーフェリア王国国王バジレット・ハースは、たった十数年でこの国を世界最大の王国にまで発展させた。
 彼女は、資源が豊かなため他国から度々戦を仕掛けられるこの国を、巨大な軍事国家へと成長させようと試みていた。
しかしただ単に民衆達に武装をさせ、無理矢理兵を集め戦わせても、その戦で勝利しようがしまいが、結局は何人もの死者を生み出す。
バジレットは、そのことが王国にとって悪影響をもたらすと考え、民衆から兵を集めることはせず、志願した者のみを兵とした。
また、各地に存在する奴隷を解放し彼らと信頼関係を築くことで、国に忠誠を誓うようになった奴隷達を兵に加えた。
これらの結果、サーフェリア王国軍の士気は高まり、小規模といえどかなりの戦力を誇る軍ができあがったのだ。
そして更に彼女は、竜人の力に目をつけた。
何万もの兵士を集め戦に勝つより、人数が少なくとも強大な力を持った者達を集めた方が死者が少なくて済む、つまりは敵軍に数ではなく力で対抗しようと考えたのだ。
 彼女は竜人の中でも特に力を持った者を集め、数多の戦を勝ち抜いた。
当時、まだ竜人が宮廷魔導師として国に仕えるというのは一般的なことではなかったため、彼女のこの戦略には世界中が驚かされた。
 こうして、サーフェリア王国は世界最大の王国にまで登り詰め、今や戦を仕掛ける国などなくなるほどの大国にまで発展したのだった。
そして今現在も、サーフェリア王国の戦力といえば、世界最小といってもいいほど小規模な軍と、6人の宮廷魔導師つまりは竜人しかいない。
それでもこの国は、戦での無敗記録を伸ばし続けているのである。




 女の言葉に、フィオは目を見開いた。
「……サーフェリア王国の宮廷魔導師って……伝説の竜人達じゃないか。確かにその人達に会ったら、なにか分かるかもしれないけど……そんな簡単に会えるものなのか?」
その問いに対し、女は笑みを浮かべ頷いた。
「私は使者としてサーフェリア王国国王のバジレット様にお会いしに行くのです。そうなれば宮廷魔導師の方達にもお会いできましょう。ですから私と一緒に行きませんか?もちろん、貴方さえ良ければですが……」
フィオは、ぱっと目を輝かせた。
つくづく自分は運が良いと思う。
中には、何年も探し続けているのに出くわせない者までいるという竜に、たった一週間ほどで会えた上に竜殺しを成功させられた。
故郷で起きたこの悲劇も、きっと自分一人ではどうにもできなかっただろうが、今こうして手を差し伸べてくれる人がいる。
「行く、行くよ!俺、護衛でもなんでもするから、だから連れてってくれ。サーフェリア王国に!」
興奮した様子でそう言うフィオに、女は目許を和ませて頷いた。
「ではそうしましょう。サーフェリア王国はここから北にあります。行くのに1、2か月はかかりますから、私も護衛をして下さる方がいれば心強いですし……どうぞよろしくお願いしますね」
「ああ!……と、そうだ。俺、フィオっていうんだ!フィオ・アネロイド!あんたは?」
互いに名乗っていなかったことを思い出して問いかけてきた少年に、女は苦笑しながら答えた。
「私はスレイン・マルライラと申します」
「よし、スレインか。これからよろしくな!」
スレインは、差し出されたフィオの手を優しく握った。