ダーク・ファンタジー小説
- Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.4 )
- 日時: 2013/04/30 23:04
- 名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
- 参照: 君のことを信用しているから、秘密を打ち明けたのです——
【かいぬしからのめいれい いやーなおつかい】
扉を抜けた先には、黒いカーペットの敷かれた、通路の様な狭い廊下が続いている。白猫はなぜかいつも思ってしまう。「もしかしたらこの通路は永遠に続いていて、何処へも辿り着くことなく歩き続ける羽目になるのかもしれない。」——ごくん、と唾をのむ。脚が重くなり、心臓が早まるのを感じながら、それでも彼女は足を動かした。
わかってはいるのだ。それはただの自分の悪い想像にすぎないことは。それなのに、なんだか……見るたびにそんな気がしてしまって不安で仕方がなくなる。何も知らない人が見たならば「そんなものはただの妄想だよ。」とか、「全てまやかしだよ」とか、諭す人が居るのかもしれない。だけれど、白猫が人殺しだと知っての上だったらどう思うのだろうか。「人を殺すのは怖くないのに、そんな妄想に捕われたりするのか」と、呆れたり蔑んだりするのかな。想像することしかできないけれど、多くの人間がそんな風なことを言う気がした。
廊下の一番奥までたどり着くと、エレベーターのボタンを押して地下まで下りて行く。地下だというのに其処まで暗くはなく、薄明るい。辿り着いたのはドアの並ぶ間だった。——ここに、暗黒世論の人間の一部が暮らしている。手前から3番目の103号室。迷うことなくその部屋へと直行して……行きたいところだったが、そういう訳にも行かなかった。先ほどまで報告をしていたボス——ジャンマリアの言葉を思い出す。
——12時間後にまた来い……尋ねたいことがある、か。じゃあ、12時間後にまたここに来よう。素直に命令を受ける部下はいったい何人いるのだろう。誰も断るとは思わないが、報告の場で自分とボス以外は誰もいない。だったらこの場で済ませてしまえばいいと判断するものが多数だろう。だが、白猫は少数派だったらしく、表面だけでなく対応も素直だ。そう言うところは、自分でも思うのもなんだがジャンマリアには気に入られていると思う。なんだか、誇らしくもあった。
「……理解いたしました。……我らがジャンマリア。」
とりあえず、9時にこちらにまた参上すればいいと、頭の中で自分に確認しながら引き下がろうとしたときに、ジャンマリアはまた何かを思い出したようにこう言ったのだ。
「ついでなんでぇ……帰る時に呼んできてくれない?」
「……誰をですか。」
「え? えーっとぉー、ほらほら、そぉ〜、あの子だよ、あの子!」
「……。」
「『黒猫』を。」
「……。」