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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.31 )
- 日時: 2013/07/18 07:16
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: CE4YyNoS)
「....ほらさ、やっぱ美華ちゃんと憐って似てるんだよね。」
憐の家の庭の、蛙のうるさい鳴き声の中で、和也はこう言った。小さい声だったので、少し聞き取り辛かった。
「似てる....か、なるほどな。確かに二人とも変っていうか変わった雰囲気だよな。」
____その時、二人の上空を飛行機が飛んでいった。
その飛行機は何故か不思議な感じがした。が、どうしてこんなものに興味を示すのか、自分でも解らなかった。
「明日、憐に隣町を案内しよーぜ。そういえば美華も引っ越してきたばかりで、まだ知らない事多いから、ついでに案内しようや。」義我が相変わらず見た目に似合わない言葉を口に出した。
和也は不意に空を見上げた。
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美華は憐舞の方を見た。
気がつけば、彼はいつも空を見上げてたり、何もない一点を、ただ見ていたりしている。そして、今回も彼は同じように空を見上げていた。
さっき真上を通った飛行機に、何かを感じたようだが、一体、空に何があるのだろうか。
「憐君はさ、好きだった人とかいるの?」
初めて会った時から憐舞の顔はどことなく大人びていて、何かを「知った顔」だった。
その向こう側にあるものが何なのかが知りたくて、憐舞に聞いてみた。
『好きだった、じゃなくて、今も好きなんだよ。多分、これからも、一生忘れないと思う。』
依然として憐舞は空を見上げたまま、どこか悲しそうな声でこう答えた。
美華はこの時、憐舞の本当の心が自分に向けられていない事に、初めて気がついた。
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