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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.60 )
- 日時: 2013/08/05 10:51
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: VmcrDO2v)
「うーん。お母様やお父様にどう思ってるか、と聞かれたら、即答するわね。“好き”と。」
いつも思うが、それは何故だ?
遅くまで外に出ているのは、親が嫌いだからじゃないのか?
『....でもさ、美華の家は厳しいんだよね?美華自身もそれが嫌なんだろ?』
「私は両親が好き。でもこの土地も好き。遅くまで外にいるのは、少しでも長くここに居たいからよ。つまり....。」
ちょうどその時、向こうの空から夕日が見えた。
彼女も思わず話を止めて、向こうに駆け寄る。僕も自転車を停めて、彼女についていく。
石でできた階段を下りると、そこには海と浜辺が見えた。そして、そのずっと先には、赤い太陽が見えた。
「つまり....、」
太陽が綺麗だな、と思ったが、彼女はここで話を続ける。
「私はここから引っ越してしまう。ということだよ。だから、今この時間がとても大切なの。」
向こうに見える太陽は、煌々と輝いていた。
「両親だって私の気持ちぐらい察してる。夜遅くまで外に出て遊べるから。私が生まれたのはここだけなんだし。」
おかげで、様々な紐が解けた気がする。
『なるほど....。』
まぁ、財閥のご令嬢なんだし、おまけに拾われた身だったら、当然普通とは違う人生に決まってる。
だけどそんなことはどうでもいいらしい。親が好きだし、この土地も好き。それは普通と同じ考えだった。人間の大まかな考え方は、全てある一点に集中しているのだから。
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