ダーク・ファンタジー小説

Re: 陽炎 ( No.58 )
日時: 2013/08/03 08:24
名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: sSv6cHIH)

 僕はそれを笑ってごまかした。
 『海ってどの辺だっけ?』
 「え、えっと、私の家からもっと奥に行ったとこ。」
 恥ずかし紛れに、僕達はそんな他愛もない会話をする。

 僕は義我と和也に怒ってやろうと思い、後ろを振り向く。すると、そこに二人の姿は無かった。
 僕は驚いた。『美華、二人が居ない!』
 「え!?ほんと!?」
 美華も慌てて後ろを見るが、そこにあるのは田舎の景色だけで、ここに居るのは美華と僕だけだった。

 二人は何も言わずどこに行ったんだろうか。それは愚問だと知りつつも、心の中で呟いた。
 「二人共、優しいね。」
 美華の声がして、僕はまた後ろを振り向く。
 『____まぁ、確かにね。』僕はそう言って笑った。彼女もつられて笑う。

 談笑して海に向かっていると、あっという間に美華の家の前まで来た。相変わらず大きい家だ。
 彼女は自分の家門を見て、少し暗い表情を見せた。....やはり、あれは本当なのだろうか。
 「よ、よし。ここまで来れば後少しだよ。」
 もちろん、それは気分を紛らわす為の言葉であることは分かっている。『なぁ、美華って親のこと好きか?』
 彼女はそれを聞いて、驚いた仕草を見せた。「憐君....、その事知ってたのね。」