ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.64 )
- 日時: 2013/08/12 08:33
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: VmcrDO2v)
目が覚めると、僕は今まで自分の部屋で静かに眠っていたことがわかった。
目を擦って、昨日このベッドに入るまでの経緯を思い出してみる。が、何故かそれを思い出すことができなかった。
思い出してみることができたのはあのピアノの音を聴く前までで、それから後の記憶が脳からすっぽり消え去っていた。この不思議な出来事に、少し寒気がした。
目の前の時計を見ると、まだ6時だった。嘘だろ、と思いながらベッドから降りる。
そういえばこの時計は電波時計だったのか、と思い出したのは僕の部屋を出た後だった。
案の定誰も居ないリビングに歩いていき、ソファーにどっかりと座った。そして、あのピアノの音を思い出す。
あのピアノは一音一音、とても引き込まれていくものだった。
一体誰が弾いているのだろうか。美華の家の近くだったのでその人の家の場所は分かる____いや、馬鹿か。知らない人の家にそんな理由でお邪魔できるわけがない。
ゲームをしても、テレビを見ても、結局はすぐに飽き、やめてしまうことになる。
時計を見ると10時過ぎだった。あまりにも暇なので外にでも出てみることにしようか。
そう思って僕は準備を済ませ、玄関のドアを開けた。
今日の外はとても涼しいようだ。
向こうからこちらへと、風が突き抜けていく。庭の草木も、今日は気分が良さそうに思えた。
僕の家の前には横に一本の道が通っている。その道を右に進むと隣町、左に進むと海や美華の家がある。今日はとりあえず右に進んでみようかな、と思った。勿論徒歩でだ。
僕は昔から、見知らぬ土地を一人で探索するのが好きだった。僕が住んでいる所とはまた違った空気や、知らない建物。これを見たり肌で感じたりするのが本当に好きだった。まぁ、そのせいで道に迷い親に叱られたことは何度もあるのだが。
昨日美華と二人乗りで一緒に通った道を、今日は一人で歩いて通っている。
家の前の道を右に進んだ後に見えてくるこの道を、昨日は右に曲がったのだが、今日は左に進む事にした。
すると、雰囲気が今までのとがらりと変わった。