ダーク・ファンタジー小説
- Re: 「愛されたい」 ( No.2 )
- 日時: 2013/03/04 20:59
- 名前: 哀歌 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)
1話 「……格好いい……」
20xx年、4月。とある中学校の体育館ーー
私は、音を立てずに体育館に並べられた椅子に座った。
あと少しで、この中学校の恒例行事、部活動紹介が始まる。
それまで少し時間があるから、自己紹介をさせてもらうね。
私の名前は、安藤冷夏。
3日前にココーー味蕾中学校に入学した、ピカピカの中学1年生です。
1年1組で、学級委員をやっています。
よろしくね。
「これから、部活動紹介を始めます。校長先生のお話。校長先生お願いします」
熊みたいな先生ーー伊東祐先生が、この行事を進めるらしい。
私が小さく溜息を吐いた瞬間、小太りで背の小さな先生が壇上に上がった。小野里美校長先生だ。
彼女は独身。仕事に青春を捧げ、校長の座まで上り詰めたらしい。
彼女が家庭を持てば、きっと良い家庭になると思う。
だって、そんじょそこらに居る先生と比べればーー人相も言葉遣いも悪く、敬語も使えない先生よりは、絶対良い先生だと思う。
何時の間にか校長先生の話が終わり、野球部の紹介が始まっていた。
野球部は男子ばかりで、すごく気分が悪くなった。
次は、女バレー部。
皆、とても仲が良くて、幸せそうだった。
でも、入る気は無い。さぁ、どうしてでしょう?
その次は、ソフトボール部、男女バスケ部、卓球部、テニス部、サッカー部と続く。
運動部の最後に発表されたのは、柔道部だった。
3年生が5人。2年生が1人だけで、活動してるらしい。
「えーっと、今から40kgの里山宏大君が、90kgの近藤伸君を投げます!」
縦にも横にも大きい部長さんらしき人がそう言うと、体育館は拍手や歓声に包まれる。
体育館の空気が変わった。私がそう思った時ーー
里山宏大先輩が、近藤伸先輩を投げ飛ばした。
「……格好いい……」
私は思わず、口に出していた。
部活動紹介が終わり、家に帰っても。
お風呂に入っても。
布団に入り、眠っても。
朝、起きてもーー
胸の鼓動は収まらなかった。