ダーク・ファンタジー小説

Re: 【夢幻を喰らう者】※1-16更新 ( No.17 )
日時: 2013/03/22 12:29
名前: だいこん大魔法 (ID: g5yX4cMd)

「おいおい、なんだ今のはぁ?もしかしてもしかすると、俺にむかっていっちゃったりしたのかなぁ?」

といいつつ、机をバンッと勢いよく叩く。それに神樹はビクッとなって、涙をにじませる。
突然の大きな音におっさんが顔をあげてこっちを見るが・・・止める気はないらしい。むしろ、仲良くなるいい機会じゃないのか?みたいな感じで俺のことをニヤニヤと見ている。・・・正直、めんどくさいことこの上ないのだけど、とりあえず、様子を見守ることにした。

「・・・っと、よくみりゃ随分と可愛い顔してんじゃないの、俺としたことが、こんな可愛い子をマークし忘れてたなんてっ」

突然手のひらを返したようにニコニコ顔になる西岡。こっちにむかってきつつ、神樹に話しかける。

「ねぇ君、名前は?そんな冴えなさそうな奴とじゃなくて、こっちきて一緒に話そうぜ」

おいおい誰が冴えなさそうだ、と心の中で文句をいうが、なにもいわない。
神樹のほうは・・・前にも言ってたとおり、俺以外の人と話すのはどうにも緊張するらしく、なにもいわずに硬直してしまっている。その間に、俺たちの真ん前まできた西岡が

「ああ、さっきのもしかして怖かった?いいっていいって、べつに気にしてないからさぁ、ほら、こっちきなって」

といい、神樹の手をとろうと、手を伸ばす。
神樹は動かない。けど、西岡の手が、神樹の手を取ろうとした瞬間・・・俺は、その手を弾いていた。

「・・・あ?」

西岡が、こっちを思い切り睨む。・・・凄むことに必死になりすぎていて顔がおもしろいことになっていて、プッと吹き出しそうになるのを俺は必死にこらえつつ。

「まあまあ落ち着けよ・・・顔がひどいことになってるぞ?」

と、こらえきれず言ってしまった。
キレやすいタイプなんだろう。西岡がテメェッと大声をだして、顔にむかって拳を振り下ろしてくる・・・が、「ファンタズマ」の中で、「夢幻を喰らう者」同士の喧嘩は御法度だ。
仲間で喧嘩をして、どちらかが使い物にならなくなっては、いろいろと困ることがある。たとえば、使い物にならなくなったもののチームも、使い物にならなくなってしまうからだ。
新人の間は被害はほぼないといってもかまわないが、ルールはルール・・・俺は、最低限の力でその拳を掴み、そのまま固定する。

「ちっ・・・」

といいながら、西岡が反対の拳も振り下ろすが・・・今度は俺がなにもせずに、その拳は止まった。

「西岡、やめておけ、「夢幻を喰らう者」同士の喧嘩は流石に見過ごすことはできない」

と、おっさんがいいながら、その手を掴んでいた。
「夢幻を喰らう者」は自身でリミッターを解除させて、力の上限を変えることが可能だ。今の西岡はおそらく、リミッターを解除している状態だろう。俺も若干だけど解除しているが、それでもかなり重い。だが、おっさんはただの「軍」の人間のはずなのに、飄々とした顔でその拳を止めてしまっていた。やっぱり・・・よくわからないやつだな、このおっさん。

「・・・くそがっ」

といって、拳を収める西岡。それをみて、おっさんがうむ、と肯き。

「どうせこのあと実戦訓練をするのだ、そのあとにでも、対人戦闘訓練でもして、勝敗をつけるといい」

そういいながら、この場をさり、じょじょにあつまりつつある新人たちがこちらに注目しているのを感じて、なんでもない、といったふうにいい、

「各自好きな席に座れ。そろそろ始める」

といいながら、機械のほうに戻る。

「・・・あとで覚えとけよ」

といい、西岡も下の席に戻る。そっちではありえなーい、とか、なにがあったの?とか、西岡の周りのやつらが話ていたが・・・

「こ・・・こわかったぁ」

と神樹が弱々しくつぶやくのを聞いて、俺はフッと笑う。

「・・・次からはボリュームに気を使えよ?」

と別に痛くないけど、痛そうに西岡の拳をとめた手をふる。

「う・・・うん、ごめんね?」

「気にすんな」

と言いながら、神樹の頭をポンポンと叩いて、怒ってないよ、といったふうに、俺がよく孤児院でやってたように、撫でてやる。
それに神樹は一瞬気持ちよさそうにするが、すぐにハッとなって

「こどもあつかいしないでよぉ」

と、今度は頬をふくらませる。
その様子に俺はまた笑い、撫で続ける。まあこれが、さっきのことの罰だと思って頂ければ、それでかまわない・・・が、めんどくさいことになっちまったなと、俺はひとりつぶやくのだった。