ダーク・ファンタジー小説
- Re: . 「 あそびましょ、 」 ▼改 ( No.6 )
- 日時: 2013/03/22 17:52
- 名前: らず* ◆U03MyJkANs (ID: 9IMgnv4t)
▼ 001 →
ぴゅうっと、服をも突き通すような鋭い、冷たい風が吹く。季節は冬。カサカサと落ち葉を踏めば、独特の香りが鼻をさす。そんな落ち葉を窓の外に横目で見て、あたしは目の前にいる親友の美月に目を向けた。
あたしは森川 七瀬。良く有る自己紹介だけれど、本当に何処にでもいる普通の女子高生。そして此処はあたしの親友、美月の家。美月はモテモテで可愛くて頭も良くて、自慢の友達だ。
さっきまでは、女子高生なら良くする恋バナと言う物をしていたのだけれども。美月はいきなり深刻そうな顔になって、ティデベアを撫で回した。
「ねぇ、七瀬・・・。知ってる?噂」
美月の目には、恐れと不安の色が見えた。
「噂って・・・な、なんの?」
あたしが問うと、美月は撫でていたティデベアをギュッと抱きしめて、話を始めた。
「11月の、第1週金曜日。絶対誰かが殺されているの」
「えっ・・・!? 殺人!?」
「そう、それはもう残酷な殺され方よ。しかも色々なやり方」
11月の第1週金曜日に、必ず誰かが殺されている。それはまるで、有名なあの、13日の金曜日に出るチェーンソーを持ったあれみたいで。
残酷な殺され方——・・・、自分なりに想像するだけで身震いする。
「その日の朝ね・・・、ポストに真っ赤なトランプが入っているらしいの。
それは、ハートのクイーンのカード」
真っ赤なハートのクイーンのカード。そのトランプが一体何をあらわすのだろう?
あたしは美月の話をよく聞くためにと、だらんと座っていたのを正座に直した。
美月は尚も抱きしめているティデベアを撫でる。
「綺麗な真っ赤なトランプ。
・・・けどね、その赤は血なの」
「ち、血・・・!?」
美月が話すには、11月の第1週金曜日に、真っ赤なハートのクイーンのカードがポストに入ってると言う。
そしてその赤は血。誰のかは誰も分からないが、とても生温かいと言う。
そう、固まっていないと言うことは・・・、新しいものなのだろう。
「トランプの裏にはさ、普通は数字とマークと・・・あとは、絵が描いてあるわよね?」
「そうだね。そうじゃないと使えないし」
「けれどね、そのカードは違うの」
「違う?」
「そう」
まぁ、血が付いていると言う時点で普通とは言えないのだけれども。
更に普通のカードと違うとは?
「裏にね、幼い字が書いてあるんだって。小学生ぐらいの年の字。それも、下学年」
「字・・・?」
「えぇ。何が書いてあるのかは知らないけどね。噂では皆そうらしいのよ」
「なに、それ・・・・・・」
11月の第1週金曜日に、ポストに入っている真っ赤なカード。
その裏には、小学生ぐらいの幼い字が書いてあると言う。
小学生下学年が伝えたい言の葉・・・、それは。送られた者にしか分からない。
「今・・・、10月の28日じゃない。もうすぐで・・・何か怖くって」
「そうだね・・・、噂だけどね・・・」
恋バナをしているときは、明るく盛り上がっていた部屋も、今の話しでどーんと雰囲気が重くなってしまって。
ふと窓の外を見ると、オレンジ色の夕日が見えた。けれど今のあたしには、そのオレンジ色でさえ・・・、赤い赤い、血に見えた。
「・・・ごめん、あたし帰る。また明日、学校でね」
「いいえ、こちらこそごめんなさい、変な話をして。また明日ね」
あたしはそうして、美月の部屋を出て行った。
もうすぐ悪夢が訪れるとは知らずに。
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