ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ( No.44 )
日時: 2013/07/26 12:15
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: zHNOEbBz)

 ドアを開けると、あっという間に外の情景が飛び込んできた。
 昨日の夜見た真っ暗な景色とは全然違っていて、まるで別世界のようだった。
 まぁ、ほとんどこの煩いセミのせいなんだろうけど。

 日なたにでて数歩歩いたところで、猛烈に暑いことに気がついた。そして喉も渇く。だけど、今更引き返すのもそれはそれで嫌なので、あの自販機に行って飲み物を買うことにした。
 なんで散歩なんてする気になったんだろう、と思った。そう思うのも無理はなかった。

 やっと自販機に着いて、飲み物を買おうとしていた時、自販機の後ろに何かの気配を感じた。そして、その瞬間、和也と義我と美華の三人に出会った時の事を思い出した。
 今は昨日とは違い明るいので、自販機の後ろの人が誰か見ようとした。

 『み、美華!』
 「れ、憐君....。」
 どうしてだろうか、そこには美華がいた。あの二人もそうだが、ここでいつも何をしているのだろう。
 『い、家に来いよ。きっと皆喜ぶと思うよ。』
 昨日の二人の言葉....、思い出した。美華は家に居たくないんだ。

 「う、うん!」
 彼女は右手に飲み物を持っていた。今日は奢らなくていいのかな、と思った。

 そうして二人は家に向かって歩きだした。

 ただ暑いだけの日なたや、ただ煩いだけのセミの鳴き声も、今はどうでもよかった。