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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.22 )
- 日時: 2013/07/07 13:48
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: ycnzZQhq)
『うーん、田舎でもないし都会でもないから、普通ぐらいかな。』
田んぼに近づくにつれて、ただうるさいだけの蛙の鳴き声が聞こえてくる。
路灯を頼りに辺りを見渡してみると、やけに蚊が多くて、僕の手足には虫さされだらけだった。
「普通?ってどんなんなん?例えばさ、デパートとか近くにあった?」
....言うまでもなくありましたよ。
「あったの?羨ましいな〜、ここにはそんなの無いんだもんね。」
....マジですか。
だが、前住んでいた所では都会ではないが、人付き合いもなかなかしなかった。思えば近所の人と話すのは久しぶりのような気がした。「田舎」なんて、虫が多い、人が少ない、店がない、のような悪いイメージしか浮かばなかった昔の僕は、本当に馬鹿だったんだな、と思った。
僕はこれからここで暮らすのだ。前なら行きたくないの一蹴だったが、今では、ここで暮らすのも悪くないと思っている。
そう考えていると、簡単に家が見えてきた。
『ほら、あれが俺の家。』僕は後ろの三人に、家を指差しながら伝えた。
ふとその時、不意に彼女...美華ちゃんと目があった。彼女はそれに気がついて、僕にウインクしてくれた。その姿が魅力的すぎて、僕は目をそらしてしまった。
その時、美華が、かすかに笑ったような気がした。
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