ダーク・ファンタジー小説
- Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.17 )
- 日時: 2013/05/18 15:07
- 名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
- 参照: トコロが彼女には、生まれてから保護されるまでの
【むかし の ゆめ】
仕方がないので顔を伏せたままだ。
「……今でも自由になりたいって、思ってる?」
当たり前だ。ずっとずっと、それだけを夢見てここに居るのだから。ゆっくりと頭を縦に振ると、ジャンマリアは「ふぅ〜ん」と、冷かす様な言い方をする。蔑みの混じった言い方をするのは彼の癖なのだと、なんとなくわかってはいるけれど、それはどんなときも白猫を不安にさせるのだ。私は間違ったことを言ってしまったのだろうか、と。
「もちろんです。ジャンマリア」
此処に来た時にジャンマリアに言われたのだ。「命令に従えば君に不自由のない生活を与える。だが一つでも命令を拒否すれば——」
「君は本当は、普通の人生を送りたいんだよねえ?」
「……はい」
“普通の人生”それがどんなものなのか白猫自身も理解はしていないけれど、今の暮らしが——人を殺して生きていくことが普通ではないことくらい馬鹿でもわかるはずだ。
「なんで?」
「——え?」
「なんで白猫は自由になりたいのさ」
なんで? 自分が自由になりたい理由? ……普通の人生を送りたいから、じゃ駄目なのだろうか。脳みそをどれだけ回転させても明確な答えは浮かんでこない。ボスを前にしてもたもたできない、けれど今すぐに答えることは無理。どうしようもなく黙り込み、脳だけを必死に回転させるが何も思い浮かばない。
「ああ、無いなら無いでいいや。そんな情報俺には必要ないもんな」
そう言ってまた豪快に笑う。今のは本当に笑うポイントが見当たらなかったような気がする。
「ま、とにかく白猫。これからも自由のみ目指して頑張ってくだせえな」
そう言うと着ていたベストの内ポケットからライターと煙草を出し、喫煙し始めた。ぷはぁっと煙草の煙を吐く。どうもこの匂いは好きに慣れないが。
「……以上だから。」
口から煙を吐いた後ジャンマリアが言った。
……え?
「終わり、ですか?」
「ご不満?」
「い、いいえ。滅相も」
慌ててそう言う白猫にジャンマリアはまた笑い「下がってよろしい。」と言った。それを合図に白猫はフラリとした調子で立ち上がり、部屋を後にした。
「失礼します。」
正直、どうしてこんな質問をされるのかわからない。いったいどうしてそんなことを聞くんだろうな。と、少し考えてしまうけれど、きっとジャンマリアなりの何かがあるのだろう、と自己完結させておいた。
自由になることは、ここに来た時からジャンマリアと約束していたことなのだ。だから、いつか絶対に私は自由に慣れるのだから、それまではジャンマリアに尽くすのだ。笑いのツボが良くわからないし不真面目なところもあるけれど、ジャンマリアは——私の命の恩人なのだから。