ダーク・ファンタジー小説
- Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.46 )
- 日時: 2013/06/12 18:27
- 名前: 利佐 ◆njG8BYqcA. (ID: LuHX0g2z)
【 うつくしき さつじんとは 】
「——やあ、白猫ちゃん。初めましてになるよね?」
初対面の人間にはどんなに気さくに接してもらっても警戒と緊張は解けない。それが白猫である。
昨日のことには一体何の意味があるのか。それについては全く不明で、白猫にはわからなかった。わからなくてもいいやと思った。そしてまた出頭の命令が下った。故にジャンマリアの居る最上階へ出向いたのだが、そこに居たのはあのかったるそうな中年男ではない。
白く透き通った誰かだった。白い肌に白い髪、来ている衣服も真っ白なタキシードだ。身長は170㎝はあるだろうか。だが髪は長く端正な顔立ちをしていてどこか中性的。性別はどちらかわからない。
初対面の人に性別なんて訊くなんてこと白猫にはできない。それ以前に名前を訊くことにも勇気がいるような不甲斐なさ。そんなの分かっている。お決まりの様に身体の体温が上がり、身体が赤化したようにカチカチになるのが解る。
そんなことよりもジャンマリアはどこに!? 私に用があるのはジャンマリアではなかったのか。時間は間違っていないはず。それなのに……とにかくこの事態を何とかしなければと頭を沸騰させていると、
「あの、ごめん。何か余計な事、言っちゃった?」
挨拶をしても一向に返事を返さない白猫に不安そうに問うその人。まるで其方が悪いことを言ったような言い分だ。これはいけない。こんな遜った態度を相手に取らせるなんて失礼千万。そうなるべきは私の方なのにと、一番最年少ならではとも言い難いがそんな信念で慌てて白猫は否定し、首を横に激しく振った。
「あの……えっと……そうじゃないんです……あう……その……」
口数の割には言葉になっていない。
必死に言葉を絞り出そうとしても上手い言葉は見つからずに脈絡のない言葉だけが並べられる。そんな白猫を察してかその人は言ってくれた。
「いいよ。もう喋らなくても」
「……え?」
「君が違うと言ったとしても僕等は初めましての仲だってことに代わりはないんだよ」
ニコリと笑いかける白い誰か。その微笑を何故か懐かしく、そして美しいと思った。
「ピアチェーレ(初めまして)白猫。お会いできて光栄だよ」
近寄って右手を左胸に当てると45度の礼をするその人。その優美な振る舞いを白猫は唯ぽかん、と口を開けてみていることしかできない。
「私の名前はサキ。今日は——ジャンマリアの代行で参りました」