PR
ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.55 )
- 日時: 2013/08/03 06:05
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: sSv6cHIH)
「い、いや、二人っきりで行きたいとかないし、皆で行こーよ!」
美華が言った。嘘つけ、本当はそんなこと無いくせに。と三人は心の中で呟いた。
皆の家や海がある方に戻ろうと、僕達は進んだ。もちろん僕と美華は二人乗りで、和也と義我はそれぞれの自転車で。
すると、下りの坂が見えてきた。そして、その向こうには海も見えてきた。
「自転車、降りた方が良いかな?」
彼女は耳打ちするように言った。確かに勾配はかなりあるが、この下り坂を自転車でこいでいったら、とても楽しそうな気がした。この暑い中だし、風をいっぱい浴びると、気持ち良いに決まってる。
____そう思って、僕は後ろに美華を乗せたまま坂道を下った。
「え、ちょっと待って!うわ!!落ちる!!!!」
もちろん自転車のスピードは尋常ではないが、彼女のそのテンパった声を聞くと、何故だか少し笑えた。
『気持ち良いね。』予想通りに風は僕らのほうにやってきた。この空と同じように、清々しい気分になった。
少しして下り坂も終わり、僕はゆっくりとスピードを落としていった。
「もう....、ものすごく怖かったんだからね!」彼女はずっと僕の背中を叩いている。半泣きだけど、笑っていた。
遅れて和也と義我も下りてきた。
和也は下りてきて早々言った。「ほらさ、やっぱ二人ってお似合いじゃん、カップルみたいだよ。」
和也のその言葉は少し僕らをからかうように、そして、僕らの心にまっすぐと届いた。
PR