ダーク・ファンタジー小説

Re: (リメ)無限エンジン 1-5更新!  ( No.21 )
日時: 2013/11/24 12:21
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

 無限エンジン 第1章 第1話「さぁ、籠の中にいるのを止めるときだよセリス?」Part6

 2016年7月19日夜9時45分。
 セリスがエンジンに目覚めて、1ヵ月が経過していた。
 しかし能力を知ってからも力を使うことはなく、今日も相変わらず彗と談話しているだけ。
 もっともセリス本人はそれでいいと思っている。
 自分の力が普通の生活でそこまで使えるものでもなかったから。

 だが力の主は自分を使って欲しいらしく、能力を使えと間断なくセリスに言い続けるのだ。

 「どうしたんお嬢?」
 「大丈夫! ちょっと今日は大変だったから、頭がクラッときたみたい」

 連日の疲れが出て少しよろけるセリス。
 彗は彼女の異常に気づき、いつもの笑みを崩す。
 彗を心配させまいと必死で取り繕うセリスだが、当然ながら彗は下がらず心配そうな眼を向けてくる。
 
 「頭が痛いって大丈夫やあらへんよぉ? まだ時間あるけどお話はまだ出来るんやし、今日はもう寝たほうがえぇんやない?」
 「いやだよぉ、彗と話すの楽しいのにぃー」

  彗の正論に気押され顔を引きつらせるセリス。
 だが今苦しい状況にあるセリスにとって、この時が数少ない至福の時間で。
 ただ詰らない気持ちのままベッドに横たわりたくないと嘆く。

 「だーめぇやぁ。下手に疲れ残して病気になったりしたらそれこそ長い間会えなくなってまうやん?」
 「うぅー、それもその通りぃ」

 そんなセリスのわがままをなだめる彗の目には本当の心配と無念さが滲んでいた。
 察したセリスはさびしそうに目を背けてしぶしぶ納得する。
 彼女の言う通りなのだ。
 セリスが風邪をひいたとして、おそらく侍女風情である彗がお見舞いに顔を出せるはずがないのだから。

 「分かれば良いんや。明日が来れば元気になって、また会えるんやからな」
 「うん」
 
 去り際の彗の言葉を心から信用したように、セリスは主に懐ききった子犬のような顔でうなずく。
 そしてベッドに入る。
 疲れのたまり具合からまどろみに落ちるのは速く、すぐに彼女は寝息を立て始めた。

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 その日は珍しくエンジェルビーツは話しかけてこなくて。 
 幸せな朝を迎えられそうな気がした。
 だがそのような日こそえてして悲劇はおきるのだろうか。

 「熱い?」

 汗ばむような暑さに寝苦しさを感じ目を覚ますセリス。
 彼女はなぜか火の海に立っている。
 なぜか自分の部屋ではない。
 多くのものが燃えてはいるが、すぐにここは父の部屋だとセリスは理解した。

 なぜなら——

 「お父さん? 嘘っ、何で……いやっいやあぁぁぁぁぁっ」

 すぐ目の前には胸から血を流し横たわる父がいたから。
 



 
 
 

 End
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 第1話Part7へ続く