ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ( No.26 )
日時: 2013/07/10 20:23
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: 2bMKvkP1)

 「駄目。三人がやってるのに私だけ座ってるなんてできないよ。」

 そう言う彼女の姿は、後ろではなく僕の横にあった。『全く、しょうがないなぁ。』

 彼女は僕達が持っているベッドを、一緒に持ち上げた。
 ....正直、彼女が持ち上げた事でベッドがそれほど軽くなった訳ではない。

 「....っつーかさぁ、美華と憐ってお似合いだよな。なんか同じ空気っていうか。」和也は、重いベッドを持ち上げている事を我慢しながらこう言った。額には、汗が流れていた。
 『____同じ空気?』
 「自販機で出会った時、憐は他人と“どこか違う”って感じがしたんだよね。美華みたいにさ。」
 僕は、美華の方を見た。和也の言った“どこか違う”とは、どういうことなのだろうか。
 ____そんな事、彼女と出会った時には全く感じなかったし、そんなもの知る由もなかった。



 「お、手伝ってくれてありがとうございます。」
 引っ越しの業者の方が、ドアの前で重そうにしている僕達に、声をかけてくれた。「持ちましょうか。」
 僕等が頷くと、彼はベッドを持ち上げた。一瞬にして持ち上げていたものが軽くなった。

 彼は、ベッドをひねってドアを通せるようにして、軽々とドアを通すことに成功した。
 そして素早く右の父さんの部屋に行き、良さげな場所にベッドを置いた。なお、今までの動作中、僕等はベッドを持ち上げる手にほぼ力をいれていなかった。流石だと思った。