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ダーク・ファンタジー小説
- Re: バラと猫と女 -あたかも自分は無罪の様に- ( No.7 )
- 日時: 2013/05/05 14:11
- 名前: 利佐 (ID: LuHX0g2z)
- 参照: 言葉にしたことを後悔する。でも別に私は悪くなんてないわ。
【かいぬしからのめいれい いやーなおつかい】
嫌な場所には何故か早く着いてしまうような気がする。行きたくない気持ちでいっぱいだった106号室の扉の前に、白猫は立っていた。さっきの妄想の延長線に立っているように、動悸は相変わらず速い。落ち着こうと深呼吸しようとするも、ただの大きなため息に変わってしまう。
「誰か代わりに呼んで行ってくれないかなぁ……」
誰もいないところでそう呟いたところでそれが叶う訳でもないのに。虚しい願い事をした。いけない。これではだめなのだ。白猫はジャンマリアから彼を呼んでくる大役を仰せつかった。それを実行するのは他の誰でもなく自分でなければならない。誰かに頼むのは白猫に頼んでくれたジャンマリアを裏切ることになる。——ドアをノックした。
嫌だ。怖い。逃げ出したい。彼に会いたくなんてないのだ。不本意なおつかい。すぐさまここから逃げ出したい。
「何だ。」
警戒するようなドスの利いた声が近くで聞こえた。ドアを一枚挟んだその奥には、きっと彼が立っているのだろう。手にはきっと銃を持っている。ノックの主だもしも的だった時に備えて。
「白猫です。ジャンマリアがお呼びです。」それだけ言えばいいのに、怯えすぎていて声が出ない。
扉の向こうからカチャッと銃を構える音がした。この状況は拙い。返事をしないのならば射撃するとか言い出すかもしれない。
「応えないのであれば撃つ。」
冷静な言葉に白い顔がもっと白くなり、ついでに頭も外側だけでなく中側まで真っ白になった。
「ジャンマリアがお呼びです。す、すぐ……すぐに行ってください!!」
精一杯振り絞って出た言葉だった。
それから少しの間、沈黙が続いていた。
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