ダーク・ファンタジー小説

Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.57 )
日時: 2013/06/21 18:43
名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
参照: 劣化やばたん

 【うつくしき さつじんとは】


 「キャーッ! サキだーっ! 久しぶりーっ!!」
 
 狂喜したような黄色い声を上げてカメレオンがサキの許へと走っていって飛びついた。
 
 「おっと、よしよし。久しぶりだね〜」

 拒むことなくサキはカメレオンを抱き留め頭を撫でる。実質カメレオンは20歳以上の女性なのだが、こうやって燥いで男性に抱き着いていたりする様子を見るとまだまだ青春謳歌中の高校生くらいにみえる。それはいいのだが……
 偉く異様な光景のように見える。サキはジャンマリアの代行と言っていることから……とにかく偉い人なのだろうに抱き着いたりしていいのだろうか。サキの方もサキだ。これがジャンマリアだったら「アッハ、触ってんじゃねーよぉ」とか笑顔で一蹴するだろうに。

 「もうっ! なんで最近暗黒世論に居ないのよ〜?」
 「ごめんね? 最近色々あってさ。申し訳ないよ。この後もすぐにここを出なくちゃいけないんだよね」
 「えーっ! じゃあもう離してあげなーい」
 「それは困るなぁ〜……あはは」

 頬を寄せたりぷくっと頬を膨らませたり多彩な表情のカメレオン。それに対して終始微笑を絶やさないサキ。
 このほんのりとしたピンクの雰囲気の訳を白猫は理解していない。ただ、偉い立場である先と何故そんな風に親しくできるのか驚いているばかり。白猫にとっては初対面のサキと周りがどんな関係であるのかは解らない。助けを求める様に絵画の方を振り返って見ても絵画はぼーっと二人ではない虚空の方をみつめていた。恐らく彼にとってはどうでもいい事なのだろう。
 
 「……あの、絵画さん」
 
 返事はせず白猫の方を見る絵画。応じてくれているようだ。

 「その、仕事でお世話になるって……どういうことでしょう?」

 サキとカメレオンの空気の中に入り込む自信はなかったので絵画に訊いていた。なんとなくその言葉の意味の察しはつくが確証はなく不安だったので問うてみた。何年か先輩の絵画なら少しは何か説明を受けているのかもしれない。

 「ん……そのまんま、かなぁ? ……つまり」

 『一緒に仕事をするってコト』

 絶句する白猫。
 嫌な予感の2つのうちの、一つが当たってしまった。