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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.12 )
- 日時: 2013/06/29 17:54
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: OkvG1Pxs)
車に乗ると、母さんが怒っていた。「遅い!別れと言っても限度ってものがあるでしょ!」
僕はそれに無言で返事をした。
そういえば、彼女は体が弱いんだっけ。それなのに別れを告げるためだけに海へ来てくれたのか。
それに、さっきは随分恥ずかしい事をしたなぁ。今までは幼なじみとだけ思っていたので、そういう感情を彼女に抱いた事はなかったから。
窓の外で見える景色は、どれも懐かしい物ばかりだった。
「海が綺麗だな。」
「ねぇ。この海って、こんなに綺麗だったかしら。」
いや、この海は前から何一つ変わっていない。変わっているのは、そう思う僕等の方だと思う。
今日は本当に暑い一日だった。まるで、あの日みたいに。
....車の窓の外で流れる景色の中に、陽炎が見えた気がした。
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「おい、憐舞、起きろ。」
『......んあ?』
僕ははっと思い、すぐに眠りから覚めた。
辺りを見渡すと、真っ暗だった。『....ここは?』
「新しい家に着いたぞ。早く車から降りてくれ。」父さんは眠そうに、疲れきったような感じで言った。
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