ダーク・ファンタジー小説
- Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.12 )
- 日時: 2013/02/13 06:12
- 名前: だいこん大魔法 (ID: XTwzLzPc)
「まぁ、二人の時ぐらいは許可するが、公私は分けるように」
「了解」
そう言い放つと、彼女は今まで手にしていた資料を机におき、その隣に用意されていたであろう資料をとる。そこには、チラリとだけ見えたが、【BFの能力】について、と書かれていた。
「ヴァジュラ」には、ブラッドアーツ以外にも、その個体と、所有者との適合性により、もう一つ能力が生まれる場合がある。
それを意図的に作ることは、今現在の技術では75%可能になっているらしく、俺のブラックフェザーも、その例により、能力がひとつだけ存在する。
「さて、前来たときにも一度説明したと思うけど、君のブラックフェザー、略して「BF」の能力についてだ」
幼い顔を少しだけ苦い表情に変え、資料を手にする。
「君の「ヴァジュラ」、「BF」は、君自身の能力を持続的に封印させる力がある。つまり、君がその気にならなければ、本来の君の力の半分以下しかだせないということになる。」
「ああ」
「だがここで勘違いしてはいけないのが、これは、「劣化能力」ではない、ということだ」
一見すると、自分自身の能力を封印されてしまうと聞いたら、それはただの粗悪品としか思わないんだろう、だけど、大切なのは、そう、「俺がその気にならなければ」というところ。
「たしか・・・、本来の力を出すときに、蓄積していた能力が爆発して、一度だけ、「ブラッディアーツ」を使うことができるんだったな」
「・・・その通りだ。ブラディアーツについては、もう知っているか?」
「いや・・・言葉しか聞いたことはないな」
俺がそういうと、ルリは資料はめくり、そのブラッディアーツについて書かれている場所を読み上げる。
「ブラッディアーツ、まぁ簡単にいってしまえば、特定の「ヴァジュラ」にのみやどり、やどったなかでも、さらに特別の「夢幻喰」を宿した「夢幻を喰らう者」でなければ扱うことのできない、ブラッドアーツのフルバースト状態・・・そのことをさす」
そう言いながら、俺に資料の一部を渡してくる。そこに目を通すと、たしかに同じようなことが書かれているが、少しだけ気になることがある。
「でも、俺の場合はブラッディアーツは、一度しか使えないんだよな」
そういうと、ルリはこくりと肯き、続きをいう
「ブラッディアーツを使える「夢幻を喰らう者」は少ない。まずそれが条件を満たしていても発動しない場合があるから、プラッディアーツの圧力に負け、強制進化の恐れがあるから・・・と、今までブラッディアーツを使えるようになったファンタズマたちは、それが理由でブラッディアーツを使わない・・・つまりだ
「つまり、使いすぎるとやばいからっていうことか」
「そう、君の場合、ブラッディアーツはほぼ確実に発動する。けれども、それを何回も使うことは原則として禁止とさせてもらう・・・だから、一回だ」
一通り言い終えると、小さなため息をついて、ルリは資料を机の上にもどす。俺はもらった資料を折りたたみ、ズボンにポケットにしまうと、ルリのほうに向き直る。
「そういえば、次は実習だったかな?」
といい、彼女は壁にかけられている時計を見る。そこには、まだこの部屋にきてから十分程度しかたっていないということを知らせるには十分な時間の動きしかなかった。
「・・・まだ十分ぐらい余裕があるね、せっかくだから、お茶でもしてくかい?」
そういいながら、もう部屋の隅っこにある給水器にむけて歩いていく。これはお茶をして行けという合図なのだろう。俺は無言に客用のソファーに腰掛けて、ルリのその背中を見る。
ファンタズマの支部長であり・・・「夢幻を喰らう者」でもあるらしい、どう考えても俺より年下にしか見えない彼女の背中は、少しだけ、ウキウキしているようにも見えた。
それは・・・日本に、明るい兆しが見えたから?それとも、「アマテラス」の一連により、これ以上犠牲者が出なくなったため?・・・まぁ、このどっちかを考えてしまう時点で、俺は大いに自惚れているんだろうけど、少しでも彼女に安心してもらえるなら・・・今までがんばってきた彼女に安心を与えられるならば、それもいいものだろうと、一人うなずく
「・・・どうしたんだい?そんなニヤニヤして」
内心を見透かしたかのように、戻ってきたルリがそういう。それに俺は
「いやぁ、ルリはすごいなぁと」
「お世辞はいいよ、私は、やるべきことをやっているに過ぎない」
少しテレた感じでそういいながらも、口元は少しだけニヤついていた。
「それよりも、時間までまだ少し時間があるから、君の話を聞かせてくれないか」
目の前のテーブルにお茶を並べて、対面にルリが座ると、唐突にそんなことをいってくる。
「俺自身の話?」
わけがわからずそう言い返すが、ルリは興味津々といったふうに
「そう、今まで私と君は仕事の立場でしか話してなかったが、君を見ているとだんだんと興味が湧いてくるのだよ」
興奮気味にいうと、若干冷静にもどさったのか、一口お茶をすすり、仕切り直す。
「・・・実はね、君以外に歳の近そうなやつと話す機会があまりなくてね、私は昔から・・・それも子供の頃から「ファンタズマ」で過ごしてきたから、自分の年代の子供たちが、外でどんな暮らしをしているのかをしらないんだよ」
「へぇ、子供のころから「ファンタズマ」にいたんだな、ルリは」
「ん?まあそうだな、親が「ファンタズマ」の一員・・・って私のことはどうでもいい、君の話を聞かせてくれ」
親が「ファンタズマ」の一員・・・どうやら、かなり上層部に関わる親を持っているらしい。
日本はこの世界で今、危険度が5番目だ、「アマテラス」以外の個体は大したことがなく、比較的安全な国といってもいい、けれども、そんなところでも危険は確実にあり、死者が0人という日は存在しないほどだ。それなのに、俺と同じぐらいの、もしくは下の少女にまかせるというのは、その親と、そして昔から「ファンタズマ」の一員としてがんばってきたルリを信頼してこそなのだろうと、ようやく納得がいったところで
「俺の話か・・・聞いてもつまらんような話ばっかだぞ?」
俺は、ここに来る前のことを思い返しながら、そういう。
「かまわない、外の暮らしっていうのがどういうのかも気になるしな」
そうルリが言うのを聞いて、俺をお茶を飲む。まあ特別目立った出来事もなければ、この世界では至って普通な生活をしてきたはずだ。だから俺は、サラリという。