ダーク・ファンタジー小説
- Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.7 )
- 日時: 2013/01/06 22:19
- 名前: だいこん大魔法 (ID: Ex8RKlaC)
「そういえば、模擬訓練の形式ってどうなってるんですか?」
ふと俺は思ったことを聞いてみる。
実戦では必ずチームを組んで戦闘を行うことになるが、この場合では、一体どうするのか?
まだ戦闘慣れしていないやつらがチームを組んだとして、万が一で、最悪な自体が起こる可能性があるのではないか?と懸念するが
「訓練の形式?あー、たしかあれだ、新人同士で一度、二人ひと組のチームを組んでもらうってやつだったな。新人同士、「ヴァジュラ」の扱いにも慣れてないだろうから、大人数でのチームは危険、かといって、一人でやらせるのも危険っていうことらしいから、そんな感じでやることになる」
「んー・・・」
二人ひと組か。
たしかに、これならば一人でやるよりもより安全になり、大人数で一斉にやるよりこんがらがらなくて済む。
戦闘慣れしていない、といっても、「夢幻喰」を体に宿していて、普通よりはるかに強くなっているし、五感もするどくなっていて、仲間の行動を雰囲気で読むことが、新人の場合であってもできるだろうから・・・。ま、さっきからいろいろと考えてはいるものの、実際に俺だって実戦を経験したことすらないから、なんとも言えないんだけど。
「あっ、じゃあじゃあ、織塚くん・・・」
「ん?あー、一緒に組むか?」
「うんっ」
「はっ・・・若いねぇ」
嬉しそうに笑う神樹。それを微笑ましく見守るおっさん。無骨なエレベーターの中で、さらに、世界がこんな状況でなければ、今の光景が、世界ではあたり前のように見れたのだろうと、思う。
そんなことをやっているうちに、ゴウン・・・という音をたてて、エレベーターが停止する。停止するとともに、重苦しい雰囲気を立てながら真ん中から左右にスライドして、扉が開き、そのさきにあるシャッターが上にしまわれる。
背景に聞こえるのは、ガツンガツンと、なにかを叩きつける音、ドリルかなにかで、穴をあける大きな音。ネジをはめ込むために使われるドライバーの、甲高い音。
シンナーのような臭いっていうが、実際にシンナーというものを目にしたことなく、記録に残っているものでしか見たことがない俺にとっては、この臭いをどう表現していいかわからないが、おもわず眉間にしわをよせてしまうぐらいに、鼻を刺激する臭いだった。
「うっ・・・くさい」
神樹が眉をハの字にして、不満をもらす。それにおっさんは、平気そうな顔でそうか?と笑う。
「この臭いも、いずれ慣れるだろうよ」
豪快に笑いながら、再び俺の頭をバシバシと叩く。・・・俺はなにも言ってない、と口が開きそうになったけど、たしか前に来たとき俺もそんなことを言っていたような気がするので、黙っとくことにした。
「ここが「ヴァジュラ」を整備する場所・・・整備棟だ。一度説明したと思うけど、出動の時、定期審査の時、整備完了の知らせの時以外は特に用事のない施設だが、ここが「ファンタズマ」のもっとも重要な施設といっても過言じゃない」
「あ、だからここの案内はしなかったんですね?」
「その通りだ。案内できるのはせめてエレベーターの中からこの場所を見せるぐらいだな。お前らのような新人がはしゃいでなにしでかすかわからない・・・というのが上の意見だから、こればっかりはしょうがないのさ」
「ファンタズマ」最重要施設、それが、この「整備棟」だ。
「夢幻を喰らう者」というが、それはあくまでも、「ヴァジュラ」を扱うことのできる人間のことをさしているにすぎない。そのために、「ヴァジュラ」がなければ、「キメラ」を倒すことはできても、喰らうことはできないのだ。
そのため、「ヴァジュラ」を整備するこの場所は、「キメラ」を掃討するという、全世界が掲げる願いを成就させるには、もっとも大切な施設といえた。
・・・だから、新人を大勢でこの場所につれてくることはできなかった、ということらしい。デリケートなぶふんは基本的に立ち入り禁止になっているが、新人の声がうるさかったり、機械をさわったりすると、まあデメリットがうまれてしまう可能性があるから、慎重になっているんだろう。
「まあ、あとでやる模擬訓練なんかじゃその類じゃないんだが・・・、お前らも後々で、実際に出動するときがくるだろう。そんときに必ずここを来ることになるから、まあようは習うより慣れろってことだ、この場所は」