ダーク・ファンタジー小説

Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.41 )
日時: 2013/06/07 22:16
名前: 利佐 ◆njG8BYqcA. (ID: LuHX0g2z)
参照: タイトルと内容が剃ってないかもしれませんが後々改訂いたします

【 かめれおん 】

 ——なんだ、コイツ。
 ニコニコと笑いながらカメレオンは黒猫の顔を眺め「へへ、そしてこれも噂の通り、黒猫ってばイケメンだね!!」などと冗談めいたことを付け足す。余計なお世話だ。
 
 「……ジャンマリアに頼まれたんじゃないなら、なんで俺のことなんか追う?」
 「んー、別に? 大した理由はないよー。……なんとなくアナタのことが気になったからね!」
 「……」

 その返答にイライラしながらため息をこらえ、カメレオンから目を逸らす。その様子にカメレオンは意味が解らないらしくきょとんとする。気分屋なのかわからないが、理由も無く誰かを尾行するなんてこと聞いたことない。というか後をつけようと思ったのだったら何故変装までして話しかける必要があるのか。訊きたかったが今と同じように気まぐれな返事が返ってきそうな気がして辞めた。大した理由じゃないのなら訊く価値もないと思ったからだ。
 自分が頭にかぶっていたマスクをカメレオンは拾いあげる。暗めの茶髪の大人しそうな印象を受ける大人の女性の顔がそれを脱いだらまだあどけない高校生くらいの顔になっているから驚いたものだ。本当はカメレオンは金髪だったのだ。
 歩き出す黒猫。そろそろ本部に帰ろうか。元々雨の日は身体の調子が怠くなる。まさか雨が降るとは思っていなかったが、おまけにこんな変な奴に出くわすとも思っていなかった。この森はある程度整備されているので道は分かる。もう本部へ帰ってしまおう。
 歩き出す黒猫を追いかけるようにカメレオンが隣を歩く。

「ちょっとー、怒ってんのー? わぁーかったよ。アンタを追いかけた理由くらい言うのは何でもないのよ」
「ついてくるな面倒臭い」
「えぇー、ド鶏知ー!」
「……うるさ」
「へへっうるさくねぇーし!」

 ……この女、駄目だ。
 そう思った黒猫はそこからは黙って歩いた。そこからカメレオンがどんなに質問をしたり話題を振ってきても断固無視だ。そうして黒猫が相手にならないことを理解するとつまらなくなったのか今度は機嫌よく鼻歌を歌い始める。

「……じゃあ、バイバイ!」

 彼女にそう言われたのは森の出口に出てきたからだった。

「……どうしたんだよ」
「え? ああ、私もこれはこれで忙しいから!」

 じゃあ暇つぶしている暇ねえじゃねえかよ!そう思ったがカメレオンはそんなのも気にせずに手を振った——仕事か何かの前の暇つぶしに利用されたってわけか。不本意だな。それでふて腐れたわけじゃないがどこかへ急ぐ彼女の方を振り返らないで歩いて行った。
 気づいたら雨はもう止んでいた。