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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.4 )
- 日時: 2013/06/24 21:00
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: RXE99ePl)
家に帰ると、もうとっくに母さんは準備を済ませて、僕を待っていたようだ。
「遅い!昼休みに学校出たって先生も言ってたのに、なんでこんなに時間掛かるわけ!?」
おいもう勘弁してくれよ....さっき俺の身に何があったのか知ってんのか?
『...ごめんなさい。』
母さんは、僕の明らかにいつもと違うこの雰囲気に気づいてくれないのだろうか。
「まぁいいけど、父さんがいる車に早く乗りなさい。これから行く所もあるし。」
これから行く所?これからどこに向かうのだろうか。
外に出ると、外は蒸し暑かった。天気予報では最高気温は35度を越えるらしい。まだ梅雨が明けてあまり経っていないしこれからもっと上がっていくのだろうか。
車に乗ると、ひんやりとしたクーラーの風が肌に当たって心地よかった。車の中から家を見ると、もうここから離れるのか、と思わされた。だけど、この家に住めないという事よりも、彼女に会えないという悲しみの方が強かった。
少し遅れて母さんが車に乗った。「よし、行くぞ。」父さんが言った。
「着いたわよ。」
そう言われて窓から外を見てみると、そこには海があった。家から近いこの海は、前に結構遊びに来ていた。
「ほら、この海にも別れを告げてきなさい。優香ちゃんと色々あったんでしょ。」
僕は驚いた。母さんがどうしてそんな事を知っているのかに。母さんはやっぱり凄かった。
黙って車から出ると、やはり外は暑苦しかった。
波が浜辺に何度も何度も、気が遠くなるぐらい押し寄せて、綺麗な音色を奏でていた。
人がまぁまぁいる。だけどそんな事気にもしないで、海のずっと向こうを見据えた。
そうしていると、急に肩を叩かれたので、後ろを振り返った。
すると、そこに居たのは、紛れもない優香だったのだ。
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