ダーク・ファンタジー小説
- Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.10 )
- 日時: 2013/01/08 19:02
- 名前: だいこん大魔法 (ID: Ex8RKlaC)
支部長室は、もっとも地上から近い、B1階にある。
けれども、一度、整備棟など、ほかの区画につながっているエレベーターにのり、そこにいって、また別のところにあるエレベーター、つまり、支部長室とつながっているエレベーターに乗らなければ、地下からその場所にいくことはできない。つまりだ、地上から近にいくエレベーターには支部長室、というボタンはなく、地下に降りて、べつのエレベーターに乗らなければ、そこにはたどりつけないということだ。まあ、カモフラージュてきな意味合いをもっているんだろうその工作は、それなりにめんどくさいのだ。
ゴオン・・・という派手な音を立てて、エレベーターが停止する。乗員数最大百名まで乗ることの可能なこのエレベーターに一人で乗っているっていうのはなかなか寂しいものだったが、扉が開き、シャッターが開くと、そんなことはどうでもよくなる。
支部長室があるこの棟は、支部長室しか存在していないため、短い廊下が前方にあるだけだった。そこには、ほかの階とは違い、レッドカーペットがしかれていたり、置物があったりと、仰々しい雰囲気をかもしだしている。
やがて、支部長室の目の前・・・これもまた、縦十メートルほどの、仰々しく、立派な扉が待ち構える。いかにもここが、「ボスの部屋」だというのを示すかの如くの出来栄えだ。
「・・・相変わらず、だな」
前に来たとき、というか一番最初にここに来たときは、この威圧感に若干ビビりもしたものの、何回かくるうちになれたし・・・というか、中にいる支部長と、この「威圧的」な扉とのギャップが強くて、もうなんかこの扉の意味を感じなくなってきている今日この頃だったりする。
一応ノックをするが、中からの返事はない。
ギイッという音をたてながらドアを開くと、そこはやぱり、社長、ボス・・・なんでもいい、お偉いさんの中のお偉いさんが使っていそうな仰々しい部屋があった。
「失礼します」
と一言だけいい、俺は中に入る。
「・・・まずは、入隊おめでとう、といっておこう」
ずっしりとした横ながの机、そこにはセットとして異常に背もたれが高い椅子がある。その背もたれは今俺の方向を向いていて、その声の人物を伺うことはできない・・・が、もう何度かきているので、気にしない。
「ま、おかげさまでな」
といいながら、俺はドアをしめる。
ガチャン・・・という音をたてて、ドアが重々しくしまるのを確認すると、俺は、次の言葉を待つ。
「今日来てもらった理由はだいたい察しがつくと思うが・・・」
といいながら、支部長は椅子をクルンと回転させる。そこには・・・
「・・・」
「む?なにを見ている?」
といいながら、首を小さくかしげる・・・外見年齢で言ってしまえば、俺よりも5歳ぐらい若いだろと言いたくなってしまうような・・・幼女が、いた。
長い金髪を片方で結んでいる、サイドテールという髪型。紫色の、強気というか、挑戦的な目。幼いながらも、かなり整っている顔立ち。座っているから今はわからないが、たしか身長は140cmあたりしかなかったなと、思い出す。
口調はかなり尊大なのに、この外見とのギャップは・・・前来た時に、そのことについて俺は触れたことがあった。まあ・・・最終的に本人に口止めされたのだが、正直に言うと、俺は最初にこのお子様が支部長なわけがないと勝手に解釈してしまい、怒らせてしまい・・・最終的には泣かれてしまった。
華奢な体つきは、どこか折れてしまいそうで、男心をくすぐり、守ってやりたいと思わせる。強気な瞳は、その華奢な体型と相まって、微笑ましくすら思える。
まあ、いってしまえば、「似合わない」
「・・・今、失礼なことを考えたね?」
「いえ、滅相もない」
心のうちを見透すような発言を、すぐに受け流す。ここには前・・・そうだな、だいたい4回ぐらい訪れたことがあるが、今のような会話は必ずされていたからもう耐性がつき、勝手に口が反応した。
「ん・・・しょっと」
といい、支部長は椅子から降りる。
どうやら足が地面に届いていなかったらしく、飛び降りる、という形になってしまったが・・・そこをしてきするのは野暮ってもんだろう。
そんなことを考えていると、また訝しむような視線をおくられるが、目をそらして回避させてもらった。
「まあいい、本題に戻すと、今日来てもらった理由は・・・冬夜、君の「夢幻喰」と、「ブラックフェザー」についてだ」
いいながら、支部長・・・「天美ルリ」は、机にある資料の山から、俺のことが書かれているであろうものをとりだし、パラパラとめくる。
「君自身ももう把握しているとは思うが、君の「夢幻喰」は、少々特殊だ」
そう・・・特殊な「夢幻喰」、それと奇跡的に適合した「特別事例」・・・それが、俺だった。
「日本で今現在観測されている究竟的な進化を遂げた「キメラ」・・・「識別名アマテラス」の細胞で作られた、「夢幻喰」・・・それが、君に宿る力だ」
そう言って、ルリは一枚の紙を俺に渡す。
そこには・・・俺が少し前に思い返した、ベテラン三十名が遠征を組んでも、勝てるという保証がない超大型種・・・そう、「龍」と言ってもいいような外見をした「キメラ」が、うつされていた。