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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 昨日の消しゴム ( No.25 )
- 日時: 2012/12/19 23:03
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: geHdv8JL)
翌朝。
寒さのあまりに目が覚めた。
暗かった空は、少しずつ白み始めていた。
ふと、自分の手を空に翳すと、赤かった。血の、鉄の錆びた臭いがした。
ああ、やはりアレは現実だったのだな、としみじみと思った。
けれど、これで、リトが救われるのなら別にいい。
もう、リトや矢々丸とは会わない。こんな迷惑な知人は居ない方がいいのだ。
よっこらしょ、と気を取り直して立ち上った。これからどうするのかを考えなくてはいけない。取りあえず、寒いが川で汚れを落とすことにしよう。
ふらふらと定まらない意識を抑えて、まるで突き刺さるような冷水に、足の先から入った。その冷たささえ、今は心地が良かった。
水は、早朝の空の色と同じ、淀んだ灰色だった。
小川の岸には、背の高い葦が群を成して生えていた。
その中に、周りの灰色から際立って、藍色のものが見えた。あれは何だろう。
近寄って見てみると、藍色の上等な着物であった。もっと言うと藍色の着物を着た、由雅だった。葦と葦の間にもたれ掛るようにして、目を閉じてじっとしている。
この変な女は、一体何なのだろう。こんなに水は冷たいというのに。やはり何ひとつとして、考えていることがさっぱり掴めない。
「おい、何をしている、お前。」
話しかけても返事が無い。まさか死んでいるのじゃないだろうな、と思って肩を揺らすと、そのまま由雅はがっくりと頭を垂れた。
「おい、おい!」
本当にヤバいのかもしれない。急いで由雅の体を岸に上げ、自分も岸に上がった。たっぷりと水を吸い込んだ着物が、やけに重かった。
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