ダーク・ファンタジー小説
- Re: 陽炎 ( No.67 )
- 日時: 2013/08/14 09:56
- 名前: 王様 ◆qEUaErayeY (ID: IWyQKWFG)
- 参照: 仮にも俺は受験生
間違いない。この家は正真正銘ピアノの音が聞こえてきた家だ。この緑色の屋根の家、忘れる事はない。
「どうしました?」彼女は驚く僕を見て言い、自分の家の門を開けた。
『えっとですね、あなたってピアノ得意ですか?』
僕がこう言うと、彼女の門を開けていた手が止まった。少しして、彼女は驚いた表情を見せた。
「どうして知ってるんです?」
やはり彼女だったのか、と思った。
『昨日の夕方、この家からピアノの音が聞こえたんです。』
「そうなんですか。その音、全然ダメダメの、雑音だったでしょ。」
『え?』
綺麗な音色だった、と言おうとしてそれを遮られた。
彼女は門を通り、「入って良いですよ。」と言い、玄関のドアを開けた。「お邪魔します。」僕も彼女についていき、家の中に入っていった。
そこは、清潔そうな玄関だった。僕や彼女は靴を脱いで、目の前にあるドアの先に向かった。
「私さ、いつも自分のピアノに自信が持てないんですよね。」
彼女は、急に低い声で言った。
自信を持った方がいいよ、とは誰にも言わせないような低い声だった。
彼女はドアを開けると、足早にテーブルの上にさっさと買ってきた物を置いた。
あんな綺麗な音色だったのに、何故彼女はそれを貶すのだろうか。
『あの、もう一度あのピアノを弾いてくれませんか?』
彼女は少し間をおいて言った。「良いですよ。お気に召すようなものではないでしょうけど。」
彼女は先導して階段で二回へ上がり、自分の部屋らしき所に入っていった。
「良いですよ。」
彼女がそう言うと、僕はゆっくりとその部屋に入っていく。すると、その部屋には大きな黒のグランドピアノが置いてあった。音楽室にありそうなぐらい大きなやつだ。
彼女は椅子に座って、すらすらとピアノを弾いていった。
彼女は気づいていないかもしれないが、ピアノを弾いている時の彼女の顔が、今までで一番輝いて見えた。